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ジョン・レノンの少年期、マッカートニーと出会った頃を丁寧に描いた名作映画「ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ」

2020.05.18

■連載/Londonトレンド通信

 ずらり映画タイトルが並ぶ配信サービスで、記憶に新しい最近の話題作や誰もが知る古典的名作を外した中から、秀作を取り上げていきたい。

レッドカーペットが熱かった『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』

 今となっては遠い昔のようだが、コロナが大事になる少し前、騒がれていたのが東出昌大と唐田えりかの不倫ニュースだった。カンヌのレッドカーペットで東出が唐田をエスコートする様子まで取り沙汰された。東出の手が、ロングドレスで足元もおぼつかなく階段を上る唐田のお尻に添えられたとか。それで思い出した映画があった。

 その映画とは、サム・テイラー=ウッド(当時)監督『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』(2009)だ。2009年10月29日、ロンドン映画祭で開催されたワールドプレミアのレッドカーペットを思い出した。主演俳優アーロン・ジョンソン(当時)の、監督の腰に手をまわしたり、手をつないだりのエスコートがうっとうしいくらいだった。

サム・テイラー=ウッド(当時)監督とアーロン・ジョンソン(当時)
ロンドン映画祭『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』プレミア

 主役に抜擢された19歳の俳優が、42歳の女性監督を手厚くエスコートするのはわからなくもないし、監督は2度のガンからのサバイバーでもある。それにしても熱すぎだ。と思ったら、その直後、2人の婚約が発表されたのだった。翌年の7月7日には2人の間に女児誕生で、このレッドカーペット時は妊娠初期だったことになる。ひょっとしたら、その気遣いもあった手厚いエスコートだったのかもしれない。

 監督には前夫との間に既に2人の子供がいて、アーロンは若くして一気に3人の子持ち、間もなくもう1人生まれて4人のパパとなった。仲睦まじい23歳年の差カップルは、名前も仲睦まじくアーロン・テイラー=ジョンソン、サム・テイラー=ジョンソンに改名した。

 宮本信子を本領発揮させた伊丹十三監督、ヘルムート・バーガーの魅力を最大限に引き出してみせたルキノ・ヴィスコンティ監督などなど、私生活でもパートナーの監督と俳優は好結果を生むことが多い。いや、むしろ本領、魅力がわかるからこそ、私生活でも惹かれたということか。

 ジョン・レノンの少年期を描く『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』でも、テイラー=ジョンソン監督はレノンにアーロンの魅力を重ねてみせる。若きレノンは苛立っている。その反面、どこか寂しげだ。

 オーディションの際、「まずはお茶でも」とお茶の支度を始めた監督に、さっさとオーディションしろよと言わんばかりに少しイラついた態度を見せたのが、アーロン抜擢の理由だったというのも、よくわかる人物造形だ。

© 2009 Lennon Films Limited Channel Four Television Corporation and UK Film Council. All Rights Reserved

 レノンの苛立ちのおおもとは、複雑な家庭環境だ。ビートルズファンにはよく知られていることだが、レノンは両親とは生き別れ、母の姉であるミミおばさんに育てられた。

 だが、ある時、レノンは母が近くに住んでいることを知る。奔放な母にはレノンと歌い踊ることはできても、育てることはできない。母役のアンヌ=マリー・ダフと、対照的に厳格なミミおばさん役クリスティン・スコット・トーマスの両演技派女優が、生みの母と育ての母の心の奥まで感じさせる。

© 2009 Lennon Films Limited Channel Four Television Corporation and UK Film Council. All Rights Reserved

 一方で音楽に夢中になっていくレノンは、ポール・マッカートニー(トーマス・サングスター)と出会う。ロックの反骨精神に満ちたレノン、音楽家のマッカートニー、同じようにバンドを目指す少年ながら、対照的な2人の運命の出会いだ。

© 2009 Lennon Films Limited Channel Four Television Corporation and UK Film Council. All Rights Reserved

 さらりとした結末は、やり方によってはもっと泣かせるところだ。物足りないような気にさせて、後を引かせる、上手い締めと思う。

価格:¥1,143(税抜)
発売・販売元:ギャガ

『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』はテイラー=ジョンソン監督にとって初長編映画だったが、ワールドプレミアされたロンドン映画祭の閉幕映画でもあった。閉幕を飾るにふさわしい作品と判断されたわけだ。

 テイラー=ジョンソン監督は映画界では新人でも、アーティストとしてはもう活躍していて、映像作品などもあった。長編デビュー作と言えども、映像には1つの個性として完成されたものがあった。そのあたりは、前回ご紹介した『HUNGER/ハンガー』のスティーヴ・マックィーン監督同様だ。

 そう言えば、このイギリスのアーティスト出身監督2人は、カンヌのレッドカーペットで鉢合わせしている。マックィーン監督が長編映画デビュー作『HUNGER/ハンガー』で参加した際、テイラー=ジョンソン監督も短編映画で参加していた。「2人とも正装でカンヌのレッドカーペット上にいるのは可笑しかった」とテイラー=ジョンソン監督は語っていた。

 アーロンは『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』の後、マシュー・ヴォーン監督『キック・アス』(2010)で一躍知られるようになり、テイラー=ジョンソン監督は『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(2015)があたった。

 スーパーヒーローコメディー『キック・アス』は間抜けなヒーローが面白く、続編もできた。『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』の方はゴールデンラズベリー賞最低作品賞に選ばれるほどの酷評を受けた。が、エロティシズムで話題をさらい、数億ドルとも言われる興行収入となった。

 対して、テイラー=ジョンソン監督長編映画中では最も評価されている『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』は、その百分の一にも満たない興行収入だった。作品の良し悪しの前にエロだと観てしまうのはしょうがないとしても、せっかくの良作もうちょっと観てほしい。

U-NEXT等で配信中 ※予告なく配信終了することがあります。

文/山口ゆかり
ロンドン在住フリーランスライター。日本語が読める英在住者のための映画情報サイトを運営。http://eigauk.com

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