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パン好きの間で話題沸騰!「パン好きの牛乳」がヒットした3つの理由

2020.02.24

「毎朝牛乳を飲んでいる」という人は一体どれくらいいるのだろうか?

「牛乳配達屋さんが自転車で運んできてくれた牛乳瓶を玄関先の専用ボックスから取り出し、一日が始まる」といったことはもう遠い昔のこと。

飲用牛乳の市場規模はここ10年で3割弱も減っている。少子化に伴い学校給食などでの消費が減るなど、牛乳事業は非常に厳しい。

下記グラフは、富士経済が発表した「飲用牛乳の市場規模」。2010年の市場規模は5,807億円(見込み)と、ここ10年で3割弱も減っている。

このような縮小する牛乳市場において、今注目されている牛乳がある。それが、「パン好きの牛乳」である。

「パン好きの牛乳」とは?

「パン好きの牛乳」とは、「カガクでネガイをかなえる会社」のキャッチコピーでお馴染みの株式会社カネカが作った、パン好きの人のために開発された、パンをより美味しくさせてくれる魔法の牛乳。

この牛乳の特徴は、さわやかな後味で牛乳臭さがないこと。

牛乳を製造するにあたり、生乳に加熱殺菌をするのだが、この温度が強すぎると“臭み”が出てしまう。

ベルギーにあるPUR NATUR(ピュアナチュール)社と技術提携をして、時間をかけて丁寧に加熱しすぎないようにすることで、カネカは臭みのない牛乳を実現させた。

臭いが強く味が濃いがゆえに、パンの風味を消してしまっていた従来の牛乳と異なり、牛乳臭さがなく、飲んだ後に口の中に独特の味が残らない「パン好きの牛乳」は、パンのお供にピッタリの牛乳となっている。

縮小する牛乳市場において「パン好きの牛乳」がヒットした理由

人々の牛乳離れが進む状況で、「パン好きの牛乳」がヒットした理由は、以下の3つだと私は考える。

①「パンと一緒に食べる牛乳」という新たな市場の創出
②自分のためにある商品だと思わせるネーミング
③顧客に自発的に情報発信をしてもらう仕組みの構築

1つずつ見ていこう。

1.「パンと一緒に食べる牛乳」という新たな市場の創出

明治・森永・雪印・タカナシ・よつ葉…など、スーパーの牛乳売場に行くと、大手メーカーが昔から発売している多くの牛乳が並べられている。

コモディティ化した牛乳市場。こだわりを持って牛乳を買っている人は少ないと予想する。

大半の人が、「その日最も安い牛乳を買う」あるいは「昔家でよく飲んでいたメーカーや、安心感のある大手メーカーの牛乳をなんとなく買っている」のではないだろうか。

そんな中で、少し高価な新しいブランドの牛乳が発売されても、ブランドをスイッチする人はほとんどいないだろう。

また、少し牛乳にこだわりがある人にとって、牛乳を選ぶ際の選択軸は「味わい」や「コク深さ」ではないだろうか。

後発であるカネカが、「味わいスッキリ」という既に使用されているメッセージで、大手競合ブランドと戦っても勝ち目がないのは明らかである。

そこで考えたのが、「牛乳に合わせる食べ物」という新しい選択軸を作ることである。

マーケティング手法の1つに「新しい選択軸を与えることで、新たな市場を創出する」という手法が存在する。

例えば、アサヒ飲料の缶コーヒー「ワンダモーニングショット」。

【Photo】https://www.asahiinryo.co.jp/

このコーヒーが発売されるまで、コーヒーを選ぶ際の選択軸は「豆の種類」であって、「飲む時間帯」という選択軸は存在していなかった。

そんな中、ワンダは「コーヒーを飲む時間」という新しい選択軸を与え、「朝専用のコーヒー」という新たな市場を創出することで、当時缶コーヒー市場で5位に甘んじていたワンダを業界3位まで押し上げることに成功したのだ。

コモディティ化した市場で後発ブランドとして戦うため、「パンに合わせる牛乳」という新しい選択軸を与え、新たな市場を創出したことが、「パン好きの牛乳」ヒットの要因になったのである。

