人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

テレワークの「ワークの質」と「ライフの質」を改善するいくつかの要因

2020.05.21

コロナ禍で導入が進むテレワークだが、急ピッチで取り入れたために、ワーク・ライフ・バランスやマネジメントに関する課題が浮き彫りになった企業も多いはずだ。

このほど、株式会社リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所では、従業員規模300名以上の企業に勤務する、終日・半日・一部業務のみの少なくともいずれか1つの形態のテレワーク経験がある一般社員664名、管理職253名を対象に「テレワーク緊急実態調査」を実施。

【テレワークの「ワークの質」「ライフの質」「業務ストレス」への影響と改善要因】【テレワーク環境下で、感謝や助け合いといった協働志向のケア的なコミュニケーションを促す方法】など、調査結果から見える実態について公表した。

テレワーク環境下で、ワーク・ライフ・バランスはどう変化したか

テレワーク環境下で、ワーク・ライフ・バランスはどう変化したか尋ねる調査が行われたところ、最も多かったのは「変化しない」タイプで40.3%。

テレワークにおいて、オフィスワークとの違いを感じずに仕事生活や個人的生活を送ることができる人が4割いることがわかった。

次いで多かったのは「ライフの質のみ向上」するタイプで21.0%。仕事生活と個人的生活のいずれも質的に向上するワーク・ライフ・エンリッチメント(相互充実)を経験する人は2割強いるものの、その半数弱は業務ストレスも高まっていた。

また、「ライフの質」のみ向上して「ワークの質」「業務ストレス」はオフィスと変わらない人も2割強いることも判明。さらに、ワークとライフの質がいずれも低下し、生活全体の活性度が低下する人も1割強存在することが明らかになった。

「テレワークの習熟度」が、テレワーク環境下でのワーク・ライフ・バランスに影響を及ぼす

通勤やオフィス勤務に関連する何らかの理由で、業務の生産性や個人的な生活の質に改善の余地があった人々にとっては、テレワーク環境は、業務の生産性も個人的生活の質も高める要因となり得ることが示唆された。

ただ、図表1で、ワーク・ライフ・エンリッチメント(相互充実)を経験する人の半分は、業務ストレスも高まることがわかり、テレワーク環境に慣れないうちは業務ストレスも高まることもあるようだ。

しかし、時間が経過することや経験が増すことによって、業務ストレスを減少させるスキルが身についたり、環境が整っていったりすることが推測される。

また、「2.TW 歴浅・頻度高」群には、新型コロナウイルス感染症対策のため、経験も準備もない中、急遽テレワークを余儀なくされている方たちが多く含まれており、「ワークの質・ライフの質が共に低下、業務ストレスは変化なし」(タイプ5)の出現率が高い結果となった。そのような方たちの状況も、徐々に慣れていくことで改善すると考えられる。

テレワークの「ワークの質」「ライフの質」を改善する要因

図表2から、テレワークは時間経過や経験の増加により「ワークの質」「ライフの質」「業務ストレスの大きさ」が次第に改善されていくことが示唆された。

それ以外の要因がないか、5つの観点[1.セルフマネジメント 2.管理職のマネジメント 3.外部環境 4.組織特性 5.職務の特性]から分析が行われた。

1.セルフマネジメント

テレワーク環境での先行研究もある Houghton & Neck(2002)のセルフリーダーシップ尺度(SelfLeadership Questionnaire)※3 を翻訳して検証に用いた。

5つの要素のうち、「達成状態を描く」「自らゴールを設定する」「前提を見直す」の3要素9項目を測定し(図表3)、9項目の平均点が分析に用いられた。

※3 Houghton, J. D., & Neck, C. P. (2002). The revised self-leadership questionnaire. Journal of Managerial psychology
Vol. 17(8), 672-691.

2.管理職のマネジメント

一般社員には直属上司の、管理職には自身のマネジメントスタイルを回答してもらい、「直接支援型マネジメント」として3項目をオリジナルで、「自律支援型マネジメント」として4項目を中原(2010)※4
を参考にして作成された。

2つのマネジメントスタイルは相関係数※50.74 と強い相関を示しており、いずれも部下に関心を向けるマネジメント行動という点では共通しているようだ。

※4 中原淳(2010)『職場学習論』東京大学出版会.
※5 2 つの変数の一方が増えるともう一方も増えるといった連動する傾向がある関係を示す数値で、一般に 0.2~0.4 で弱い相関、0.4~0.7で中程度の相関とされる

