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コロナ禍の在宅勤務報道を見て気づいた抜け落ちている大事な視点

2020.06.06

■連載/あるあるビジネス処方箋

 今回は、在宅勤務に関する新聞やテレビ、ニュースサイトの報道で、とても気になることを述べたい。まず、この2か月でオンライン取材をした企業の中で特に印象に残っている大手金融機関の人事部長が話していたことを紹介したい。

「在宅勤務は目的ではなく、あくまで手段。本来の目的は社員の働きやすい就労環境を作り、納得感や勤労意欲を高めて労働生産性を上げ、業績の向上をはかること」。

 会社である以上、労働生産性や業績の向上が優先されるべきといった考えなのだ。これに意味が近いことは、メガベンチャーの人事の実務責任者らも語っていた。確かに労働生産性や業績が上がらない限り、社員の賃金を上げ、その家族の生活を守ることはできないだろう。だが、新聞や雑誌、ニュースサイトの在宅勤務に関する最近の記事を見ると、このような視点が抜け落ちているように見える。

「在宅勤務が新しい就労のスタイルで、家で育児や介護をしながら働くことができる」と言わんばかりの内容のものが目立つ。そして「就労場所や労働時間が柔軟になる」と強調する。だが、そこに労働生産性や業績向上の視点はあるのだろうか。少なくともこの2か月間、私が仕事で接点を持つ会社の担当者の電話やメールでの回答は全般的に遅く、要領を得なかった。おそらく、取引先や顧客への回答も遅かったのではないかと推察できる。

 なぜ、労働生産性や業績の向上を重要視するべきなのか。今後、それらを維持するのが難しい時代になるからだ。2020年までは、震災復興や国土強靭化計画、アベノミクス、東京五輪の開催があった。経済を浮揚させるイベントや需要がそろっていた。ところが、今後は、そのようなイベントや需要を喚起する企画が見つけられない。あったところで、人口が大幅に減る以上、経済力が弱くなるのは避けられない。多くの企業が、小さくなっていく市場で競争をせざるを得ない。海外市場に進出するのだろうが、国内の需要が少なくなる以上、厳しい生存競争になるのは避けられない。業績難の企業は増えるはずだ。企業の整理統合は進み、倒産や廃業、人事異動やリストラは慢性化するだろう。

 だからこそ、労働生産性や業績向上を最優先させるための働き方改革をするべきなのだ。その1つとして在宅勤務を位置付けていくことが必要になる。言い換えると、労働生産性や業績向上を阻害する働き方ならば、見直しをするべきなのかもしれない。状況いかんでは、在宅勤務を縮小する選択肢もありうるだろう。たとえば、社外への情報漏えいやデータ流出が繰り返されたり、労使間のトラブルが頻発したりするならば、止むを得ないのではないか。

 大切なのは在宅勤務は手段であり、目的ではないことだ。在宅勤務を進めるならば、常に労働生産性や業績向上を最優先させて施策を考えるべきだ。たとえば、労働生産性向上を図るならば、部署全体の業務、個々の社員の仕事を棚卸して、必要なもの、不要なものを書き出したい。部員の意見集約のうえ、特定の仕事を廃止にすることが必要かもしれない。あるいは、情報漏えいやデータ流出の防止をするために、社員と守秘義務契約を交わし、教育訓練をしないといけない。罰則規定を早急に作成して、周知徹底させることも必要だろう。

これらははるか前から政府が唱えていることだが、なぜか、メディアの報道では重視されているように見えない。今回の在宅勤務に関する一連の報道でも、抜け落ちている。あらためて考え直すべきではないだろうか。

文/吉田典史

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