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【開発秘話】累計3億6201万ケース売れているサントリービールの「金麦」シリーズ

2020.05.27

■連載/ヒット商品開発秘話

 味がビールと遜色ないレベルにまで近づいてきた新ジャンル(第3のビール)。安価なこともあり売れ筋で、新商品が次々と投入されている。

 競争の激しい新ジャンルで長年親しまれているものの1つが、サントリービールの『金麦』シリーズである。

 2007年6月に発売された『金麦』シリーズは、「日々おいしく飲める新ジャンルをつくりたい」という想いから誕生。麦のうまみと澄んだ後味の絶妙なバランスをコンセプトに中味を開発した。現在は『金麦』『金麦 糖質75%オフ』『金麦 ゴールドラガー』の3種を通年販売。発売から2019年までの間、シリーズ累計で3億6201万ケース(大瓶換算。1ケース633ml×20本)を売り上げている。

「食卓シーンを幸せにしたい」という情緒的な価値の提供

『金麦』シリーズが誕生した当時は新ジャンルの黎明期。当時の新ジャンルは、麦を使ってビールに一歩近づけたものが流行り出した頃であった。『金麦』シリーズはこのような市場トレンドに沿う形で開発されることになった。

 開発のポイントは、すでに発売になっていた麦を使った新ジャンルとどう差別化するか。検討を重ねるうちに着目したのが、当時の新ジャンルであまり訴求されていなかった家庭の食卓で、「食卓シーンを幸せにしたい」という情緒的な価値の提供を目指すことにした。ブランドマネージャーを務める皆福(かいふく)哲哉氏(ブランド戦略部 課長)は次のように話す。

「ビールを飲むシーンの大半は、家庭での食事。どういう気持ちになり食卓でビールを楽しむのかを調べていくと、『人とのつながり』がキーワードで見えてきました。そこには、ビールを飲む時間をいいものにしたいというモチベーションがあります。これに寄り添える立ち位置はユニークなことから、『食卓シーンを幸せにしたい』という情緒的な価値の提供を目指すことにしました」

サントリービール
ブランド戦略部 課長 皆福哲哉氏

国産麦芽をブレンドした贅沢麦芽を使用

 その後、2014年4月に『金麦 糖質75%オフ』、2019年2月に『金麦 ゴールドラガー』が発売。現在のラインナップになる。

『金麦』シリーズは発売以降、毎年のようにリニューアルを実施している。最新のリニューアルは2019年11月中旬に実施した。

「もともとの中味のコンセプトから大きく外れるリニューアルはしていません。コンセプトに磨きを掛ける観点からリニューアルを実施しています」と皆福氏。いままで支持してくれたユーザーを離さず、新しいユーザーを獲得するために、素材や製法を微妙に変えながらコンセプトを深化させてきた。

『金麦』シリーズの素材と製法のこだわり

 2019年のリニューアルでは、『金麦』シリーズのためにつくった国産麦芽とそれまで使っていた旨味麦芽をブレンドした贅沢麦芽を使用。国産麦芽は以前から研究が進められていたが、つくり手自らがつくった麦芽が実用化されたのは『金麦』シリーズが初めてである。

 そして、『金麦』では贅沢麦芽による麦の旨味を最大限に引き出す製法として、「三段階うまみ抽出製法」と呼ばれる新製法が採用された。新製法は、仕込釜の麦汁を煮出す工程で三段階の温度帯で丁寧に麦の旨味を抽出するもので、「温度帯によって旨味を抽出する方法を微妙に変えています」と皆福氏。この新製法により、麦芽由来の旨味にさらに磨きがかかった。

 ただ、『金麦』シリーズは麦の旨味と澄んだ後味の両立が味のコンセプト。澄んだ後味も高めてバランスを取るには、後味に残る微妙な「甘み」がカギを握っていた。皆福氏はこう話す。

「甘みがないと、キレを生む酸味が際立ち、麦の旨味と澄んだ後味の絶妙なバランスが崩れてしまいます。そのため、後味の甘みを調整して麦の旨味と澄んだ後味の絶妙なバランスを取り、後味に締まりが感じられるようしました」

季節に合わせて味わいをととのえた『四季の金麦』

 2020年に入り同社は、季節によって味わいを変える『四季の金麦』シリーズも発表する。〈春の金麦〉は1月中旬製造分から、〈夏の金麦〉は4月中旬製造分から出荷がスタートしており、〈秋の金麦〉は7月、〈冬の金麦〉は10月をめどに出荷が始まる予定だ。

『四季の金麦』シリーズは通常の『金麦』シリーズと併売されている。なぜ季節によって味わいをととのえたものの併売することにしたのであろうか?

