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「管理職」の仕事に対する課長クラスのマネージャーの本音と実情

2020.06.06

責任と気苦労、サービス残業ばかりがいたずらに増えて、給与はほとんど据え置きだからか、なりたくないという声も多い「管理職」。その仕事を、円滑に、やりがいを持って行うためのカギとは何なのだろうか?

そこで今回、リクルートマネジメントソリューションズ・組織行動研究所による、「ミドルマネジャーの役割に関する実態調査」が実施されたので、その結果を紹介していきたい。

なお本調査は、従業員規模300名以上の企業に正社員として勤務する20~50代の部下を持つ課長相当の管理職601名を対象として実施されている。

管理職の5つの役割と時間配分の5タイプ

本調査から管理職に次の5つの役割が想定された。

・業務マネジメント:業務の計画、割り当て、進捗管理、トラブル対応、問題解決 など
・方針づくり :組織の方向性やビジョンを考え・提示する、戦略や戦術の決定や修正 など
・部下マネジメント:方針や業務分担の意味を伝える、意欲や能力を高める、相談に乗る など
・対外的活動 :社内外のネットワーキング、情報収集、対外発信 など
・プレイヤー業務

さらに、それぞれにどの程度の時間を配分しているか尋ね、クラスター分析という手法を用い、時間の使い方の典型として5タイプが見出された。(図表2)

それぞれ他のタイプに比べて多く時間を割いている役割を名に冠して、「業務マネジメント重視タイプ」「方針重視タイプ」「部下マネジメント重視タイプ」「対外活動重視タイプ」「プレイングマネジャータイプ」と呼ぶ。

職種や組織の人数によって異なる、マネジャーのタイプ傾向

職種や組織の人数ごとに時間配分タイプの分布を見ると、どのカテゴリにも時間配分の5タイプが存在するが、職務系統ごとに見ると、以下の特徴がある。(図表3)

・営業・販売に「部下マネジメント重視タイプ」「プレイングマネジャータイプ」がやや多い。
・企画・事務に「部下マネジメント重視タイプ」がやや多い。
・開発に「業務マネジメント重視タイプ」「方針重視タイプ」がやや多い。

直接管理する部下の人数が多くなるほど、「部下マネジメント重視タイプ」「業務マネジメント重視タイプ」の割合が高くなり、「プレイングマネジャータイプ」の割合が低くなる傾向。

また、「部下あり管理職経験年数」や「所属企業の従業員規模」によるタイプ分布に一定の傾向は見られなかった。(図表4)

「管理職」の仕事に対する、マネジャーたちの本音と実態

以下の項目が、各タイプのマネジャーの現在状況にどのくらいあてはまるか回答してもらった。【図表5】

・「仕事にやりがいを感じている」
・「管理職としての役割が自分に合っていると感じる」
・「管理職としての仕事が楽しいと思う」
・「管理職になってから、これから先のキャリアの展望が開けたと思う」
・「管理職としての仕事を通じて、自分が成長したと思う」
・「部下から信頼されていると思う」
・「困ったときに助けを求めたり本当の気持ちを話したりできる相手がいる」

結果は以下の通り。

●どのタイプでも、約6~7割が「『管理職』という仕事にやりがいを感じている」と回答。

●「仕事にやりがいを感じている」以外の項目で、全般的に「あてはまる」と回答したのが多かったのは「方針重視タイプ」。

●「プレイングマネジャータイプ」は、「管理職としての仕事が楽しいと思う」という設問に「とてもあてはまる」と回答した割合が他群に比べて最も多い。しかし、それ以外の設問へのポジティブな回答はいずれも低い。

●全体を比較して特徴的だったのが、「方針重視タイプ」と「プレイングマネジャータイプ」の間で差が大きかった以下3項目。(「プレイングマネジャータイプ」が大きく下回っていた)

・「管理職になってから、これから先のキャリアの展望が開けたと思う」 :27.7ポイント差
・「部下から信頼されていると思う」 :25.2ポイント差
・「困ったときに助けを求めたり本当の気持ちを話したりできる相手がいる」:20.0ポイント差

