
日本人ならタイと聞くと最近では〝安・近・短〟の海外旅行先というイメージがある。実際、筆者も過去に5〜6回訪れているが、旅の醍醐味のひとつが〝屋台メシ〟。首都のバンコクに限らず、地方都市、僻地の村落に限らず、そこかしこに屋台が連なっている。だが、お祭りや催事が年中行なわれているわけではない。タイ国民の多くが朝昼晩、3度の飯を屋台で摂るからなのだ。
なぜか? 実はタイの住宅には日本の住宅には当たり前のようにある〝アレ〟があまりないというのだ。
何と、台所!
これはいくつかのタイ特有の生活習慣が合わさった結果なのだというが、大きな理由のひとつが
〝家を汚さないために自宅であまり料理をしない〟
ことだとか。今でこそタイでもガスやIHなどで調理できるようになってきているが、ひと昔前は米を炊くのに炭を使っていた。そのため自宅が煤で汚れるなら屋台で食べたほうがいい、という考え方があるという。当然、屋台飯もタイ国民の胃袋を支えるだけあり、どれも安価。実際、筆者も現地でひっそりと食べたが、60バーツほどでたらふく食べられた。
そんな日本と大きく異なるタイの住宅事情を知るきっかけになったのが、首都バンコクでパナソニック ライフソリューションズ社(以下、LS社)が行なった戦略説明会。パナソニックというと@DIME読者の多くは〝家電〟をイメージしがちだが、LS社が手がけるのは電材や住宅設備事業。そのハウジングシステム事業部が2030年までに〝海外売上げ1000億円を目指す〟と発表したのだ。
戦略説明会で上席副社長の伊東大三さんは、「東南アジア5カ国(インドネシア、フィリピン、ベトナム、タイ、マレーシア)の総人口は2030年に6億4000万人に達する」と解説。それに伴い、「住宅着工数は日本と比較して5倍(2021年予測)にもなり、2030年までに一気に都市化が進む」と話す。
それを証明するように、バンコクも東京のように人口が一極集中していおり、今では郊外にまでコンドミニアムが立ち並び始めているという。当然、地価も上昇するので限られたスペースをいかに有効活用できるか否かが重要なのだ。そこで求められているのがLS社のハウジング事業というわけだ。
その一方で「2020年以降は東南アジア5カ国は、日本と同じように高齢化が進行し、生産年齢人口比率が下降するという。人材不足など、日本が現在抱えている課題に東南アジアも直面する」とグラフなどを示しつつ解説した。
当然、パナソニックといえど1社でこの大事業を果たせるわけはない。ハウジングシステム事業部 事業部長の山田昌司さんは「ASEAN地域でも、現地のパートナー企業別に、各地におけるマーケットの発展度合いに合わせて、拡販体制を整えている。そのキーワードは〝工業化〟〝高齢化〟〝高機能化〟を切り口に、各国のパートナー企業を開拓している」と話す。