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社会的な人材ロスの減少につながるか?求人・求職のミスマッチを防ぐ新しいプラットフォーム「職業情報提供サイト」

2020.06.04

未来投資戦略に掲げられ、職業情報の「見える化」をめざす労働市場インフラとして開発が進められてきた「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」がスタートした。

ここで改めて考えたいことが、労働情報の「見える化」がもたらすものは何か?ということだ。そこで今回は、慶應義塾大学大学院経営管理研究科専任講師の大藪毅氏のレポート「日本の労働市場の再設計にむけて」を紹介しよう。

労働情報の「見える化」がもたらすものは?「日本の労働市場の再設計にむけて」

1.日本は企業内部労働市場がメイン

日本の労働市場は、一度入社したらその会社の人事ルールによって配置・教育訓練・報酬などが決まる内部労働市場が中心である。戦後の順調な経済成長下、企業成長はそこで働く社員の報酬上昇や昇進につながり、それを長期雇用や年功序列などの雇用・人事慣行が支えていた。

ところが平成以来、低成長期に入って30年近く、高いはずの日本企業の賃金と労働生産性は、先進国中すでに最低レベル。「まじめに仕事をすれば課長まではいける」という時代も終わった。

近年の学生のベンチャー志向の高まりも、大企業で働くことが必ずしも魅力的に映らなくなったことが一因だろう。

これらは、日本企業がながらく自社フレームで物事、特に労働力の最適化を考えてきたため、ドラスティックなグローバル経済の変化と新しい雇用・人材マネジメントの流れへ対応できていない現状を示している。

しかし過去の成功体験からか、企業はなかなか「自前主義」から切り替えができていないように見える。

2.外部労働市場とのバランス

労働市場は、基本的に労働需給の調整、つまり「人材」と「仕事」それぞれの価値を基にマッチングさせるプロセスである。外部労働市場は、単なる転職市場ではなく、企業の枠を越えて行われる賃金の価格調整と人材配分のしくみである。これによって、社会レベルの労働取引の適正化と人材の最適配分が同時に図られる。

また外部労働市場は、企業へ人材配分と報酬適正化を通じ、会社内部での人材の一層の有効活用、つまり労働生産性向上の努力を促し、企業活動全体を活性化させる重要な側面を持つ。

日本の労働市場はこの外部労働市場機能が弱く、企業内部は外部と連動しないため、伸びない賃金と弱い企業活動が構造的に「低位均衡」してしまい、もう20年以上この状態から抜け出せていない。

外部労働市場中心の欧米でも、あたりまえだが人材をうまく使っている優良企業の転職率は低い。健全な外部労働市場の存在は元来、企業にとってもプラスであることはもっと認識されてよい。

3.労働情報の「見える化」がもたらすもの

米国では90年代以降、ITを先頭に新産業の隆興とともに生産性向上がすすみ、その結果賃金水準も継続的に上がっている。それに一役買ったのが、米国のDOT(Dictionary of Occupational Titles:職業辞典)、米国O*NET(※)等、職種別にフォーマット化された労働市場情報を提供する公的インフラであり、政府はこれに長年にわたって積極的に予算と人員を投入してきた歴史がある。

その情報を用いることによって、個々の人材マッチングが安全化し活発になるだけでなく、各種人材サービス産業も発展してきた。そして何より企業が労働環境とマネジメント力の向上に注力したことが、現在の米国の高い労働生産性につながっている。

今回の日本版O-NETは「労働市場の見える化」を目指すとされている。それを私なりにかみ砕けば、「仕事の内容」と「人材に求められるもの」を明示化し、それらの相場と動向をリアルタイムに示す、信頼性が高い情報の提供ということになる。

これによって求人・求職におけるミスマッチを防ぎ、社会的な人材ロスの減少が見込まれる。個人は主体的に学んでキャリアを形成していくことができる。企業にも自社の人材マネジメントの確認とブラッシュアップが期待される。

従来の企業内部労働市場と労使関係を基本フレームとする日本の労働市場政策には、こういった「社会的視点」がなかった。現在働き方改革・雇用改革が議論されているが、日本の労働市場は、企業レベルの最適化から「社会レベルの最適化」へ舵を切る時期にあるのではないだろうか。

※米国O*NETとは?

米国労働省が保有するインターネット上のデータベース。約900職種について、具体的な能力、必要な知識、向いている興味や価値観等を共通尺度上で数値化するとともに、タスクのデータを提供している。

構成/ino.

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