⇒プレイヤー業務に割く時間が5割を超える「プレイングマネジャータイプ」は、孤軍奮闘となり、管理職としての役割を果たす上での支援的な関係性が築きにくい可能性がある。

マネジャーはどんなことに「マネジャーとしての成長」を感じるのか

図表5から、「管理職としての仕事を通じて自分が成長したと思う」割合は7割前後に上るのに対して、「管理職になってから、これから先のキャリアの展望が開けたと思う」割合は、5割前後に留まった。
管理職は「管理職としての成長」をどのようなことと考えているのか、時間配分タイプごとの特徴を探りながら、フリーコメントをまとめた。(図表6)

●全体に多く見られたのは、部下の育成・成長や、自身の視野の広がりに関する回答で、特に「方針重視タイプ」や「部下マネジメント重視タイプ」にその傾向が表れている。

●「業務マネジメント重視タイプ」では、個々の部下の育成というよりは、組織を掌握・統制し結果を出すという回答が多い。

●「プレイングマネジャータイプ」では、部下と現場をリードしつつも、任せる意識への転換が成長として語られている。

タイプ別 マネジャーの月間労働時間とその長さの要因

「プレイングマネジャータイプ」は、月間200時間以上の長時間労働者の割合が最も高く(43.1%)、プレイヤー業務はマネジャーが忙しくなる要因の一つと考えられる。(図表7)

プレイヤー業務を担う理由の中心は、難度の高い業務やイレギュラー業務を含む、仕事を任せられる人材の不足である。(図表8)

“部下に仕事を任せきれない”という課題は「プレイングマネジャータイプ」に限らないが、悩んでいるマネジャーの割合が全体平均より 10ポイント以上低いのは「方針重視タイプ」。「方針重視タイプ」は、部下に仕事を任せ、プレイヤー業務の時間を10%程度に抑え、方針づくりと業務マネジメントにおよそ30%ずつ時間を配分している。(図表9)

⇒時間を割いて作った確かな方針と業務マネジメントにより、部下に仕事を任せやすくなるという好循環が伺える。

マネジャーたちは、役割にかける時間配分をどう変えたいと考えているか(図表10)

5つの役割(業務マネジメント/方針づくり/部下マネジメント/対外的活動/プレイヤー業務)にかける時間をどのように変えていきたいか、タイプ別に回答をしてもらう調査が行われた。

結果は以下の通り。

●どのタイプでも、最も減らしたいのは「プレイヤー業務」。
●一方で、もっと時間をかけたい役割の一番人気は「部下マネジメント」。しかし「方針重視タイプ」のみは、部下マネジメント以上に「方針づくり」を選んでいる。

⇒すでに30%の時間をかけているが、それでも約半数がもっと時間をかけたいと考えていることから、方針づくりへの手応えが感じられる。

時間配分の変えにくさの実態とその要因

86.9%のマネジャーが、管理職としての業務の時間配分を変えることは「とても難しい」「やや難しい」と回答。(図表11)

具体案・方法を尋ねる調査が行われたところ、「人員の確保が一番だが、なかなか難しい(営業・販売)」などの認識の一方、「自動化と権限委譲(開発)」「仕事の断捨離と他担当との業務分担見直し(企画・事務)」など、一層の業務効率化が可能であるとの見通しが伺えた。

また、「人材力の底上げ(営業・販売)」「経営幹部の意識改革(企画・事務)」など、組織力の向上を期待する声もある。

マネジャーの時間配分は様々な環境要因の影響を受けているが、時間配分を変えるのが難しい/難しくないと考えているマネジャー別に、「外部環境」「部署の仕事特性」「部下の特性」「会社の『大企業病』」傾向への認識に違いのあった項目がピックアップされた(図表12)。

・市場の競争が激しく納期や品質へのプレッシャーが高い環境や、離職率の高さ、ルールにとらわれる非効率さや官僚的な縦割りのコミュニケーションといった「大企業病」の傾向が、マネジャーの役割変革を阻害している。

