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「ふつうの家族」って何?定形外家族を普通だと思える日はやってくるのか

2020.03.19

「家族」と聞いて、ふつう想像されるのは、夫婦と実子から構成される血縁集団だろう。

それ以外の、例えば、シングルマザーと子どもの世帯や同性カップルの世帯を最初に思い浮かべるのは、(自身がそうした家族の中で育った場合を除き)なかなかないかもしれない。

こうした「ふつうの家族」ではない家族、特にその子どもを見て、「かわいそう」などと思いがちだが、はたしてその認識は正しいのだろうか?

いろんな形の家族をアリの世の中に

フリー編集者・ライターの大塚玲子さんは、「ふつうの家族」に当てはまらない人たちを「定形外家族」と呼び、「いろんな形の家族をアリの世の中にしたい」と活動している1人だ。

大塚さんは、運営する「定形外かぞく(家族のダイバーシティ)」のサイトで、定形外家族は「無視されたり、偏見の目で見られたりしがちです。そのため、当事者たちは“ふつうの家族”を装わざるを得ず、ストレスを感じている場合が少なくありません」と指摘する。

大塚さんが運営する「定形外かぞく(家族のダイバーシティ)」のトップページ

そこで、多様な家族のあり方を受け容れる社会になるよう、トークイベントや交流会のかたちで働きかけを行っている。その場に参加する定形外家族は、実際さまざまなバックグラウンドを持つ人たちだ。

大塚さんは、東洋経済オンラインの連載「おとなたちには、わからない」で、いろいろな環境に育った立場の人にインタビューを行い、これをもとに著書『ルポ 定形外家族 わたしの家は「ふつう」じゃない』(SBクリエイティブ)で15の定形外家族を紹介している。

別姓を維持するためペーパー離婚した夫婦

本書に出てくる定形外家族には、例えば「夫婦別姓のためペーパー離婚」した夫婦の子・将也さんの視点が描かれている。

「両親が結婚している、と僕は思い込んでいたので、小学校のとき、クラスの子から『結婚するには、苗字が一緒じゃないといけないんじゃない?』といわれたとき、『うちの親は結婚しているけど、苗字は別々だ』みたいに答えてしまって、間違ったことをいってしまったのが、恥ずかしかったです。親もいつか教えようと思っていたんでしょうけれど『遅いよ』と(苦笑)。僕が聞かなかったら、いついったんでしょうね」(本書31pより)

結局、将也さんが親の口から離婚している事実を聞かされたのは、親に「離婚していないよね?」と質問したときだという。親の答えは「離婚してるよ」だった。書類上は離婚していても夫婦仲(?)は良いこともあってか、将也さんがショックを受けていたのは数十分で済んだ。

大塚さんは、家庭の特殊な事情を子どもに説明するタイミングは、定形外家族ではしばしば難題になるという。

「定形外家族では、いわゆる“ふつうの家族”と違う理由を子どもに説明する必要がありますが、親たちはよくそのタイミングに悩んでいます。隠すつもりはないものの、『子どもがもうちょっと大きくなってから』などと先延ばししていると、思春期に入ってしまう、大人になってしまう、ということになりがちです」と大塚さんは語る。

赤ん坊の取り違えで血縁関係のない家族で育って…

もう1つ、まったく異なる例を本書から取り上げよう。数十年もあとになって、産院で赤ん坊の取り違えが発覚した、というものだ。自宅出産から病院・助産院での出産への移行が進んでいた昭和の一時期のことで、けっして稀有なことではなかったという。

取り違えられた江蔵さんは、小さい頃から親戚に「おまえは誰にも似ていないね」など言われ、父親とは反りが合わず「顔が変形するほど殴られた」。耐えられなくなった江蔵さんは、中学2年で家を出る。

いまから半世紀前近く前とはいえ、周囲に14歳で家を出るような子どもはいませんでした。以来、焼き肉屋で調理師の見習いをしたり、クリーニング屋で手伝いをしたり、年齢をごまかして住み込みで働きながら中学に通い、ほかの生徒よりも数か月遅れで卒業証書を受け取ったといいます。(本書97pより)

DNA鑑定で両親との間に血縁がないことが判明したのは、46歳になってから。検査を受けた病院で「産院での取り違えしか考えられない」と言われたとき「頭の中は真っ白」になったというが無理もない。江蔵さんは、本当の親を探し続けているが、まだ見つかっていない。

ここまで極端でなくても、養子縁組によって、血縁はないが親子となる例は比較的よくある。生みの親との関係がなくなる特別養子縁組だけでも年間500件ほど。本書には、30代になって結婚する際に、養子であることを告げられた女性の事例がある。養子であることを自分以外の親戚が知っていたことはショックだったそうだが、ポジティブな感情が勝っているという。

自分の親と思っていた人物がそうではないと知って、ネガティブになるかポジティブになるかの境目はどの点にあるのだろうか。大塚さんは、次のように話す。

「『親が心から望んで自分がそこにいる』と子ども本人が感じられるかどうかの違いなのかな、という気がします。『やむを得ない結果として自分がそこにいる』と子どもに感じさせてしまうと、傷つけてしまうのではないかと思いました」

本書にはこのほか、親が病気のケースや虐待を受けながら育ったケースなど、さまざまな定形外家族が登場する。傍から見ても深刻な実情に、考えさせられるところも多いが、周囲が「かわいそう」と決めつけるから、子どもが「かわいそう」になっていることも少なくないという。とまれ、あなたが「ふつうの家族」の一員であれば、本書から得られる気づきは大きく、もし定形外家族の一員であれば共感と学びもまた大きい。多様な家族のありかたを理解する一助として、一読をすすめたい。

大塚玲子さん プロフィール
「定形外かぞく(家族のダイバーシティ)」代表。出版社、編集プロダクションを経て、ノンフィクションライターとして活動中。PTAなどの保護者組織や、多様化する家族を取材・執筆。これからのPTAのあり方や改善方法、多様な家族のあり方等について講演活動にも力を入れる。

文/鈴木拓也(フリーライター兼ボードゲーム制作者)

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