 背景にあったのは2020年10月に改正施行される酒税法。ビールの酒税が7円減、新ジャンルの酒税が10円増(いずれも350ml缶)となり、ビールと新ジャンルの価格差が縮まることになった。

「店頭価格が上がるだけの価値は提供しなければならない」と話す皆福氏。商品そのものに価値を感じてもらうために、発売当初から守ってきた味わいなどに対するこだわりをより鮮明に打ち出すことにしたが、つくり手がこだわってつくったことを目で見てわかるようにするためのアイデアが、季節ごとに味をととのえるという『四季の金麦』シリーズ。季節によって体感温度や食事が変わるのに合わせて、中味を微妙に変えていくことにしたのである。

 企画されたのは、1年ほどの前の2019年春頃。仕込みや発酵、熟成の時間を考えると、時間に余裕はない。大急ぎで春夏秋冬ごとの味を定義しなければならなかった。

 各季節の味の定義づけは容易ではなかった。「限定品とは位置づけていませんので、『金麦』シリーズの味の骨格から外れることができません。骨格からはみ出さない範囲で季節ごとに味をととのえなければなりませんでした」と皆福氏。どの季節を飲んでも『金麦』シリーズと認識できることが不可欠であった。

限定品の中味と『四季の金麦』シリーズの中味の違い

 季節ごとの味の定義をひとことで言い表すと、春は「かろやか」、夏は「さわやか」、秋は「まろやか」、冬は「ゆたか」となった。金麦醸造家が室温を変えるなどしながら試飲を繰り返し、季節ごとの味の定義を決めていった。

2020年1月中旬製造分から出荷が始まった〈春の金麦〉

2020年4月中旬製造分から出荷が始まった〈夏の金麦〉

テレビCMに金麦醸造家が登場

『四季の金麦』シリーズの販促は、まず『金麦』のイメージキャラクターを務める女優の石原さとみさんがテレビCMで訴求した。〈春の金麦〉のテレビCMは、石原さんが春らしい雰囲気の中で〈春の金麦〉を楽しむ【春の金麦篇】と、石原さんと金麦醸造家が登場し、つくり手のこだわりで春に合うよう味をととのえたことを伝える【金麦醸造家篇】の2本立て。金麦醸造家も登場させることで、こだわってつくっていることを知ってもらうことにした。

 また、季節ごとに味わいが微妙に変わっている点は、小売店から見ると売りたい惣菜とセットで提案しやすいと映る。そこで公式LINEアカウント『おとなサントリー』の友達になると、小売店が売りたい惣菜や食材のリストがエリアごとに配信され、気になるものをクリックすると店舗のチラシに誘導されるという取り組みも実施している。

取材からわかった『金麦』シリーズのヒット要因3

1.コンセプトが発売以来ブレていない

 中味のコンセプトは、麦のうまみと澄んだ後味の絶妙なバランス。毎年実施しているリニューアルでコンセプトに磨きをかけ、味を追求し続けた。気に入って愛飲しているユーザーの期待に応え続けることができている。

2.こだわりの強さ

 これまでも素材や製法にこだわってきたが、2019年のリニューアルでは国産麦芽をブレンドした贅沢麦芽を採用し、2020年に季節ごとに味をととのえた『四季の金麦』を発売。こうしたこだわりが味の向上に反映されている。

3.食卓に根づいた

 ブランドの立ち位置は、「食卓シーンを幸せにしたい」という情緒的な価値の提供。ユニークだが、時間をかけてブランドを育ててきたことで食卓に根づいた。

『四季の金麦』シリーズと普通の『金麦』シリーズはどれだけ味に違いがあるのか? そして『四季の金麦』も春夏秋冬でどれだけ味に違いがあるのか? この2点はいま、多くの人が気になるところだろう。大幅には変わっていないので、しっかり飲み比べ違いを体感してみないと、ユーザーに価値が理解されにくい。飲み過ぎはよくないが、飲むなら腰を据えて付き合いたい。

ブランドサイト
http://suntory.jp/KINMUGI/

文/大沢裕司

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