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「理系脳」はどう作る?AI時代に求められる子どもの思考力を鍛える方法

2020.06.03

 ビッグデータ活用が必須の情報化社会。そんな社会的背景から、論理的に考える力、問題解決力、検証力などに優れた「理系脳」に注目が集まっている。

 そこで、今年度から全国の小学校で導入されるプログラミング教育にいち早く取り組んできた宮城教育大学附属小学校と、日本で最初に創設されたデータサイエンス学部を有する滋賀大学の学びを取材。次世代への懸け橋となる最新の教育事情に迫る。

>>現在発売中の『DIME』7月号では、時代が求める「理系脳」の鍛え方を特集! データサイエンティストの年収から家庭でできる理系脳教育まで、気になる話題が満載です。

小学校におけるプログラミング教育とは?

 小学校におけるプログラミング教育は、どんな目的で、実際にどんな活動が行なわれるのか。

イメージ/PIXTA

 2020年度スタートのプログラミング教育に先駆けて、宮城教育大学附属小学校では、あらかじめ「コンピュータ・サイエンスの時間」を設置し、コンピューターについての理解や機器操作を扱う授業を1年間で10時間を確保してきた。それは、タブレット端末やノートパソコンに慣れていない子供達に対して、いきなりプログラミングを導入して授業をしようとしても、教科のねらいを達成するのが難しいからである。

 そのため、同校では、1年生からタブレット端末を使い始め、3年生までに基本的な操作方法を習得させる。3年生の国語でローマ字を学習したら、タブレット端末とノートパソコンでローマ字入力での検索等を行なっている。

 そして昨年度、4年生では、「Scratch(=米・マサチューセッツ工科大学が作った初心者向けの「ビジュアルプログラミング)」を使って、音楽の授業でリズム・パターンを組み合わせて和の旋律を作った。

「音楽の授業では、『リズムの音を合わせて、和の旋律を作ろう』という学習目標を達成させるために、プログラミングを使いました。『Scratch』は、英数字を使ってコードを書く必要はなく、ブロックを組み合わせるだけなので、演奏の技能に不安がある子も日本らしい旋律に気づきやすくなる点がいいですね」

 と宮城教育大学附属小学校の情報教育担当である上杉泰貴教諭。

 子供たちは、あらかじめ、用意されたリズムに合わせてiPadを使って旋律を考え、最終的にはそれを実際にリコーダーで演奏。コンピューターの演奏と人間の演奏を比較し、それぞれの特徴について考えた。上杉教諭によると、多くの子供たちがプログラミングに対して前向きで、授業を楽しんでいたという。

「プログラミング」という単独の授業があるわけではなく、理科や算数などさまざまな学びの中で、子供達はプログラミングに慣れ親しんでいく。親世代が経験していない新しい教育が始まるのだ。

「分解し、組み合わせを考えるという思考」がカギ

 小学校でのプログラミング教育導入の影響を受けて、習い事としてのプログラミング教室が人気沸騰中だ。子供にさせたい習い事ランキング(2019年)では、英会話と並び「プログラミング教室」が1位となっている。

イー・ラーニング研究所「年末年始の子どもの習い事アンケート」2019年 より

 家庭でも、普段の生活の中で、何かできることはないだろうか。 

「実際にコンピューターにプログラミングすることの代わりにはなりませんが、まず必要なのは『分解し、組み合わせを考えるという思考』です。どんなプログラムでも、小さな処理を論理的に組み合わせて作られています。同じように、日常生活の行動についても、子ども自身に分解させ、目的に対して最適な並び替えをさせることで、プログラミング的な思考や論理的に考える力をイメージすることはできると思います」

 と上杉教諭。

 例えば、1時間後に出かけるとき。「着替えなさい」「靴下を履きなさい」と指示するのではなく、どんな準備が必要か、どんな順番で行動したらよいか、子供自身に考えさせる。

