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AIに奪われる仕事と奪われない仕事 

2020.03.07

すでに実用化が進んでいる「AI」ですが、最近では一般的な言葉となりつつありますが、では「AIとは何なのか?」どれくらいの方がご存知でしょうか。今回はAIとは何か、AIの活用など基礎的な話をしていきたいと思います。

AIとは?

昨今、AIが非常に話題になってきましたが、今回は第3次AIブームと言われています。第1次が1950年-1960頃、第2次が1980-1990頃でした。第3次AIブームの大きなきっかけとなったのはディープラーニングです。これは2006年に認知心理学の研究家でもあるジェフリー・ヒントンにより発明されました。今までのAIはルールベース(ルールを登録したもの)や数式による処理が中心でしたが、第3次AIは入力データの中から自ら特徴を判定し、その特徴パターンを学習し結果を出すというものです。初めて人間の様な知能をもったコンピュータの出現、と言われることもあるようです。

過去に私は、第2次AIブームのAIプログラミングを行なった経験があります。新卒で入社した会社で、工場において複数ラインの週間計画を最適化するためAIを使うというものでした。1台1億円のUNIXマシーンを8台並べ、並列処理を行うのです。複数の工場ラインと製造する鉄の諸元(SPEC)に合わせ、最適な製造パターンを算出するというもので、製造コストや納期を考慮すると数十億のパターンから最適解を導き出すAIでした。

この当時の最適化処理は、学生時に習った線形計画法(LP)を多段階で解く感じで、混合線形計画法(MIP)と呼ばれるものでした。今でも検索するといくつかの記事が出てきます。この頃のAI(第2次)と今のAI(第3次)とは全く違います。今のAIは、AI自らが大量のデータを見てチェックすべき特徴を割り出し、そこから判定パターンを作り処理を行ってくれます。

ビッグデータがAIを作る

第3次AIが第2次AIと大きく異なるのは、大量のデータが必要という事です。第2次AIは人間が数式を作り処理を行わせるものでしたが、第3次AIの「ディープラーニング」は大量のデータから自動的に判定ロジックの様なものを生成するため、大量の教師データ(AIに学習させるためのデータ)が必要となります。

例えば、犬の写真判定を行うAIを作るには、犬の写真が大量に必要です。犬以外を犬と判定しないためには、犬に似ており犬ではない写真も大量に必要になります。第2次AIでは、犬であると判定するための条件をコンピュータにインプットしていました。今のAIは、犬の条件はインプットせず「これは犬だ」「これは犬じゃない」という結果のデータを大量に教え込む事で、コンピュータが自ら犬かどうかを判定できるようになります。このため、データの準備自体がAIの精度に大きく影響してくるのです。

そして、この準備するデータによって結果も大きく変わるという事も起こります。とにかく大量且つ様々なデータが必要であり、中途半端なデータからは中途半端なAIしか出来上がりません。人間の考えでは不要と思われるデータも、AIには重要なデータとなるケースもあります。さらに、一度作ったAIエンジンも、日々状況によって最新のデータを読み込ませ、最新の状態に保つ必要があります。AIの利用には、こうした運用を考慮する必要があり、従来型のシステム開発とは違った運用を理解することが肝要です。

AIに奪われる仕事、奪われない仕事

「AIに仕事を奪われてしまうかも」という話題が気になってる方も多いのではないでしょうか?AIの本質を知れば、どの様な範囲でAIは有効で、どの様な範囲でAIが有効でないかを理解できます。これを知っておくことで、将来のキャリアパス検討にも役立つかもしれません。

現代のAIは過去のデータをパターン化し、パターンマッチングにより処理を行います。パターンとして認識しにくい処理は、AIには難しくてできません。つまり、「誰もやった事の無いもの」や「過去に事例がない事」は、できないという事です。文章を作り出したり、新商品を考え出したりといった「アイデアを生み出す仕事」はAIは苦手です。小説を作るAIも開発されてはいますが、過去の小説をベースにつぎはぎ的に作られた小説であり、本当の意味での新作ではありません。

逆にパターン化できるものであれば、そのパターンが膨大な量や複雑な条件であっても、AIは得意です。経理処理や事務処理、建築設計的な処理等の複雑なものも、パターンや条件が定義さえできればコンピュータの処理能力を使って高速処理ができるという事になります。一方、大量の入力データが必要になりますので、データ化しにくい作業や体を使った作業等はAI化しにくいという事です。つまり、AIに奪われない職業は、パターン化できない処理を行う職業といえます。

AIの考え方 確実な演繹法と予測的な帰納法

確実な演繹法と予測的な帰納法では、考え方が全く違います。AIを使う場合、この考え方の違いを知っておくと役に立つのではないでしょうか。演繹法とは、AならばBであるという前提から結論を導く方法です。例えば、「人間は会話する」、「日本人も会話をするか?」に対して、日本人は人間であるので、「日本人は会話をする」という結論を導きだします。従来のレコメンドシステムなどは、確実な演繹法を用いる場合が多く、入力に対し結果は基本的に同じとなります。

