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このままでは1年以内に国内の醸造所の半分が消滅!?国産クラフトビールメーカーを救うためにファンができること

2020.05.28

前回の記事で近年盛り上がりをみせていた日本のクラフトビール界が新型コロナウイルスの影響で危機的状況にある。小規模な醸造所向けに樽のシェアリングサービスや、出荷した樽の追跡管理アプリを提供しているBEST BEER JAPAN(以下BBJ)が独自に行ったアンケート調査の結果によれば1年以内に日本の醸造所の半数がなくなるという結果が出た。

そんな厳しい状況の中、前回は都市部のクラフトビールメーカーたちの試行錯誤を紹介してきた。今回は地方のクラフトビールメーカーがどんな努力を重ね、私たち消費者に何ができるのか、レポートしていきたい。

国内のクラフトビール71社に対し、「現状が続く場合、今後破産するおそれはありますか? ある場合、それはいつですか。」という質問に、「90日以内」と答えたのが5.6%、「91日〜180日以内」が12.7%、「181日〜365日以内」が38%。合わせて半数以上が「1年以内に経営が破綻するおそれがある」と答えている。

(提供:Best Beer Japan ピーター・ローゼンバーグ)

バレルエイジビールも瓶でオンラインで

地方の醸造所に目を向けよう。

長野県の野沢温泉村にブルワリーとタップルームをもつAJB Co.(Anglo Japanese Brewing)は、バレルエイジビールに力を入れるブルワリーだ。イギリス出身のリブシー氏と、妻の絵美子さんが経営に当たる。2014年創業、当初は300Lのタンク1つだった。2年半前に2500Lのタンクを備えたブルワリーを増設。まだその返済が残る中、冬の観光シーズンが終わり、樽の出荷先が都市部(特に東京)の飲食店に切り替わる時期に新型コロナの直撃を受けた。

野沢温泉村のAJB Co.のリブシー夫妻。タンクは2500Lと大きいが、社員は5名の小さな会社だ。

オンラインショップを立ち上げ、タンクのビールを手詰めの瓶詰め機でボトルに詰めた。

「これまでは飲食店への卸は大半が樽でした。飲食店の休業要請が終わった後も元に戻るまでには時間がかかると思います。テイクアウト用のビール需要が増えてくると思うので、これからは飲食店へ瓶の卸も増えてくると思います」と、リブシー絵美子さんは予測している。

今後しばらくはオンラインショップの売上が重要な柱になる。リブシーさんのオンライン対策のひとつがビールの種類を増やすこと。

「リピーターになってもらうためには、定番プラス新作が必要です。2500Lのタンクをメインに仕込んできましたが、これからは300Lのタンクをどんどん回して、小ロットでいろんな種類を提供していこうと思います」(リブシー絵美子さん)

AJB Co.が得意とするビールはバレルエイジだ。埼玉県秩父のイチローズ・モルトから譲り受けた樽やバーボン樽などで長期熟成させる。バレルで熟成されるビールはこの土地にしかいない野生酵母の力で熟成される。ランビックやセゾンといった種類のビールが熟成され、それらをブレンドしたビールは、日本では相当レアなクラフトビールになるだろう。

「バレルには野生菌がついているので、通常のビールとは完全に分けて造っています。そのためバレルエイジビールを瓶で売るために、バレル専用の瓶詰め機を1機、購入予定です。ブレンドするタンクはすでに購入、到着待ちです」という状況だ。

コロナ禍にさらなる設備投資でチャンスを見出す。小さな醸造所のチャレンジングな取り組みが、日本のクラフトビールの幅をまたひとつ広げてくれる気がする。

老舗クラフトが“地ビール”に原点回帰?

