
「育児休業中でもやってもらいたいことは山ほどあるよ。あいつもやりたいって言ってくれているけど育児休業中は働いてもらうことはできないよね?」
「決まった曜日・時間ではなく、一時的・臨時的なものでしたら可能ですよ。」
「えっ、そうなの?」
この会話は、リーダークラスの男性社員から3ヶ月間の育児休業の申出を受けて、業務が滞ることを心配したある社長からの相談です。育児休業は生まれたばかりの赤ちゃんを養育するための休業で、その期間中は社会保険料が免除になり、さらに、給付金ももらえます。
育児休業は社員に認められた権利だからその期間中に働いてもらうことはできないと考えている方が多いですが、社員もテレワークならできる範囲で働くことを望んでいるような場合は、労使で話し合って業務をしてもらうことが可能です。平成30年度雇用均等基本調査によると男性の育児休業の取得は8割以上が1ヶ月未満ではあるものの、その割合は6.16%となっており、平成20年度と比較すると約5倍となっていて、男性の育児参加も増えてきています。
新型コロナウイルスの影響で、多くの会社がテレワークを実施していますが、今後さらに増えていくことが予想されます。人手不足もあり多様な働かせ方を模索する企業が多い中で、今回は、育児休業中にテレワーク等で働いてもらった場合に気を付けるべき点についてご説明いたします。
働いてももらえる?育児休業給付金の仕組み
育児休業給付金は、雇用保険に加入している社員が育児休業を取得したときに月給の約67%(6ヶ月経過後は50%)を給付してくれる制度です。ただし、育児休業期間中に働いて給料が支払われた場合は、下記の取扱いとなります(給付率67%で計算)。
・働いた日が1ヶ月11日以上、かつ労働時間が81時間以上・・・支給されません
・上記日数・時間未満でも支払われた賃金が月給の80%以上・・・支給されません
・支払われた賃金が月給の13%を超えて80%未満・・・「月給×80%」との差額が支給されます
・支払われた賃金が13%以下(0を含む)・・・全額支給されます
月給30万円の社員が1ヶ月でもらえる給付金を計算すると、下記となります。
① 全部育児休業で休んだ場合 30万円×67%=20万1千円
② 10日間40時間勤務して7万5千円が支払われた場合 30万円×80%-7万5千円=16万5千円 (合計24万円)
先述した調査によると、男性正社員が育児休業を取得しなかった理由の中で「業務が繁忙で職場の人手が不足していた」が27.8%と最も高くなっています。テレワークで働ける環境を用意して、必要な会議にはTeamsやZoom等のWebミーティングで臨時に参加してもらったり、資料を作成してチームメンバーを助けてもらったり、クライアントとの関係が途絶えないように連絡、必要に応じて対応をしてもらえれば、労使クライアントのWin-Win-Winを築くことも可能なのです。
働いても免除される?社会保険料免除の仕組み
社会保険に加入している社員は、育児休業を取得している間、健康保険料と厚生年金保険料が免除されます。免除期間中でも健康保険証は使用できますし、免除期間は、将来、年金等の支給を受ける際には保険料を支払ったこととして計算をしてくれます。
「2週間だけ取得した場合は、免除になりますか?」
特に男性社員に多いですが、1ヶ月に満たない期間を取得する場合は、免除について知っておいてほしいルールが2つあります。1つ目は、「月末」に育児休業を取得しているか、いないかで免除の有無が決まるということ。2つ目は、「賞与」も免除になるということです。
◎Aさん
6月1日から6月14日まで取得 月末は育児休業ではないので免除にならない
◎Bさん
6月17日から6月30日まで取得 月末は育児休業なので免除になる
月給30万円の社員であれば、月々の社会保険料は約4万円。6月が賞与支給月で賞与額が50万円の場合は、その賞与にかかる保険料は約7万円。なんと、月末に取得しているかどうかで約11万円の差がついてしまうのです。これらのお金を家族サービスにあてることができれば、家族との絆もさらに深まり、会社に対するエンゲージメント向上にもつながることが期待できます。
多様な働かせ方が必要な時代に
今回の新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの会社では多様な働かせ方を検討、実践しています。「毎日、同じ時間、同じ場所に全員が出社しなければ生産性は上がらない」という考えに、多くの会社が疑問を持ったのではないでしょうか。
今回ご紹介した「育休とテレワークの両立」は多様な働かせ方のごく一部ですが、最も大切なことは、会社が本気になって自社の社員一人一人にとって働きやすい職場環境を創造していくことです。そのような職場環境を創ることが、優秀な社員を引きとめるだけでなくエンゲージメントの向上にもつながります。また、緊急事態でもクライアントに対して同品質の価値を提供できることとなり、結果としてクライアントの信頼獲得につながっていくのです。
文/和賀成哉
社労士。大槻経営労務管理事務所所属。不動産の営業から同事務所に転職し、長時間労働の問題に取り組む中で社労士の資格を取得。「なぜできないのか」ではなく「どうすればできるのか」をテーマに、日々クライアントへの提案を行っている。また、労働と保険制度に関するセミナー講師としての顔も持つ。https://www.otuki.info
さらに、雑誌「DIME」最新号の特集は「最強!快速!テレワークギア」。新型コロナウイルスの影響で、在宅勤務を行なう人が急増していますが、それに伴って、様々なストレスや問題が生じているというのも事実。そんなテレワーカーのために、快適なテレワークを実現するための、デバイスの選び方(Web会議対応パソコン、高精細Webカメラ、超速Wi-Fiルーター、サブモニター、デスクライト、スピーカー、姿勢矯正椅子など)、本当に使えるビジネスチャットツール、効率的な仕事の進め方、環境づくりのノウハウ、セキュリティー対策、ソリューションサービスなどを詳しく紹介。さらに、最先端テレワークを実践している様々な企業のビジネスパーソンたちへの密着取材で、効率良く仕事をこなすノウハウも紹介します。
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