
最後の別れとなる葬儀にもデジタル化の波が巻き起こっている。
親しい友人・知人が亡くなったときの葬儀への参列。訃報を知って悼む気持ちはあるけれど遠方なので難しい。まして新型コロナウイルス感染症対策で外出は避けたいし、参列するにも、密閉・密集・密接の「3密」による集団感染が気になる。
終活関連サービスを手掛ける「鎌倉新書」が3月16日に発表した調査結果によれば、新型コロナウイルス感染拡大の防止対策で葬儀への参列者数が減少しているが、参列する葬儀場への消毒液の設置などを求めている。それに対して葬儀社の約5割が参列者への要望に応えている。また葬儀社の約9割が参列者にマスク着用や消毒液の使用を求めている。
■葬儀の参列者が葬儀社に希望する対応
消毒液の設置、マスクの配布、葬儀スタッフのマスク・手袋着用など感染症対策の基本事項が並ぶ。
引用元:新型コロナウイルス感染拡大が、日取りを延期できない葬儀に与える影響 /鎌倉新書
同調査結果中の「直近1ヶ月で葬儀に参列した人の感想」には「お別れをしたい気持ちもありつつ、大勢の人が集まる場所に行くことが不安」というものがあった。
そんな不安を解決してくれる形で、オンラインで葬儀に参列できるサービスが登場してきている。
ライブ配信で葬儀の様子を配信するサービスを基本に供花や香典の手配サービスも
関東圏での冠婚葬祭業を営む「メモリード」社では、4月1日からオンラインで葬儀に参加できる場を提供し始めた。故人の友人・知人への訃報のお知らせ、葬儀場の様子を動画でライブ配信しての視聴、供花や供物の注文や香典の預かりなどのサービスが利用できる。大切な人との最後の別れをあきらめずに、しっかりと見送ることができる。
訃報や葬儀場の案内ページの例。パソコンで表示することもできる。葬儀の時間になると葬儀動画のライブ配信が始まる。このサービスではYouTubeを使ってライブ配信を行う。
引用元:サービスのデモ画面サイト。以下同
案内ページから供花の注文や香典の預かりなども利用できる。決済にはクレジットカードが使える。
実は葬儀場はセンシティブな情報がたくさん飛び交う。プライバシーの確保に課題か?
よくよく考えてみると葬儀場にはプライバシー情報がたくさんあふれている。
故人の友人・知人が集まってくることで、どのような人間関係があったのか。葬儀の規模を見ることで故人やその家族の財力がそれぞれ分かってしまう。
人の死を悼む場で、なんと不謹慎なと思う人もいるかもしれない。しかし悪事を考える人が故人の情報を得る場として、葬儀場は最適な場所でもある。葬儀だけでなく家族的な行事である冠婚葬祭全般で同じことがいえるものの、葬儀場ではプライバシーを守ろうという考えが故人を悼む悲しさに打ち負かされて、より脆弱になってしまうのではないだろうか。オンラインで葬儀を行う場合には、ライブ配信を一般大衆に見られるかもしれない。というプライバシーに関する意識をしっかりと持ちたい。
オンライン葬儀のデモサイトでは故人の関係者かどうかを確認する仕組みは見つけられなかった。YouTubeにはURLを知る人のみが動画にアクセスできる仕組みがあるものの、参列者の管理機能としては不十分。誰が視聴したか。視聴できるかをきちんと管理しておかないと、思いがけないところでプライバシーが侵害されてしまうだろう。参列の申込機能や参列者の動画視聴可否の機能などを具備して欲しい。
文/久我吉史
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