2.自分のためにある商品だと思わせるネーミング

私がそうであったように、パン好きの人であれば、「パン好きの牛乳」が発売されたと知れば、「自分のためにある牛乳」という印象を受け、一度は飲んでみたいと思うだろう。

同じような商品が溢れている中で、消費者に手に取ってもらうためには、「その商品が自分に関係ある」と思わせることが重要である。

さらに、この商品名は、商品を使用することで、自分がどうなれるかがイメージできるように設計されている。これはブランディングをする上で必要不可欠な事である。

お気に入りのパンと「パン好きの牛乳」で、美味しい朝ごはんタイムを過ごしている自分。

牛乳嫌いな子供が美味しそうにパンをほおばりながら、「パン好きの牛乳」を飲んでいる子供。

「パン好きの牛乳」という商品名から、そんなイメージが湧いてこないだろうか?

似たような例で、少し前に話題になった「母になるなら、流山市」というコピーがある。

【Photo】http://www.nagareyama-city.jp/

つくばエクスプレス開発に伴い、その中間地点にあった流山市が「いかにして市の魅力を訴求し、市民を呼び寄せようか?」と考えた際に作ったコピーである。

最高の環境で子育てをしたいと思っているお母さん達に「自分のことだ!」と思わせるコピーを作り、「流山市で幸せに子育てをしている自分」をイメージさせられたことが、ヒットの理由である。

3.顧客に自発的に情報発信をしてもらう仕組みの構築

そして「パン好きの牛乳」の最も素晴らしい点は、費用をかけずにダイレクトにターゲットにプロモーションをできたことである。

①コアターゲットに商品の魅力、ブランドストーリーを直接伝える

「パン好きの牛乳」は商品完成後に、パン好きのブロガーやパンを愛好する人たちが集まる会に足を運び、商品の試飲会を行ったそうだ。

そして「青山パン祭り」をはじめ、コアターゲットが多く集まるパンイベントに出展を重ね、直接コアターゲットに商品の魅力、ブランドストーリーを伝えていった。

これに共感したコアターゲットが、「良い商品が出てきた!」「パン好きなら飲むべき!」といった口コミを自ら発信するようになった。

情報をもはや顧客は企業からの情報は信用していない。カネカが「スッキリな味わいが特徴の、パンにぴったりの牛乳です!」と言ったところで、消費者はそれを鵜呑みにはしない。

信頼できるパン愛好家達が発信した情報を見た、彼らのフォロワー層が「自分が好きなあの人がそう言うのであればホンモノに違いない」と思い、購入層を広げていくことに成功したのである。

②レア感を出し、思わずSNSでつぶやきたくなる仕掛けをつくる

コアターゲットの発信を見て、その周囲にいる人達も「パン好きの牛乳」が気になり始める。

しかし、「パン好きの牛乳」は発売当初、街のパン屋でしか販売されておらず、なかなか手に入れることができなかった。

レア感があるからこそ、「パン好きの牛乳」をパン屋で見つけると嬉しくなり、購入した人は思わずSNSで「やっと買えた!」「ここで販売していた!」とつぶやいてしまうのである。

何軒ものパン屋やスーパーを巡って見見つけられなかった「パン好きの牛乳」を見つけた際、私も思わず写真を撮ってSNSに掲載してしまった。

このようにして、徐々に話題性を高めていった「パン好きの牛乳」

Instagramで「#パン好きの牛乳」と検索すると、「パンとの相性ばっちり」と書かれたコメントと共に、パンと一緒に撮影された写真が数多く投稿されている。

企業が顧客に語って欲しいメッセージ、撮影して欲しい写真を、消費者が自ら発信するという美しいストーリーが出来上がっている。

縮小する牛乳市場で黒船のごとく現れた「パン好きの牛乳」

パン好きの皆さん、明日の朝は是非お気に入りのパンと共に、さわやかな朝ごはんタイムを過ごしてみてはいかがだろうか?

文/小松佐保(Foody Style代表)

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