日常的に便秘に悩まされているビジネスパーソンは多く、腹痛やお腹の張りなどの諸症状によって、仕事のパフォーマンスが低下してしまう人も少なくない。
そんな便秘と仕事の生産性の関係性について探った、「大腸劣化」対策委員会による意識調査がこのほど、30~50歳代の男女合計312名を対象として実施されたので、その結果を紹介していきたい。
便秘による仕事のパフォーマンスの低下
■1.便秘による仕事のパフォーマンス低下の有無
便秘のある人は、男女ともに仕事のパフォーマンス低下を自覚している方が多いという結果がみられた。男性は、どの年代でも、パフォーマンスが低下すると回答した割合が女性より高く、とくに30歳代男性では、75.0%と高率だった(図1)。
■2.便秘によるパフォーマンス低下のレベル
男女ともに、便秘の際の仕事のパフォーマンスの低下については顕著な差がみられ、便秘していない時を100%とすると、便秘時は約60%だった。女性は男性よりも低下の程度がやや大きいという結果に(図2)
■3.便秘による休暇取得の経験
便秘と休暇の関連については、40%以上が便秘で休みたいと思ったことがあると回答した(図3)。さらに、実際に仕事を休んだことがある人の割合は18%を超えていた(図4)。
性差をみると、休みたいと思った経験は女性の方がやや割合が高かったのだが(図5)、実際に便秘で仕事を休んだ人の割合は、女性は男性の半分にも達しなかった(図6)。
便秘に関連した身体の不調
■1.身体面のコンディション
身体の全般的コンディションの自覚は、便秘していない時を100%とすると、便秘時は47.3%と顕著に低下していた。女性は男性よりも、やや低い結果となった(図7)。
■2-1.便秘に伴う身体的不調の訴え
身体の不調で最も多かったのは、「おならが臭くなる」で、次いで、「お腹の張り」、「おならの回数が増える」など、予測された通り、お腹についての訴えが目立った。
しかし、お腹の不調以外も少なくなく、「疲れやすさ」、「肌の不調」や、「眠りが浅い」、「食欲不振」などの生活の基本的な条件、さらに、「肩こり」、「頭痛」など、ストレスに起因するような自律神経の失調と関係するものなど、幅広い身体的な不調がみられた(図8)。
■2-2.身体的不調の出現数
便秘に伴って出現する身体的不調の数は、一人あたり平均 7.9個もみられた(図9)。
便秘に伴うメンタル面の不調
■1.メンタル面のコンディション
メンタル面についても、身体面と同様に非便秘時と比較すると、便秘時は 54.3%に低下していた。身体面のコンディションとは異なり、僅かな差だが、男性の方が女性よりも、やや低い結果となった(図10)。
■調査結果まとめ
以上のように、便秘と関連して仕事のパフォーマンスの低下を示す人が高割合にみられた。また、その程度は決して軽いものではない。便秘のために仕事を休みたいとする人の率も高く、男性では実際に便秘のために休む人が女性より高い率でみられた。便秘を有する人は多岐にわたる身体的不調を訴え、その数は 1人あたり平均約8個にも達していた。それに加え、メンタル面での不調を訴える人も少なからずみられた。
杏林大学 古賀良彦名誉教授コメント
杏林大学名誉教授 精神科医
古賀良彦氏
昭和46年慶応義塾大学医学部卒業後、昭和51年に杏林大学医学部精神神経科学教室に入室。その後、平成2年に助教授、平成11年に主任教授となり、平成28年より現職。日本催眠学会名誉理事長、日本ブレインヘルス協会理事長、日本薬物脳波学会副理事長、日本臨床神経生理学会名誉会員などを務める。
今回の便秘を有する人およそ300名を対象としたWEB調査の結果から、便秘によって男女ともに仕事のパフォーマンスが大きく低下していることが分かりました。その背景には便秘に伴う身体面とメンタル面のコンディションの不調があり、場合によっては仕事を休まざるを得ない状況に至るということも少なくないことも明らかにされました。
便秘にはお腹の不調ばかりではなく、自律神経の失調と関連する様々な訴えがみられることも分かりました。便秘は排便が十分にないということだけではなく、身体の働きに幅広く影響することが明らかにされたことは、この調査の成果と言っても良いでしょう。
最近、腸脳相関すなわち腸と脳との機能的な関連の深さへの関心が高まっています。今回の調査で、便秘という腸の機能の不全が、脳の働きによって生み出されるメンタルの機能まで影響を与えることが示されたことは、腸脳相関の分かりやすい事例として興味ある結果と考えられます。
現在、食品への関心が高まり、健康に有用な成分を摂取することの重要性は広く認められています。一方、腸で食物から有用な成分や水分が吸収されたのちに、便としてきちんと排泄することについての意義や、便秘によって起きる不調については、それほど認識されていませんでした。今回の結果は、大腸の機能が損なわれ、便秘が続くことによって生じる影響を、労働生産性という面から、また腸脳相関という視点からも示したということから意味あるものと考えられます。
<WEB調査概要>
表題:便秘による生産性低下 に関するWEB調査
調査主体:「大腸劣化」 対策委員会
調査期間:2020年03月12日(木)~2020年03月14日(土)
調査方法:インターネット調査
調査対象:関東1都3県の30~50歳代の男女合計312名(男性女性各156名)便秘の自覚があり、かつ排便が週に3回未満の方
出典元:「大腸劣化」対策委員会
構成/こじへい