『Apple Pencil』や『Smart Keyboard』が全ベーシックに対応し、さらにPCに近づいた現行の『iPad』。各ジャンルのプロも仕事用ツールとして活用する。仕事を効率化する使い方を達人に聞いてみた。
建設業 ×『iPad』
「様々な職人さんたちの声をスムーズに集約できます」
現場の業務改革デバイスとして、『iPad』にいち早く着目し、2012年、建設現場の職員3000人に配布を開始したのがゼネコン大手の大林組だ。2015年には、作業現場の記録ノート〝野帳〟をデジタル化したアプリ「eYACHO(イーヤチョウ)」を、システムなどの制作を手がけるメタモジと共同開発した。
「社内ではメタモジの無料アプリ「NoteAnytime」が使われていましたが、現場からの要望をヒアリングし『eYACHO』の開発につなげました。Ver.1の段階で、出面表が現場で作成できる表計算機能や手書き変換、タグ付け、録音、測量テンプレートが実装され、1年後のVer.2ではデータ共有機能も追加されました」(堀内さん)
工事の黒板作成も可能になり作業効率は大幅に向上したという。
「転機になったのはVer.3に搭載されたシェア機能です。現場の記録をリアルタイムで共有でき、内容をより確実に素早く伝えることが可能になりました」(堀内さん)
バージョンアップは年1ペースで、最新のVer.5では、製図のレイヤー機能も実現。さらにシェア機能も強化され社内のペーパーレス会議にも『iPad』が用いられ、現在では内勤者を含め9000台が利用されている。
「進化しすぎて〝野帳〟は一機能になってしまいましたが、今後は集積したデータをどのように使用するのがベストか、検討をしていきたいですね」(鈴木さん)
(左)大林組 技術本部本部長室 企画課 副課長 鈴木理史さん
(中)大林組 グローバルICT 推進室部長 堀内英行さん
(右)大林組 グローバルICT推進室 技術ICT推進課長 小島健司さん
「建設の技能や知識をデジタルとして共有し伝承する目的もありました」と言う堀内さんは、『iPad』導入のキーマンで、現在は小島さんがその役目を担う。鈴木さんは「eYACHO」立ち上げから開発に携わる。
【こんなふうに仕事で使ってます!】
工事写真の撮影も『iPad』で
JACICの改ざん検知機能・小黒板情報連携機能に対応。工事写真の電子納品にも利用できる。
写真やPDFにもメモできる
現場で撮った写真に直接指示を書き込めるので半日~1日必要な是正指示も現場で完了する。
取材・文/安藤政弘 撮影/田中一矢