岩手県の日本酒造会社世嬉の一は1995年から地ビールに参入、そのブランド「いわて蔵ビール」はクラフトビール界の老舗のひとつだ。自社経営のレストレン、カフェもあるが、4〜5月はほとんど人が入らず、前年比マイナス95%。東京、大阪など都市部の飲食店への出荷は60%ダウンとのこと。

「赤字が続きますが、今はできることをやるだけ」

9年前の東日本大震災を経験している4代目の佐藤航さんは冷静に現状を見据える。

もともとスピリッツの酒造免許を持っていたこともあり、消毒用エタノールを製造して地域の医療施設や学校に収めたり、ビール用の大麦を使って“クラフトコーラ”を造ってみたり。取引先の飲食店に、自社のスイングトップボトルを配ってグラウラー代わりに使ってもらったり。「うちのロゴ入りで“蔵ウラー”と呼んでいます(笑)」

左から2人目が世嬉の一4代目、いわて蔵ビールの佐藤航さん。手にしているのが“蔵ウラー”

Zoom飲み会も開催している。だれでも気軽に楽しめるオンライン工場見学もあれば、コアなクラフトファンが集って「麦芽の配合比率は?」「発酵温度は?」などマニアックな話で盛り上がることもあるという。

クラフトビール界の助け合いも見られる。いわて蔵ビールが有する瓶詰め機で、他の醸造所の、行き場を失って困っているビールの瓶詰め作業を請け負っているのだ。

同じ岩手県に、遠野醸造という小さな醸造所がある。ここのビールの多くは併設のタップルームで消費されてきたが、4月からタップルームは自粛休業し、テイクアウト販売のみに。観光客も途絶えた遠野の町で、グラウラーでのテイクアウト販売には限りがある。瓶詰めして売りたいところだが、酒造免許の関係でブルワリー内の瓶詰めが認められない。それをいわて蔵ビールが引き取り、ボトリングして遠野醸造に戻した。ラベルは遠野醸造、王冠はいわて蔵ビールという、レアな商品が誕生した。

いわて蔵ビール自身、正念場を迎えている。全国のクラフトビール醸造所がいっせいにオンラインショップを立ち上げている中、「ヘイジーIPAを造れば売れる時代は終わった」と語る。

「うちはこれまで、ほぼエールばかりでしたが、これからピルスーナーを仕込みます。しっかり熟成させて飲み飽きないビールを造る。エールも地のものを活かしていろんな種類を造っていきます。地道な活動あるのみですね。もう一度“地ビール”の原点に戻りますよ」(佐藤航さん)

1995年創業のいわて蔵ビール。2000年代始めの地ビールが売れない時代も、3.11後も乗り越えてきた醸造所が、原点回帰を覚悟している。

クラフトビールファンにできること

緊急事態宣言は解除が進み、首都圏でも解除のメドが見えてきた。しかし解除後も当分は、レストランやビアバーに以前と同じように人が集まることはないだろう。“以前と同じ”が戻ってくるかどうかもわからない。そんな状況でクラフトビールファンができることは何だろうか。

日本のクラフトビールの将来を心配するBBJのピーター・ローゼンバーグさんは、日本の新型コロナ経済対策として「醸造所の酒税を1年延期するとか、500KL以下の小規模醸造所を免税にするなど、思い切った措置を考えてほしい」と話す。

現実的にはクラフトビールファンにできることは、とにかくオンラインショップでビールを買うことだ。ピーターさんはさらに、

「オンラインショップで注文するときは6本セットより大きなロットで注文しましょう。ブルワリーは出荷作業を減らせるし、購入者にとっては同じ送料ならたくさん買ったほうがお得です。また、ビールだけでなく利益率の高いグッズ(Tシャツやグラスなど)もいっしょに購入するとか、父の日や誕生日にクラフトビールを贈るとか。クラフト好きな人の誕生日に贈るのもいいですね」と提案する。

クラフトビールファンのみなさん、ひとつでも実践してみよう。好きなブルワリーだけでもいい。ひとつひとつの注文が、そのクラフトビールの行方を左右するかもしれないのだ。

■参照/Best Beer Japan
BBJ作成 クラフトビールECサイトマップ

取材・文/佐藤恵菜


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