
夏越の祓は日本神話に由来する昔ながらの祭事です。全国各地の神社で執り行われていますが、自宅でも夏越の祓を意識した1日が過ごせます。自分自身はもちろん家族の無病息災を願って、年中行事に取り入れてみましょう。
夏越の祓とは?
『夏越の祓(なごしのはらえ)』は古くから日本に伝わる神事です。半年間の健康と厄除けを祈願するために、大切に執り行われてきた歴史があります。現在も全国各地の神社で実施されていますが、具体的にはどのように厄払いを行うのでしょうか。
半年に一度の厄落とし行事
夏越の祓とは、神社の伝統行事である『大祓(おおはらえ・おおはらい)』の一つです。大祓は6月30日に夏越の祓、12月31日に『年越の祓』として年に2回実施されています。目的は半年間の心身のけがれや、災厄の原因となる罪や過ちをはらい清めることです。
夏越の祓は『名越の祓』『六月祓』『夏越神事』とも呼ばれています。平安末期から徐々に衰退するようになり応仁の乱の影響を受けて一度は廃絶されたものの、江戸時代に一部の神社などで復活し、1871年の太政官布告によって全国の神社で執り行われるようになりました。
さまざまな厄払いがある
夏越の祓に行われる厄払いの方法には『人形(ひとがた)』を使ったものや『茅の輪(ちのわ)くぐり』などがあります。人型とは人の形を模した紙のことです。自分の『身代わり』として神社に納め、かがり火を焚いたり川に流したりして厄払いします。
茅の輪くぐりは『チガヤ』という草で編んだ『茅の輪』を使うのが特徴です。大きな茅の輪をくぐり抜けることで、罪やけがれを落とせるとされています。
夏越の祓といえば茅の輪くぐり
夏越の祓になじみがある人にとって、茅の輪くぐりは夏の風物詩の一つです。神社によっては茅の輪くぐりを実際に体験できたり限定の御朱印があったりと、夏越の祓ならではの雰囲気を満喫できます。
茅の輪くぐりは無病息災を祈る祭事
無病息災を祈願するイベントとして親しまれている茅の輪くぐりですが、元は日本神話が由来とされています。1人の旅人がある兄弟の前に現れ、一晩寝泊まりさせてほしいと願い出ました。裕福な弟は冷たくあしらいましたが、兄の蘇民将来(そみんしょうらい)は貧しいながらも温かく迎えたといいます。
旅人の正体は武塔神(むとうしん)という神様で、正体はスサノオ神であり蘇民将来に茅の輪を贈りました。蘇民将来は武塔神に言われた通りに茅の輪を腰に下げると、疫病が流行っても家族ともども無事で後世まで繁栄したと伝えられています。
茅の輪くぐりを見物できる神社仏閣
茅の輪くぐりを実際に見るだけでなく、体験できる神社もあります。釧路の守り神として親しまれている北海道の『釧路厳島神社』では、夏越の大祓式の神事が終わるまで自由に茅の輪をくぐることが可能です。
東京都の『金王八幡宮』は、夏越の祓前後の約1カ月間、茅の輪を設置しています。渋谷駅から徒歩5分というアクセスの良さも魅力です。ほかにも、愛知県の『津島神社』や兵庫県の『広峰神社』など、全国各地の神社で茅の輪くぐりが実施されています。
限定の御朱印も人気
御朱印とは、神社にお参りした『証』として授けられる印を指します。御朱印のデザインが神社ごとに異なることから、御朱印集めを趣味にしている人も少なくありません。
神奈川県の『御嶽神社』や東京都の『烏森神社』など、夏越の祓限定の御朱印がある神社もあります。烏森神社では『茅の輪守り』をデザインした夏越大祓御朱印が特徴です。
御朱印と一緒に茅の輪くぐりの文字が記されたお守りも入手できます。
自宅でできる夏越の祓の厄払い
自宅でも夏越の祓を意識した厄除けやお清めが可能です。普段の食事や掃除にワンポイント加えるだけで、夏越の祓にふさわしい1日になります。神社に行けない人も年中行事に夏越の祓を取り入れて、自身や家族の健康を願ってみましょう。
水無月を食べる
京都では、夏越の祓に『水無月(みなづき)』を食べる風習があります。水無月はういろうの上に邪気を払うとされるあずきをのせた和菓子です。三角形にカットして、削りたての氷が表現されています。
宮中では冬にできた氷を貯蔵して、旧暦の6月1日にある『氷の節句』で食べる習慣がありました。しかし、冷蔵庫がない時代とあって、庶民が氷を口にすることはなかなか叶いません。
そこで誕生したのが、氷を似せて作った和菓子、水無月です。蒸し暑くなる季節には甘くて食べやすい水無月で英気を養い、厄を払ってきたとされています。
夏越ごはんを楽しむ
公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構は、夏越の祓の行事食として夏越ごはんを提唱しています。飲食店・百貨店・コンビニエンスストアなどでも見かけますが、身近な食材を使って自分でも簡単に作ることが可能です。
夏越ごはんは、ごはんと茅の輪にちなんだ丸い食材があれば成立します。ごはんは豊穣祈願の意味を込めて雑穀入りのものにすると、より雰囲気を味わえるでしょう。
ごはんにのせる丸い具材は、ゴーヤーやオクラなど旬の野菜がぴったりです。かき揚げ丼・ビビンバ・夏野菜カレーなど好みの味を楽しみながら、無病息災を祈りましょう。
大掃除もおすすめ
夏越の祓は『六月晦日』とも呼ばれています。『第2の大晦日』というとイメージしやすいでしょう。年末に大掃除をするのと同じように身の回りをきれいにして、新たな半年を迎えてはいかがでしょうか。
蒸し暑くなる夏越の祓の時期には、悪臭やカビが発生しやすいです。臭いが気になる水回りや湿気がたまりやすい押入れを重点的に掃除するとよいでしょう。
季節の変わり目でもあるため、本格的な衣替えや不要になった服の処分を済ませるのもありです。
構成/編集部
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