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フリーランスの立場で体験した新型コロナウイルス感染騒動の余波

2020.05.12

■あるあるビジネス処方箋

今回は、私がフリーランスとしてコロナウィルス感染拡大以降のこの2か月間で味わったことを書きたい。

毎月、雑誌やニュースサイト、本などに一定の本数の原稿を書いて、代価として報酬を受け取る。3月∼5月に、そのスピードに大幅な遅れ(1週間~3か月半程)が生じた。報酬額で言えば、150∼200万円前後が当初に予定していた時期よりも遅れて、金融機関の口座に振り込まれる見通しだ。もしかすると、さらに遅れる場合があるのかもしれない。

遅れが集中するのは、出版業界や広告業界の売上や正社員数の規模が中位から下位にかけての会社だ。特に担当者の年齢が、30代後半までが圧倒的に多い。

これらの場合、新卒時の入社の難易度が上がると、人材の質や仕事のレベルが相対的に上がる傾向がある。たとえば、特に業績や社員数などの規模が業界上位5番以内になると、ふだんからのコミュニケーションのレベルが高い。全般的に電話やメールのやりとりが的確で、迅速だ。会った時も、多くはソフトで柔らかい雰囲気を漂わせる。

中位から下位の会社になると、20∼30代の社員の言葉が総じて攻撃的で、挑発的な物言いになるケースが増えてくる。順位が下がるほどに、電話の物言いに侮蔑的な表現や差別的な言葉が出る傾向がある。下位では転職を繰り返したり、異業種から転職してきたりして。年齢の割の担当の仕事の経験の浅い人が目立つ。

この差は、今回の騒動で一段と鮮明になった。上位5番以内の会社の社員は、電話やメール、オンラインを通じてこちらと丁寧に情報共有をしようとする姿勢が明確だった。意思疎通がスピーディーで、正確だ。メールの文言からは、誠意を感じた。非常時には、平時の姿勢が出ることがよくわかる。仕事をするうえでの「型」がきちんと個々の社員に浸透しているのだとあらためて思った。

中位から下位の会社の社員のコミュニケーションのレベルは高いとは言い難い。むしろ、相当に低い。今回の騒動では、この型が十分には意識化できていないケースが極めて目立った。背景には、役員や管理職がマネジメントを正しく心得ておらず、部下の管理、監督、育成が十分にできていないことが考えられる。20代の社員が指導を受けずに、放置されていると思えるケースすらあった。

結果として自分の力を過大評価する社員が現れるが、それを指摘する上司がいない。20代の社員が1人で、担当者から管理職、役員までをしているケースもある。厳しい見方かもしれないが、「ダメな会社や担当者は、緊急時にもダメだった」と確信した。やはり、業界上位の会社には優秀な社員が多い。こちらの気分がよくなる機会も、下位の会社よりははるかに多い。

フリーランスは可能な限り、上位の会社や担当者と仕事をするべきなのだとあらためて思う。中位から下位は、時間の合間や資金繰りが苦しい時などにワンポイントとして取引する相手なのだろう。深入りはしないほうが、賢明なのだと思う。

最近はコロナウィルスの感染拡大に伴い、フリーランスを肯定的にとらえる記事がめっきり減った。つい最近まで、「会社に頼ることなく生きる自立した職能者」などと持ち上げるメディアや識者もいた。個人事業主歴17年の私は、その内容に一貫して疑問を感じた。ある断面の事実をことさら誇張し、加工しすぎの記事に見えたからだ。

労働政策研究・研修機構労働政策研究所長で、労働学者の濱口桂一郎氏など極めてごく少数がフリーランスの就労環境について深い洞察にもとづく論文やコラムを書き著わしている。私は、こういう人たちが「有識者」と呼ぶのにふさわしいのだと思う。

コラム「あるあるビジネス処方箋」でも、事実に基づき、フリーランスの置かれている厳しい現実を繰り返し伝えるようにしてきた。読者からするとおもしろい内容ではないのかもしれないが、記事を書くうえでの責任だと私は考えている。

今回の騒動でメディアや識者は、一転して「フリーランスの収入が大幅に減った」などと悲観的な内容を伝える。それも事実なのだろうが、はるか前から収入が不安定で、発注先からある意味でいいように使われる存在ではなかったのではないか。そのような現実を正しく報じることなく、読者にとって耳障りのいいことだけを発信してきた姿勢にこそ問題があったのではないのか。少なくとも、誠実な姿勢で情報を提供してきたとは言い難いと私は思う。

フリーランスにとって、今回の騒動は仕事をする相手の会社や担当者を見つめ直す機会にしていくべきなのかもしれない。

文/吉田典史

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