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パブのアルバイトからクラフトビールの作り手に転身したアウトサイダーブルーイングの女性ブリュワー小林桃子さん

2020.04.01

■連載/女性ブリュワーのクラフトビール

クラフトビール業界に女性ブリュワーが増えている……ということで、各地の気になる女性ブリュワーたちのクラフトビールを追った。第4回はブリューパブのアルバイトからブリュワーに転身したアウトサイダーブルワリーの小林桃子さん。

アウトサイダーブルーイング(山梨県甲府市)の小林桃子さん。

大手メーカーのラガーが好きでした

山梨県甲府市のアウトサイダーブルーイングは、クラフトビール好きには知られたブルワリーだ。数多くの新参者が、醸造長の丹羽智さんの元で研修を積み、各地へ巣立って行った。1階が醸造所で、2階がHops&Herbsというパブになっている。

2012年、アウトサイダーブルーイングの創業とともにオープンしたパブで、ホールスタッフとしてアルバイトしていたのが小林桃子さんだ。

小林さんは以前からビール好きではあったが、特にクラフトビールファンというわけではなかった。パブのアルバイトを始めたのもたまたま。だが、元来がビール好き。クラフトビールの世界に目覚めるのに時間はかからなかった。さらに、当時一人で醸造を切り盛りしていた丹羽さんから「ちょっと手伝ってもらえないか」と頼まれ、醸造の仕事を手伝ううちに、クラフトビールの作り手になりたい気持ちに火がついた。

「丹羽さんの作業を見ているのがホントにおもしろくて。山梨は桃が名産で、知り合いからよくいただくのですが、丹羽さんはその桃から天然酵母を取ってビールを仕込む。原料から立ち上げるところが特におもしろかったですね」

子どもの頃から図工や料理など、手づくりすることが好きだったという小林さん。店の階段や壁は、小林さんが描いた素敵なグラフィティで彩られている。「クラフトビールは、ザ・手づくりという感じで」ピタッとはまったらしい。

小林さんはそれから2年近く、丹羽さんの元で醸造の技術と知識を学び、アウトサイダーブルーイングの醸造家になった。

パブの階段の壁を飾るペイントは小林さんが描いたもの。

ハーブやモルトのブレンドが大好き

醸造長の丹羽さんは地方のブルワリーへ出向くことも多いため、今は小林さんが醸造所の作業を担っている。パブで提供するビールは定番の6種と限定ビールで常に10種ほどあるが、そのレシピづくりも小林さんに任されている。

「BOUQUET WIT」(ブーケ・ウィット)は、山梨県産の小麦と、桃からの天然酵母を使ったホワイト系のビールだ。日本でも女性に人気の高いホワイトビールは、副原料にコリアンダーを使うものが多いが、BOUQUET WITには入っていない。代わりに、ジュニパーベリーというジンの原料に使われるセイヨウネズの実と、エルダーフラワーという花とカモミールをブレンドしたものを使っている。ホワイトビール特有のバナナっぽい甘みがなく、ジュニパーベリーの爽やかさとハーブ系の甘みが立つ。

こうした原料のブレンドが小林さんは大好きで、得意だ。

「家では30種類ほどのハーブを集めて、いろいろブレンドしたハーブティーを飲んでいます。BOUQ UET WITのレシピづくりをしているときは、ハーブティーを何十杯も飲みました。洗濯用の柔軟剤も自分でブレンドしています。クエン酸とグリセリンと水に好きなアロマオイルを入れればできるんですよ」と教えてくれた。

モルトのブレンドも手が込んでいる。「THE SITH」(ザ・シス)というインペリアルスタウトは8種類のモルトをブレンドして造られている。その目指したところは「『ミロ』の後味」とのこと。飲んで納得。ちょっとココアっぽいのだ。色が真っ黒なことから、ネーミングは「スターウォーズ」のシスになったそうだ。今年1月、横浜で開かれたジャパン・ブルワーズ・カップで3位に入選している名作である。

アウトサイダーブルーイングのおためし6種セット

毎晩飲んで、毎晩おいしいと思えるビールを造りたい

アウトサイダーブルーイングはタンクが手動なので、仕込み中の糖化液の攪拌は人力で行われる。朝6時、500リットルのタンクに100キロの麦芽と300リットルのお湯を入れ、仕込みが始まる。単純計算で400キロある糖化液を、巨大なへらでかき回す。30分に1回。冒頭の写真がその作業風景だ。

モルトの仕入れは1回あたり1トン。1袋25キロで40袋になる。搬入時、ひとりで倉庫まで運ぶこともあるそうだ。大変な力仕事であることがおわかりいただけると思う。

そんな力仕事もこなしながら、小林さんがクラフトビールの世界に入って8年。各地のブリュワーと情報交換したり、東京で他のブリュワリーのビールを飲んだり、研究に余念がない。

「この世界はけっこうオープンです。気になったビールの醸造所へ行って、ブリュワーさんに話を聞いたり、仕込みを見せていただくこともあります。モルトの種類も教えてもらったこともあります。原料もオープンですよ。でも、たとえまったく同じ原料で、同じ造り方をしても、同じビールにはならないと思います。設備の違いもありますし、水も違う。同じものができないところがおもしろいんですよね」

その一方で、毎回、同じ味に仕上げる安定性を求められる。小林さんはこれからどんなビールを目指しているのだろうか?

「個性の目立つビールを造ってみたいと思うこともありますが、ビールって毎日飲んで、“あ〜おいしいっ!”というものですよね。私も毎晩ふつうに飲めるビールを造りたいです。以前は毎晩、大手メーカーのラガーを飲んで、毎回おいしいと思っていました。それってホントにすごいことなんだと思います」と話す。

レギュラービールのホップなメニュー

定番ビールを追究する一方で、ビールの幅も広げていきたいと語る。

「山梨はぶどうの名産地。毎年秋になると、ぶどうを使ったシードルのようなビールも造っているんです。ワイナリーから樽をお借りしてバレルエイジにも挑戦したいですね。インペリアルスタウトを貯蔵するとバニラ香がついたりするので」

原料だけではなく、醸造方法、貯蔵方法でも新たなものを吸収しようとしている。

3年前、醸造の手伝いをしていた頃、小林さんが初めて自分で造ったビールはW-IPA。できあがったそれは、まったく納得できない味だったと言う。今年の2月に、小林さんはふたたびW-IPAを仕込んだ。3月末に仕上がる予定だ。今回は「楽しみにしていてください」と、自信がありそうだ。

(データ)
アウトサイダーブルーイングHops&Herbs:山梨県甲府市中央1-1-5 ミヤザワビル2F
営17:00〜0:00 土・日12:00〜0:00 休火 電話:055-225-2012

取材・文/佐藤恵菜 撮影/山本智

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