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新型コロナウイルスの感染拡大で進むテレワーク、導入を成功につなげる5つのポイント

2020.03.04

■あるあるビジネス処方箋

多くの企業でテレワークの活用が急速に広がっている。働き方改革にともない、自宅で仕事ができる環境を整える動きがあったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、顕著になりつつある。

今回は私がこの数年取材をしてきた中で、最もスムーズにテレワークの導入を進めていた大手メーカー(正社員1200人)の事例を紹介したい。

5年前に社員が柔軟な働き方ができるようにして、業務効率や生産性向上を図るためにスタートした。狙いは、社員(特に女性)の納得感を高め、定着率の向上を図るためだ。2011年の東日本大震災で急きょ、数週間、多くの社員が在宅勤務をせざるを得なくなったが、迅速に対応できなかったこともある。そこで「備えあれば憂いなし」の考えのもと、全社で導入するようにした。この取り組みにより、今回の騒動でも大きな問題やトラブルなく行われているようだ。

トライアルは段階的に行う

通常、特に中堅、大企業では突然、テレワークを始めることはまずしない。トライアルを繰り返して段階的に導入するケースが多い。社員の納得感を高めるためだ。

このメーカーはトライアルの対象を本社勤務の育児・介護中の社員に絞り、スタートした。育児・介護をしている社員がもっとも利用する可能性が高いからだ。就労の場所は、特定をしなかった。たとえば、自宅やカフェ、出張先のオフィス、会社が契約する企業が運営するサテライトオフィス、育児や介護の関連施設も認めた。

テレワークをする就労時間の制限も設けなかった。社員の家族の状況や生活スタイルに合わせることを重視したためだ。たとえば、午前中は自宅で、午後は会社で仕事ができるようにした。就労場所と時間の制限をできるだけ減らすことが、導入成否の1つのポイントになるようだ。なお、上司や同僚らへの報告、連絡、相談はメールやスカイプ、チャットツールを使い、行う。

ヒアリングを実施

トライアル後に人事部員が、対象者やその上司、同じ部署の社員たちにヒアリング(1人のつき、30分∼1時間)をした。本社勤務の育児・介護中の社員に絞ったので、具体的で深い内容を聞くことができた。「子どもが通う学校や体調に合わせ、仕事ができるのがいい」といった声が多かった。

なお、人事部員が特に念入りに確認したのは次の2点である。テレワーク導入をスムーズに進めるうえで必ず知るべきことのようだ。導入を成功させるために、上司、同じ部署の社員の声は極めて大切だという。

「テレワークした日の時間の使い方」
「上司やほかの社員への影響」

環境を整備する

ヒアリングの結果を踏まえ、社員全員にスマートフォンを1台、貸与した。それぞれが直通番号を持つようにした。社外でのテレワークをしやすくするためである。

並行して、本社や支社、営業所でフリーアドレスを始めた。各自に貸与したロッカーにかばんや衣類、資料を保管する。申請書や報告書、稟議書を始めとした書類は可能な限り、データで扱うようにしてペーパーレスにした。

「各自が直通番号を持つ」「フリーアドレス」「ペーパーレス」の3つは、導入をスムーズに進めるうえで重要な要素と言えるようだ。いずれも、テレワーク導入よりも前に始めると、効果が一層に上がるという。

ルールを明確に

テレワークに関する制度やルールは、曖昧にしないほうがいい。後々、トラブルになりうる。労使紛争になることもありうるかもしれない。できるだけ具体的にして、文書化したほうが好ましいようだ。このメーカーは、次のようなルールを設けていた。

「実施日ごとに、上司の承認が必要」
「勤怠管理は、パソコンのログオン、ログオフの記録で行う」
「使用するパソコンは、会社が貸与したものに限る」
「パソコンの社外への持ち出しは、上司に申請し、認められることが必要」
「上司は申請をした社員が、自宅などで当日の仕事を一人でする力を兼ね備えていることを確認したうえで許可する」
「情報漏えいやセキュリティ対策のルールを厳守する」
「制度を利用できる日は、1か月の就労日の半分以内。この範囲内ならば、通勤手当は従来通りの額を支給する」

特に重要なのは就労時間や場所、情報漏えいの防止やパソコン内のデータのセキュリティ対策なのだという。

教育、普及、PR

ルールを社員の意識に浸透させるために、まず、人事担当役員が役員会や管理職会議で丁寧な説明を繰り返した。その後、人事部員が全社員を対象に説明会を開催した。その数は、半年で計15回前後。地方の支社や営業所には、人事部員がテレビ電話会議システムを使い、説明した。人事担当役員の動画メッセージ(10分)も流した。

ほぼ同時期に、人事部員が各部署の管理職を本社や支社に集め、研修(終日)をした。その後、メールや動画を使い、制度に関する知識を深めた。社内のイントラネットや社内報、壁の掲示板にも制度の詳細を掲示した。早いうちに社内の労働組合に説明をして、理解を求めた。労組は機関紙や職場会を通じて、組合員(正社員)に伝えた。近く、労使間のトラブルを防ぐために労使協定を締結するようだ。

最後に…。テレワークは、今回の問題よりもはるか前から本来は国を挙げて取り組むべきだったのだと私は思う。労働生産性を欧米諸国の企業並みに上げるのが、日本企業の至上課題であるからだ。今回を機に、1社でも多くがテレワーク導入に踏み込むことを切に願いたい。

文/吉田典史

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