
肌と肌の触れ合いで気持ちもつながることをMRIで確認
誰かとぴったりと寄り添うと、「マインド・メルド」がもたらされるかもしれない。
密接に体が触れ合っている人たちの脳を革新的なMRI技術を用いて評価したところ、脳の変化が同期していたことが分かったという。
この研究論文の責任著者であるトゥルク大学(フィンランド)のLauri Nummenmaa氏は、「大まかに説明すると、人と人との触れ合いの基本的なかたちである寄り添うという行為の中で、それぞれの脳も相手に“適合”することが明らかになった」と話し、「この手の研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)など、社会的な交流が困難になる疾患に対する対処法を考える上で有用だ」との見方を示している。
研究結果の詳細は「Frontiers in Psychiatry」4月28日オンライン版に掲載された。
この研究では、恋人同士を含む10組の被験者に、毛布の下で体を寄せ合い、30秒間の静止時間を挟んで交互に相手の下唇を30秒間指で軽く叩く行為を繰り返してもらった。その間、2人の脳の変化を機能的MRI(fMRI)で観察した。
このMRIは、通常の脳スキャンで用いられる16チャンネルのヘッドコイルを2つに分割して、MRI装置内で密着した姿勢をとる2人の脳を同時にスキャンできるようにしたもの。
Nummenmaa氏は「この研究の主な目的は、新たな2人用の脳イメージング装置の機能を評価することだった」と述べている。
MRI画像を解析した結果、相手の下唇を指で軽く叩く側と、相手の指の動きを見て触れられるのを感じている側の双方で、脳の感覚野および運動野のネットワークが賦活することが確認された。
Nummenmaa氏は、「この装置によって、2人の被験者の脳のシグナルを正確に検出することができた。また、相手に触れているか、触れられているかで、運動野および体性感覚野に明確に異なる活性化パターンが生じることが確認できた。さらに、両者で、運動野と体性感覚野の両方が、常にある程度活性化することも分かった」と述べている。
米マイアミ大学のTiffany Field氏は、友人関係または恋人関係にある10組のペアで脳の反応が同期していたとする研究結果は想定内だと話す。
「親密さが生理的および生化学的な反応に類似したパターンを引き起こすことは分かっている。この研究もそれを示したものだ。これまでの研究では、心拍や脳波、ストレスホルモン(コルチゾール)値といった指標でも同様の現象が観察されている」と指摘する。
同氏によると、例えば、一緒に過ごせる時間が短いカップルの場合、仕事中はコルチゾールの血中濃度に差が認められたが、終日ともに過ごす週末には、濃度差が認められなくなったとする研究結果がこれまでに報告されているという。
Field氏は「この研究チームがこうした研究をさらに追及すれば、カップルが寄り添ったり互いを抱きしめたりするときに、同じタイミングで同じような脳領域の活性化を確認できるのではないかと思う」との見方を示す。
ただし、この研究の真の価値は、2人の被験者の脳を一台のMRI装置で同時にスキャンしたという点にあるとも話している。
Nummenmaa氏らは、今回の研究で新たなMRI技術の有用性が認められたことを踏まえ、今後、脳が社会的交流をどのように処理しているのか検討する際に、さまざまなやり方でこの技術を活用できるとの見方を示している。(HealthDay News 2020年5月4日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyt.2020.00279/full
Press Release
https://www.aalto.fi/en/news/an-mri-in-each-others-arms-shows-how-physical-contact-alters-the-brains-of-couples
構成/DIME編集部
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