一方、帰納法は、結果ありきで結論を導き出す方法です。Aさんは1月1日にビールを買った。 Aさんは1月2日にビールを買った。 というデータからAさんは1月3日にもビールを買うだろうという具合です。これは予測であり100%ではありませんが、可能性が高いという事です。AIでは、予測的な帰納法となります。大量のデータを読み込ませ学習モデルを構築し、入力されたデータに対して予測結果を出力します。

マーケティングにおいて比較すると、マーケターは演繹的にルールを作成し、年代・性別・職業などからセグメントや分析をします。こうして、30代男性で東京在住のサラリーマンの場合は、車・時計・家等の購買可能性が最も高いであろう結論を出し販促を行います。AIでは、 “30代男性で東京在住のサラリーマン”というセグメントは必要ありません。AIが大量の購買データから自動で購買者の特徴を判定し、あるパターンの人物は車、時計、家等の販促が有効であると結論を出すのです。

AIのパターンと事例

ここからはAIの基本的な仕組みを理解できた上でAIのパターンの話をしたいと思います。

1.情報処理系

商品の在庫予測や売上予測等はAIがとても得意な分野で、来店顧客数、商品毎の売上予測、商品毎の入荷データ等、様々なデータからの最適化もAIが得意とします。IoTによる大量のセンシングデータはスポーツ等幅広い分野でも活用され、処理速度も向上しています。

2.画像映像系

カメラからの2D映像をもとに、AIで物体の領域特定や映像のビットパターンから物体判定を行います。車の自動運転もこの分野と関係し、道路の判定や、障害物をカメラ映像から判定します。動物や植物のカテゴリー判定だけでなく、特定の人物を判定するといった事まで活用されています。

3.文章系

大量の文章データや会話データにより、AIが文章を作成するだけでなく、人間と会話する事もできる様になってきました。AIが小説を作ったり、AIが人間に対してメールやチャット等のテキストベースで営業を行う例もあります。形態素解析をあわせたAIにより、処理精度が向上しています。

4.音声系

音声データもデジタルの世界では、データ化されます。この音声データをAIにより特徴点から文字起こしを行ったり、AI自体が人の声で喋ったりします。先述の文章系AIと組み合わせて、タレントの声で会話するAIも始まっていて、紅白歌合戦に登場したAI美空ひばりは話題になりました。

5.ロボット系

RPAの様な業務処理を自動実行するロボットから、自動運転の様な物体を動かすロボットまで幅広い分野でAIは利用され始めています。

大きくわけて上記の5つのパターンにわかれます。この中でも情報処理系は、かなりコモディティ化してて、amazonやgoogleによりAPIのレベルで利用可能なため、実務で幅広く利用する事ができます。一方、画像映像系、文章系、音声系は、実用レベル的にはまだハードルが高く、利用用途を限定したり、使う側の工夫も必要になると思います。

ロボット系は、IoTの普及で様々なオートメーションが可能になっていますが、複雑さや安全面を考えると普及には時間がかかりそうです。デジタルインプットのものは、精度も利用可能レベルも高く、デジタル化された沢山のセンシングデータにより普及が広まっています。アナログインプットのものは、アナログからデジタルへ変換時の補正処理にゆらぎ大きく、精度のブレが大きいとも言われます。

今後のAI活用

AIはディープラーニングにより大きな進歩を遂げましたが、AIだけではなく、IoT、ドローン、ブロックチェーン、5G、クラウドサービス等の様々なテクノロジーにより加速度的に進化を遂げています。今までは、人による目視にコストや時間がかかっていた場所が、IoTセンサーやドローンによるカメラ撮影で遠隔チェックが可能になったり、クラウドサービスにより急激なトラフィックに耐えられるAIを活用したり、5GによりリアルタイムにAIとのやり取りができる環境になってきました。

これらは今後もますます活用され、産業や農業において、我々が意識しないところで自動化・最適化AIの普及が進んで行くでしょう。エンタメ系AIでは、フェイク動画の様なアバターAIも普及が進みつつあります。これはデジタルヒューマンと言われ、デジタルヒューマンのタレント権利を販売する会社も生まれています。有名タレントが個別に接客をしたり、会話をする事ができます。

AIが日常生活の中に浸透するだけでなく、開発が進む車の自動運転のようにSF映画で見たような技術が実現される日も近いのではと期待します。

次回は、2020年開催されるオリンピックや5GとAIについて寄稿したいと思います。

文/森川敬一 (ユニメディアCTO)

岡山県総社市出身。ホストコンピューターや基幹システムからWEBシステム、ゲーム開発、ADTechなど幅広い業界で様々な開発を手がけており、200名規模の組織を立ち上げマネージメントも経験。国内屈指のネット制作会社IMJの創業期から約10年、取締役兼CTOを務めるなど過去20年間で8社のCTOを務める。現在も、株式会社ユニメディアのCTOとして、AIやブロックチェーンなど最先端テクノロジーを活用した技術やサービス開発の指揮を執る。経営と開発の両視点から、企業のデジタルトランスフォーメーションを加速させるテクノロジーの実用化を推進している。

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