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朗読ワークショップに参加する会社員が急増!本の朗読スキルとプレゼン力の意外な関係とは?

2020.02.26

本の朗読(読み聞かせ)が密かなブーム。子どもの表現力を高めるためばかりでなく、ビジネスシーンでの活用につながるとあって、ビジネスマンの間でも人気が高まっているのだ。驚きの朗読力について、朗読塾講師である斉藤ゆき子さんに話を伺った。

「からっぽの手は さむい  からっぽの手は ねむい」(工藤直子作『手をください』より抜粋)。皆さんはこの詩をどう読むだろうか。

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 矢印で表すとこんな感じで、凹凸なく? あるいは

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 こんな風に多少抑揚を付けて?

 その日の調布市立第三小学校の4年生の生徒たちは、例えば

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 なんてゆっくりはっきり、間をとって、寒い時やあくびが出そうな時の様子も織り交ぜながら感情豊かに読み上げていた。PTA主催の特別授業で行なわれた朗読(読み聞かせ)教室でのワンシーンだ。

「ただ声を出して読むのではありません。本の内容を理解し、少しでも聞き手にそれが伝わるように、時に感情的な表現も使って読み上げる。それが朗読なんです」。この日講師を務めた、ナレーターや朗読塾主宰でもある斉藤ゆき子さんは言う。「普段は朗読や、読み聞かせをしたい大人に対してレッスンを行っています。詩や物語といった作品の内容を聞き手に伝えるために、どのように朗読するかを各自が考え、発表するのが中心です。自身の理解力や表現力の向上につながっていくだけでなく、ストレス解消になるという方も多いですね。そのうえ、聞き手にとっても大いにメリットがあるんです」。

 普段は恥ずかしがる子も少なくない教科書の音読も、斉藤さんが数度朗読の見本を示し、表現することの楽しさの一端を伝えただけで、上記のように表情豊かなものに変わっていく。「読み聞かせで心を動かされ、そこから元の本にたどり着き、文章の行間や言葉の裏を考えて読むようになるんです。読解力の向上ですよね。特に子どもたちはそれが顕著。まっすぐで清らかだからこそ、私が読んだ詩をどう解釈するかが未知数で、私が聞き手になると子どもたちの朗読に驚かされることばっかり(笑)」。

小学校での特別教室でのひとコマ。心身をリラックスさせるための体操、簡単な発声練習を含め、45分と短い授業ではあるが、子どもたちの表情は随分と和らぎ、表現力も豊かになった。授業後に「また特別教室をして欲しい」という声が多く聞かれた。

 親から子へという朗読が読解力や表現力を育てるメソッドとして現在、密かにブームになっているのも大いに頷ける話。だがその効果はそれにとどまらない。朗読で培った力はビジネスを成功へと導くメソッドでもあるのだ。

 具体的には、相手に伝えるためにどう読むべきかという表現力は説得力に。言葉の裏に隠されたものを見つける読解力は、部下や同僚、取引先といった人たちとのコミュニケーションに大いに役立つのだそうだ。その力をさらに活かす朗読にするには、覚えておきたいポイントがあるとも斉藤さんは言う。

「●言葉と言葉の間にあるものを探してもらうための間(ま) ●一番言いたいことを伝えるために声を高くしてみたり、ゆっくりしてみたりという強調(プロミネンス) ●ゆっくり話している途中にスピードアップさせたりすることでアクセントをつけるスピード ●相手にきちんと伝える声の大きさ ●相手にきちんと伝えるための滑舌 ●明るいシーンは笑顔で、辛い気持ちは沈んだ様子で溶いった表情 ●そして何より伝えたい気持ち。この7つです」

 例えば、プレゼン時。導入部にそこまで意味がなければスピードを上げて読み、ここぞという場面では一度間を取り、顔を上げてゆっくり、大きく発表する。「あえて一番重要な部分をパワーポイントなどで処理せず、読み聞かせることで効果を上げるという方もいますよ」(斉藤さん)。また取引相手との会合時では相手の声色や表情から何を一番言いたいのか考えて対応し、部下とのやりとりでは、ゆっくりと優しく、ポイントとなる部分は大きな声にして指示を出すなどなど。朗読で得た力の応用で、円滑に進むビジネスシーンはいくつもある。そうやって話し上手だと広まれば、新たな仕事につながることも少なくない。事実、そのことを知り、斉藤さんが主宰する朗読塾やワークショップに、朗読術を学びたいと足を運ぶビジネスマンが年々増えているという。「ここ数年は、応募が殺到してキャンセル待ちになることが多いです」という活況ぶりだ。

大人を対象とした朗読ワークショップでの様子。朗読に興味がある人、これから朗読を始めたい人ばかりか、ビジネスに利用したい、上手くプレゼンできるようになりたいという人で、すぐに満席となる人気ぶり。3時間半で伝え方の基礎を伝え、さらにひとつの作品を朗読できるまで導くことをコンセプトに開催されている。

 嬉しいのが、この朗読は斉藤さんたちプロによるレッスンに通わずとも、「声を出して本を読むだけでもいいんです。音読するだけでも、黙読では気がつかなかった行間が読めるようになるし、内容への理解もぐっと深まりますから」と、家にいながらある程度できるようになることだ。「本は好きなもので構いませんし、最初から最後までじゃなく好きなシーンだけの音読でも大丈夫です」と大きな決まりはないが、「重松 清さんや浅田次郎さんの作品のように、感情が揺すぶられる、泣ける小説を選ぶ人が多いですね。そして夏目漱石ですね。彼は音読されることも意識して小説を書いた作家と言われていますから、一度は声にして読んでみるといいと思います」

 わからないことがあれば直ちにAIが教えてくれる現代社会。確かに便利だが、単調で無機質な声には聞き手を慮る感情はない。対して朗読はアナログの最たるもののひとつだ。しかし、そこには“聞き手のために”という温かい想いが満ちている。ビジネスも人と人とのつながりが原点だ。デジタルツールに任せてばかりではなく、音読、朗読というアナログ力も活用し、ビジネスでの成功を掴んでほしい。

斉藤ゆき子さんプロフィール
ナレーター、朗読講師、ソフィアの森ボイスアカデミー「ソフィアの森朗読塾」主宰。
大学卒業後、声優事務所を経てフリーアナウンサーになり、司会、リポーター、キャスターなど声の仕事を幅広く経験。2012年に立ち上げた朗読教室は評判を呼び、ワークショップも常に満員でキャンセル待ちが出るほどの人気に。2017年に放映された『この声をきみに』(NHK総合)では、朗読指導を務める。著書に『奇跡の朗読教室 人生を変えた21の話』(新泉社)がある。
http://www.sofianomori.com

取材・文/武内慎司 写真/落合直哉

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