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京の酒蔵生まれのクラフトビールは個性を主張せず、はんなりと。京都町家麦酒の女性ブリュワー三好ちづ子さん

2020.03.30

■連載/女性ブリュワーのクラフトビール

クラフトビール業界に女性ブリュワーが増えている……ということで、各地の気になる女性ブリュワーたちのクラフトビールを追った。第3回は、ドイツつながりでビールの世界に入ったという京都町家麦酒の三好ちづ子さん。ブリュワーの仕事とはなんぞや? を聞いた。

京都町家麦酒の三好ちづ子さん。

ビールよりもドイツに興味があって地ビール会社へ

京都町家麦酒は、名水で知られる京都・伏見で200年余の歴史を持つ蔵元キンシ正宗が、1997年に設立した“地ビール”だ。その創立当時、新卒で入社して以来ずっと、ビールを醸造しているのが三好ちづ子さんである。

生粋のビール好きだったわけではない。好きなのはドイツだった。三好さんは京都の大学でドイツ語を専攻。将来はドイツに関わる仕事をしたい……と思っていたところ、たまたま京都町家麦酒と縁があった。

「ビールとは仕事として向き合いましたね。そのうちドイツビールの視察でも行けるかな、という期待もあって。ちょうど日本で地ビールの盛んになり始めたころで、ドイツ系のケルシュとかアルト、ヴァイツェンなどが人気でしたよね。うちもドイツ系のビールをラインナップしていました」

今もそのラインナップは健在だ。それにしてもビールに特にこだわりがなかったという三好さん、醸造所に入って、どんなビールを造っていたのだろうか。

「当社がもともと京料理と関わりが深いので、和食に合うことが基本でしたね。そのためには、できるだけ特徴が突出しないといいますか、キャラの立たないビールを目指していました」と笑う三好さん。なんだかとってもふつうの人が京都名水の地で、ビールを造りづけている。

なお、入社翌年の98年には、ドイツのミュンヘン、バンベルグなどの醸造所を視察。入社当初の夢はしっかり叶えていた。

京都伏見の日本酒の蔵元から生まれた京都町家麦酒。

微生物が働いてくれる環境づくり。「私はハウスキーパー」

今回は「女性ブリュワーには男性ブリュワーとは別の視点があるのでは?」というテーマでインタビュー。その点を三好さんにストレートに聞いてみた。

-----醸造法やレシピなどに、女性ブリュワーならではと思われるものはありますか?

「そうですね、男性も同じかもしれませんけれど、私は醸造家の仕事は、できるだけ微生物に機嫌よく働いてもらうことだと思っているんですよ。酵母や他の微生物たちが働きやすい環境をつくる、言うたらハウスキーパー。家事に近いですよ。大きな鍋(タンク)でビールを造って」

-----設備のメンテナンスもされるのですか?

「もちろんします。お掃除はとても重要です。どんなにいい材料を使っても、掃除が行き届いていなければいいビールはできません。取りこぼしがあってはいけないので、メンテナンス、掃除の工程がどんどん増えていく。たとえば設備を洗浄したあとにも残る菌がいます。その数を専用のキットで測定するのですが、その測定する間隔がだんだん狭まってくるんです。もっとこっちもチェックしたほうがいいとか。工程数は増える一方です」

-----では、20年前より忙しくなっているのですか?

「ただ作業に慣れている分、効率化できています。また、醸造の基本は変わりませんが、樽を洗う機械や、ビールを瓶に詰める機械はスピードアップしていますからね」

「クラフトビールは個性的過ぎてちょっと、ね」という人にも

----京都ならではのむずかしさはどんなところですか?

「やはり夏ですね。暑いですから。ビールは温度を上げたり下げたりして造りますが、外気温が高過ぎると、ビールの温度が下がってくれない。ふつうは6度下がるところが3度しか下がらないとか。そんなときはクーラーをぜんぶつけて帰ったり、他にできることはないか考えたり。そうやってまたチェック項目が増えます。できるかぎり100点に近づけようと思いますが……そこからですね、先に新しいビールが考えられるのは」

-----これから三好さんが造りたいと思うビールは?

「あまり多くを主張しないやさしい味わいのビールですね。クラフトビールは個性的過ぎてちょっとね、とおっしゃるお客さんにこそ飲んでいただけるようなビールを造りたいです。そのために、あまり自分自身がビールの専門家にならないように心がけています。どうしても突きつめたくなりますが、そうするとどんどん個性的になってしまうので」

------京都町家麦酒の3本の定番は20年のロングセラーですが、こちらもなるべくキャラが尖らないように設計されているのですか?

「定番のビールも、20年前と同じ味ではありません。時代の求めるものを、ほんの少しずつ取り入れているんです。でも目指しているのは同じ味。ずっと同じものをつくっていくことのほうがむずかしいと、この仕事を長いことやっていると思います。20年前と同じものを飲んでいただいていることが、有り難いと思います」

個性を主張しないクラフトビール。なにか相反するような表現になるが、これが京の老舗のクラフトビール。それを醸造の専門家であることを主張しない三好さんが守り、造りつづけている。飲みつづけている人にだけ、「ほんの少しずつ」の変化が味わえるのかもしれない。

京都町家麦酒の定番3本。左からケルシュタイプ「京都町家麦酒かるおす」、アルトタイプ「京都花街麦酒まったり」、ドライスタウトタイプ「京都平安麦酒くろおす」。

(データ)
京都町家麦酒 電話075-611-5201 京都市伏見区紙子屋町554-1  
醸造所は造り酒屋と町家文化の博物館「堀野記念館」の一角にあり、ビールも購入できる。

取材・文/佐藤恵菜

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