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「正しいことをするゆとりがない」メキシコの民間救急車に密着したドキュメンタリー映画『Midnight Family』の衝撃の内容

2020.03.22

■連載/Londonトレンド通信

 タイトルはルーク・ロレンツォン監督の言葉だ。自作『Midnight Family』の主人公一家が置かれた状況を指したものだが、折にふれて思い出す言葉になった。

 誰もが公に発言できてしまうSNS時代、正義を振りかざして何でもジャッジしがちだ。道義的に疑問の残る選択をしてしまうこの主人公一家も、非難しようと思えばいくらでもできる。だが、ロレンツォン監督はそうしなかった。そして、一家の置かれた状況を「正しいことをするゆとりがない」と表した。

 ロンドンで9月に開催されたオープン・シティー・ドキュメンタリー・フェスティバルでのコメントだ。上映では、プロデューサーのケレン・クインが登壇した。

 クインは映画の成り立ちを「アクシデントでした。ドキュメンタリーというのはそういうものですけど」と話し始め、「ルーク(・ロレンツォン監督)は交通機関を撮ろうとしていました。スクールバスとかトラックとか。そして、その救急車を見つけて、彼らにドキュメンタリーの話を持ちかけ、了承を得ました。撮り始めて少ししてから、ルークはプロデューサーを、僕はメキシコシティについてのプロジェクトを探していました。それで、お互い気に入ったわけです」という。

 救急車の彼らとはオチョア一家、私設救急車をビジネスにしている家族だ。

 上映に参加できなかったロレンツォン監督は、あらかじめ質問に答える形でコメントしている。以下、その中の言葉とともに映画を紹介していきたい。

 「ある朝、目覚めると、僕のアパートの前にオチョア一家が駐車していて、彼らの救急車に一緒に乗ることを頼んだその最初の晩に、生計を立てようとするこの1つの家族に、ユーモアから悲劇までの感情の全階層を見ました。すぐ、彼らに焦点をあてようと決めました」。

 900万人の人口に対し公式救急車が45台しかないメキシコシティに、登場したのがこのオチョア車を含む営利目的の私設救急車だ。

「そんな人々ができる様々なバージョンのベストにより、正否が窓から放り出されたような非常に複雑な状況です。彼らは、いつでも正しいことをするゆとりがない状況にいて、このシステムの中で生活の糧を得ることは、不幸にも彼らがそうしたいと思うように人々を扱うことと葛藤があります」。

「崩壊による被害者の階段です。救急システムの被害者である患者、警察の被害者である救急システム、政府の被害者である警察。これらの大きな不全が、人々の生死に影響している」。

「彼らをまだよく知らなかった頃、彼らの不安定さを体裁よく見せようとしたのですが、まったく的外れな映画になりそうでした。それならと全てを映し出したものでは、彼らは完全な悪党です。僕が感じたもの、そして彼らの生活がどういうものかに、ほんとうであるためのバランスをとるのはチャレンジでした」。

 そうして出来上がった映画で、私たちはまず、彼らの救急車、そして彼らと知りあっていく。救急車の床にはボールが転がっている。ボールと戯れて暇な時間をつぶす小学生であろう男子、ティーンエージャーの兄と中年の父がメインの乗組員だ。

 患者を病院に運んだはいいが、どこからも支払いが受け取れず、持ち出しのボランティアになってしまう顛末がある一方、取り返しのつかない事態も起こる。これが正規の救急車だったら、あるいは…と臍を嚙むような思いだが、彼らの暮らしぶりを知ってしまった後では、もう彼らを責める気にはなれない。

 81分のこの映画は、イギリスでは2月21日から劇場とオンラインで公開された。日本ではNHK BS番組『世界のドキュメンタリー』で『真夜中の家族 ~密着 メキシコ民間救急車~』と題された短縮版が1月21日放送、2月3日再放送された。また、投票数が多ければ5月頃アンコール放送される。以下の映画詳細ページから、3月締め切り予定の投票ページに行ける。
http://www6.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/?pid=200121

文/山口ゆかり
ロンドン在住フリーランスライター。日本語が読める英在住者のための映画情報サイトを運営。http://eigauk.com

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