 論理的にやり方を考える習慣が子供の「理系脳」を刺激するのだ。

常に社会を意識! 滋賀大学の実践教育

 2017年、全国初のデータサイエンス学部を新設した滋賀大学。その先駆的な取り組みが注目を浴びている。

「当学部では、今、目の前にある問題に対して、実データを用いてデータ分析から問題解決に取り組める人材の育成に力を入れています」と和泉志津恵教授。実際、各学年の授業では、常に社会を意識し、各種連携機関の協力を得て課題解決型演習を行なっている。

https://www.ds.shiga-u.ac.jp/news-faculty/p5035/

 例えば、大津市役所との連携授業。「データサイエンス入門演習」(学部1年生)では、学生たちが大津市役所を見学。EBPM (Evidence-Based Policy Making:限られた予算・資源のもと、各種の統計を正確に分析して効果的な政策を推進すること)の概要を学び、オープンデータを活用して人口や経済効果の増加につながる政策案を提言した。

https://www.ds.shiga-u.ac.jp/news-faculty/p5142/

 大津市役所との連携授業(「データサイエンス入門演習」学部1年生)。イノベーションラボの職員を招いて行なったグループによる発表。

「1年生では、データを自分たちにとって身近な問題として結びつけて考えることから始めます。市役所の方々からは、学生らしい視点や発想が新鮮だったと好評をいただきました」

 3年生では、自分たちの身の回り(テリトリー)以外のテーマに挑戦する。同大学では、医学部がなく、医療系の授業は限られている。そんな中で、「データサイエンス実践価値創造講習Ⅰ・Ⅱ」(通称ゼミ)を履修する学生たちは医療統計学の入門や医療データの活用例を学び、レセプトを含む医療ビッグデータベースを用いて、特定の疾患とその処方薬との関係を調べたのだ。

「学生たちは、薬の成分やその副作用など自分で調べたいことを見つけ、それに関してどんな資料やデータが必要なのかについて考えます。次に、調べたい仮説を、データベースから抽出した標本をもとに統計的に検証し、得られた結果を考察します。こうした取り組みが刺激となって、将来、医療系のデータサイエンティストとして活躍する卒業生が出てくるのを期待しています」

 統計数理研究所医療健康データ科学研究センターとの連携授業(「データサイエンス実践価値創造演習I・II」学部3年生)。国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンターにて、専門家を前に、本態性高血圧と降圧剤との関係性を個人で発表した。

 扱うのは、すべて生のデータ。そして、連携機関の専門家たちによる、講義や学生の発表へのフィードバック。滋賀大学では、こうした手厚い支援環境を整え、即戦力となるデータサイエンティストの育成に努めている。和泉教授は「今後は、専門家との議論をふまえて、データ解析の結果を価値創造に発展させるノウハウを学生に指導していきたい」と語る。

目指すは文理融合型の人材育成

 いわゆる「理系脳」を鍛えるためには、身の回りにあるデータを意識する、異なる分野のデータの組み合わせを考える、解析方法の組み合わせを考える、データや解析結果の視覚化を工夫することがポイントとなる。しかし、和泉教授は、「『理系脳』のみを鍛えても、社会で活躍するデータサイエンティストは育たない」と言う。

「文系(社会系)の知識や情報も使い、調べたい質問を考え、その答えをデータ解析から明らかにしなければなりません。文系出身の人にもわかりやすく説明したり、チームで一緒に仕事したりするためには、コミュニケーション力も必要です。すなわち、文理融合型の人材育成が重要なのです」

 社会で実力を発揮するためには、「自分にとっておもしろいことを想像(妄想)することが大切だ」という和泉教授。まだ現実ではないことも、こうしたら実現可能ではないか。このデータを使ったら、おもしろいことができるのではないか――。

 柔軟に想像する力こそが、未来を拓くカギである。そんな力も、データサイエンティストに求められているのだ。

取材・文/ひだいますみ

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