・部下の特性については、意外にも、時間配分を変えるのが難しいと考えるマネジャーの配下において、「指導・判断業務を一部任せたり代行できる」「自分よりも業務遂行能力や専門知識・技能のレベルが高い」部下はむしろ多い。しかし同時に、「必要な知識・スキルが不足している」「仕事に対する意欲が低い」部下もより多く抱えている。

⇒優秀な人材がいるだけでは十分でなく、仕事を任せる心理的な壁や、手がかかる一部の部下に時間を取られることが、マネジャーの役割変革を阻害する可能性が伺える。
⇒これらへの対処をマネジャーが 1 人で背負うことは困難と考えられる。上位者や人事がともに有効な対処を考え、マネジャーが本来業務に集中できるよう支援する体制が必要。

マネジャーの目から見た「働き方改革」

マネジャーの時間配分の変えにくさの認識と、「働き方改革」による影響との関連について(図表13)

時間配分を変えにくいと考える群では、「管理職の負担が高まった」という割合が高い。

しかし、「仕事に使う時間(労働時間)が減った」「働く場所や勤務時間をより柔軟に変えられるようになった」「多様な勤務形態や属性の人が増えた」といった、働き方の変化そのものには差が見られない。

⇒働き方の変化そのものではなく、それにより管理職の負担が高まる場合に、マネジャーの役割変革が阻害される。

「働き方改革」が個人や職場に及ぼした影響との関係(図表14)

効率一辺倒で余裕が失われたり、求心力や協働の精神が損なわれたりするような場合には、マネジャーの役割変革が阻害されることが伺われる。

⇒人事や経営層が、マネジャーを助ける組織的な施策に取り組むかどうかが、「働き方改革」成功の鍵となることが伺われる。

組織行動研究所の考察コメント

■同じ「マネジャー」でも時間の使い方は様々。その多くが時間投資のリ・デザインを望んでいる

リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所
主任研究員・藤澤理恵氏

本調査では、ミドルマネジャーの役割遂行の、多様な実態が浮き彫りになりました。業務への時間配分の仕方による 5 タイプは、どの職務系統や部下人数別分類にも存在しました。

「プレイングマネジャータイプ」は残業時間が長くなる傾向が見られ、また、他タイプも含め時間を減らしたい業務の第一は「プレイヤー業務」でした。現場から離れたくなくて好きでプレイヤー業務をしているのではないか?といった一部の見方は、多くのマネジャーには当てはまらないようです。

他方、大半のマネジャーが、時間配分を変えることは難しいと考えていることもわかりました。仕事を任せられる優秀な人材が部下にいないわけでもなく、仕事を任せる心理的な壁があったり、手がかかる一部の部下に時間を取られたりしている可能性が伺えます。このあたりに、上位者や人事が組織的にフォローする余地がありそうです。

部下への仕事の任せ方のトレーニングや、適応に困難を抱える部下の組織的なケアは、方針づくりや部下育成といった成果への手応えの大きい業務にマネジャーを専念させる助けになりそうです。

■マネジャーが本来の仕事をするための3つの観点

リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所
所長・古野庸一氏

マネジャーが本来の仕事を行うために、その負担を削減するための観点を3つほど挙げます。

1つめの観点は、マネジャーが「経営の視点に立ち、意志を持つ」ということです。上位者や部下を動かすためには、意志がなければいけませんが、それは単なる意志ではなく、経営全体での自部署の役割を俯瞰しながらの意志である必要があります。経営全体を俯瞰することで、自部署の優先順位がつけられ、マネジャー本来の仕事ができる可能性が高まります。

2つめの観点は、「マネジメント機能の組織的分担」です。会社が共感できるビジョンを持っていれば、マネジャーが社員を鼓舞する時間を短縮することができます。また、教育も専門部署があればマネジャーの負担は削減できます。

3つめの観点は、「メンバーの主体性を高める」ことです。メンバー自身が会社の目標やビジョンを理解し、自ら自分の役割を設定することができれば、マネジャーの負担は小さくなります。

マネジャー自身、会社全体、そしてメンバーの態度という3つの観点で考えることで、マネジャーの負担は軽減され、本来の仕事ができると考えられます。

<調査概要>

出典元:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ

構成/こじへい

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