新型コロナウィルスの影響で、今まで注目されていなかった食品や、売上が低下していた食品にスポットライトが当たるようになっている。
今アメリカで売上が急増しているのが、ミールキットサービス「HelloFresh」。
Photo : https://www.hellofreshgroup.com/
先日Hello Freshからは、「第1四半期の売上高は前年比の約65%増になる」と発表された。
新型コロナウィルスの影響で高まるミールキットニーズ
ドイツ発祥のブランド「HelloFresh」だが、イギリス、カナダ、オーストラリアなど世界12エリアでサービスを提供しており、売上の半分はアメリカ。アメリカでの売上高が業績を左右している。
コロナウィルスの感染者数が世界一となり、外出自粛が続くアメリカでは、買物に行けない人々にとって、定期的に食材が届くミールキットはまさに「ライフライン」となっている。
また、長い自粛生活が続き、家での時間を持て余す人が増加している今、「自分で食材を揃える手間なく、新しいレシピに挑戦できる」ミールキットは娯楽サービスとしての役割も担っている。
Uber Eatsをはじめとするデリバリーサービスと比較し、劣勢だったミールキットサービス
ウーバーイーツなどのデリバリーサービスのニーズが高まるにつれ、アメリカ市場におけるミールキットサービスの売上は縮小していた。
(アメリカ発のミールキットサービス「Blue Apron」の株価は減少し続けていた。)
しかし、今回の新型コロナウィルスで形勢は逆転。
ウーバーイーツなどのデリバリーサービスは、自社で食材を提供していないため、サービスは飲食店に依存している。
コロナウィルスの影響で営業を停止する飲食店や、売上高が減少する中、ウーバーに支払う高い手数料を避けるためにデリバリーサービスの利用をストップする飲食店が増加してくると、デリバリーサービスは成立しなくなってくる。
その点、食材調達から輸送まで一貫して行っているミールキットサービスは、このような非常事態であってもサービスを継続することができる。
そのため、今アメリカではミールキットサービスの需要が高まっているのである。
日本でもこの動向は同じだ。ミールキットサービスの先駆けである「Oisix」では注文が殺到しているため、新規入会を一時的に休止している。
「有事の際でも定期的に食材を届けてくれる」ということが証明されたミールキットサービス。今後ますますニーズが高まっていくだろう。
多様なニーズに応じるアメリカのミールキット
2012年にアメリカでスタートしたミールキットサービス「Blue Apron」をはじめ、アメリカでは多くのミールキットサービスが展開されている。
日本でも複数の企業が参入しているミールキットだが、アメリカのミールキットサービスの特徴は「多種多様なニーズに合ったミールキットが展開されていること」である。
アメリカで展開されているユニークなミールキットサービスをいくつか紹介しよう。
オーガニック食材を使用「Sun Basket」
Photo : https://sunbasket.com/
使用されている食材の99%がオーガニックのミールキットサービス「Sun Basket」
抗生物質やホルモンを含まない肉や卵、さらに魚介類は養殖のものは一切使用せず全て天然のものを使用。
また、「環境に優しい」のもSun Basketの特徴。使用されている包装材は、保冷剤からプラスチックケースまで全てリサイクル可能な素材。
身体にも環境にも優しいミールキットサービスとして、人気を集めている。
過敏性腸症候群に適応した「Epicured」
Photo :https://www.epicured.com/
便秘や下痢、腸内でのガス発生によるお腹の張り、腹痛などの症状を引き起こす過敏性腸症候群(FODMAP)
ブロッコリーや豆、アスパラガスをはじめFODMAPを引き起こすとされている食材を使用せずに作ったミールキットが「Epicured」である。
ミシュラン3つ星を獲得したレストランでの経験を持つシェフと、管理栄養士のチームによって作られた、安心安全なミールキットだ。
賞味期限が長い商品が詰まった「Takeout Kit」
Photo :https://takeoutkit.com/
日本の味噌ラーメンやベトナムのフォーなど、世界各国の料理を取り揃えている「Takeout Kit」
自宅で世界旅行ができるだけでなく、保存期間が長いのも魅力。
こちらのサービスで提供している食材の保存期間は1.5~2か月と、他のサービスと比較して長いものが多いため、保存食としても活用できる。
ダイエットや体調管理のサポートをするミールキットサービス「Sakara Life」
Photo :https://www.sakara.com/
食へのこだわりが強い人向けのミールキットサービス「Sakara Life」。
オーガニックで、ヴィーガンで、グルテンフリーで、非GMO(遺伝子組み換え食品不使用)で、精製された砂糖は使用しない、という徹底ぶり。
ブライダル向け、10日間のデトックスメニューなど、それぞれのニーズに応じた食事プログラムも提供されている。
といったように、食アレルギーに対応したものや、保存食として活用できるもの、さらには健康管理をしてくれるものなど、多種多様なミールキットサービスがアメリカで展開されている。
今後日本でミールキットはどうなっていく?
コロナウィルスの影響で「有事の際でも定期的に食材を届けてくれる」ということが証明され、アメリカや日本で一層注目度が高まったミールキットサービス。
日本では、今まで家事の負担を軽くしてくれる「時短面」が着目されていたが、今後は「食の安定供給」さらには「健康管理」といった別の視点にフォーカスしたミールキットサービスのニーズも高まっていくのではないだろうか。
文/小松佐保(Foody Style代表)
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