3.外部環境

「市場環境の厳しさ(3項目)」

4.組織特性

「人材不足(2項目)」「大企業病傾向(5項目)」「柔軟性志向の HRM(9項目)」

5.職務特性

「自律的な職務設計(9項目)」「職務の相互依存性(2項目)」

以上から、外部環境から本人行動までのどの要素がテレワークに影響しているか分析が行われた。

分析の結果、それぞれのテレワーク下の「ワークの質の変化」「ライフの質の変化」「業務ストレスの増減」との相関係数が大きい順に並べたのが以下の図だ。

「達成状態を描く」「自らゴールを設定する」「前提を見直す」といったセルフマネジメントは、ワークの質、ライフの質ともに影響を及ぼすことがわかり、また、本人の工夫に任せる部分があり仕事の全体像や責任・成果が明確な「自律的な職務設計」も重要であることが明らかになった。

さらに、異動配置を通じた幅広い能力開発や、異動後の迅速な活躍に資する経営情報の開示などのポリシーをもつ「柔軟性志向の HRM」が、特に管理職のワーク・ライフの向上に関係している。

幅広い適応力のある人材づくりを組織で担保することが、テレワーク環境下での個人のワーク・ライフの質を向上させる可能性が示唆された。

一方、テレワーク下の業務ストレスに関連するのは、チームメンバーと互いに業務の進捗が影響し合う「職務の相互依存性」、ルールや制約の多さ、内向きだったり受け身だったりする仕事姿勢を示す「大企業病傾向」という結果となった。

非対面・非集合の業務環境で生産性と健康を高めるには、責任範囲を明確にしながら、チームや組織全体の成果に主体的に関心を向け合うような、「自律」と「つながり」を意識した職務の再設計が重要と考えられる。

また、自律支援型マネジメントと直接支援型マネジメントは、いずれもワークとライフの質的向上に関連があることがわかった。

自律できるように仕事を任せながら情緒的・情報的な支援をするマネジメントも、きめ細かい指示・指導やモチベーション管理をするマネジメントも、非対面・非集合の環境下で業務を前に進める支えになっているようだ。

しかし、業務ストレスの観点から見ると、直接接点を持って支援するきめ細やかなマネジメントスタイルは、部下のみならず管理職自身の負担も大きい可能性がうかがえた。

職務の再設計と併せて、マネジメントスタイルも自律とつながりの支援をするスタイルに変革していく意義が示唆される。

テレワーク環境下で有効な「ケア的コミュニケーション方法」とは

感謝や助け合いといった、協働志向のケア的なコミュニケーションは、テレワーク下のどのような環境に支えられているのかを明らかにするために、マネジメント環境(図表5 と同様に「外部環境」「組織特性」「職務特性」「上司のマネジメントスタイル」「セルフマネジメント」)・インフラ環境(通信インフラやコミュニケーションツールなどの利用と習熟)と、協働志向的なコミュニケーションの変化との相関係数が大きい順に並べられた。(図表 6、7)

組織行動研究所のコメント

テレワークにおける、ワークの質やライフの質の向上、業務ストレスのマネジメントには「慣れ」の要素があることがわかりました。

いま、少し辛い思いをしている方も、環境が整い経験が増えることで状況は改善し、テレワークのメリットも享受できるようになりそうです。

他方で、テレワークの環境下で希薄になりがちな仕事上での人とのつながりは、マネジャーによるきめ細かなケア、そして業務負荷の上昇によって担保されている状況が浮かび上がりました。

マネジャーが協働の「ハブ(結節点)」となる組織構造は、これまでは、対面・一律の業務環境に助けられて成立していました。

しかし、これからは、多様化していく働き方を駆使しながら、複雑さや不確実さを増す事業環境に向き合うという、ある意味過酷な環境において、協働を生み出す必要があります。マネジャーまかせ、マネジャー依存のままでは立ち行きません。

新しい組織づくりのヒントになりそうなのが、「柔軟性志向の HRM(人的資源管理)」、「自律的な職務設計」、「自律支援型マネジメント」です。個々人の「セルフマネジメント」や、従業員の間の「協働志向コミュニケーション」は、一朝一夕には育ちません。

個人の幅広い能力開発に投資したり、日ごろから経営情報を開示したりすること。

従業員が自分で判断できるような業務の与え方を工夫し、マネジメントスタイルを自律支援型に変革すること。

そのような環境づくりがあってはじめて、従業員一人ひとりが、組織に協働を生み出すような行動を主体的にとるようになるといっても言い過ぎではないでしょう。

リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所
主任研究員 藤澤理恵氏

出典元:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ

構成/こじへい

新型コロナウイルス対策、在宅ライフを改善するヒントはこちら

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2020年5月15日 発売

最新号のDIMEは年間300万円節約するサブスク活用術!特別付録は「デジタルポケットスケール」!

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 10401024号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。