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ビジネスパーソンのための「テクノロジー思考」の鍛え方、ポイントはファクトからコンテクストをつかみ取って現場を知ること

2020.02.22

ノンテクノロジストのビジネスパースンが生き残っていくうえで有効な「テクノロジー思考」。それを鍛えるためのポイントを、著者の蛯原 健氏にインタビュー。ポイントは「具体と抽象の行き来」と「組み合わせ」、さらには現場に足を運び人に触れあうことだ。

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ファクトから抽象度を上げる訓練を

 近年において世界のあらゆる事象、組織、そして人間にテクノロジーが深く関与し、また支配的な存在として強い影響を与えている事実に焦点をあてた、新しい思考アプローチを「テクノロジー思考」と定義し、機械工学やコンピュータサイエンスなどを本格的に学んでいるテクノロジストではないノンテクノロジストにその思考法を提案する蛯原 健氏。30年近くベンチャーキャピタルやスタートアップの現場に携わったなかで培った視点だが、そうした思考は、どうすれば鍛えられるのだろう。詳しくは『テクノロジー思考』(プレジデント社、2019)を手に取っていただきたいが、蛯原氏は「具体と抽象の行き来」と「組み合わせ」を説明をしている(関連記事)。

「(『テクノロジー思考』の)最終章に、TIPSのように書いたんですけれど、私には抽象度を上げたり、下げたりする視点や癖があると思うんです。

 例えば、ニュースメディアに掲載されたひとつの記事のなかに、ファクトがいくつかある。また、別の記事でも別のファクトがある。ないしは、お酒の席でちょっと話題に出るといったこともでも何でもいい。それをコンテクストとして結びつけて、抽象度を一段上げると、一つの概念が出てくる。そういうことの積み重ねなんですね」(蛯原氏)

「具体と抽象の行き来」は上述のとおりだが、「具体と抽象の行き来」からコンテクストとして結びつけることが「組み合わせ」。そこで概念化されたコンテクストを抽象化された塊として、また個別の具体的な事象を捉えていく、こういったところだろう。

 ただし、大前提とされるファクトへのリテラシーも重要だ。

「ファクト自体が本当にファクトなのか疑う事も重要です。世の中、間違った情報が驚くほど多い。フェイクニュースはもちろんですが、そもそもナチュラルフェイクというか、悪意のない間違いも多い。それは、一次情報を見ないといけないと思います。

 また、人口動態などマクロデータを意識しながらファクトに触れることも大切です。マクロデータを掴んでいると、こういうことが起きたら、こうなる、といった読み解く際に役立ちますから」(蛯原氏)

 いま官公庁や企業でもウェブサイトのオウンドメディア(自社媒体)を充実させているため、ニュースが取材源にしている報道資料などに誰もがアクセス出来るようになっている。よって、そのニュースが正しく伝えているか、何を伝えていないかも含めて確認が容易になっている。商業媒体でも作業時間などの制約の都合でハイライトされている部分が限定的であることや、伝え手の主観が潜んでいることも少なくない。その結果、実態とかけ離れた記事が配信されることは珍しくない。これが蛯原氏が指摘するナチュラルフェイクの一例だ。こういうことは日頃から情報源にアクセスする訓練をしてれば、鍛えられることなので、この記事を読んだ瞬間から実践できるはず。

自分の頭で考えて、「テクノロジー思考」を鍛える

 例えば、一時期のビットコインバブルのような現象を蛯原氏は次のように振り返る。こうした背景を知ることも、ナチュラルフェイクを排除する際に役立つだろう。

「ベンチャーキャピタルの界隈はもちろん、シリコンバレーのようなテクノロジー界隈のところも含めた世界全体において、新しい世界観のサービスや産業の誕生、トークン経済圏やファンコミュニティが云々ということを言っている人がいましたね。でも、はっきりいって、そうはなりませんでした。いや、なるかもしれないがもっと時間がかかるでしょう。

 盛り上がっている時には、皆さんは華々しくいうけれど、あのときに出来た仮想通貨系のファンドは実はこっそり解散していたりします。あと、そもそも集めたといって、集めてないというケースもあったようですし。でもメディアの皆さんは、ちゃんと「その後」をフォローをしていませんよね。だから、メディアで流通している内容は、そういう歩留まりがあることを知った方が良い。

 最近では、日本に対する悲観論。私には日本は意外と悪くないと見えています。具体的にいうと、日本は製造業クラスターがいまだに強い。今後、製造業とソフトウェアが溶けて融合している世界では、これから非常に活躍しうる。例えば、ロボティックス、モビリティ、航空、造船、原子力、プラント、水などの分野では相当強いんです。でも、日本に来ると、日本を悪く言うことを期待されている。日本はやばい論を書くとページビューが上がるからです(笑)」

 蛯原氏の指摘を要約すると、メディアの情報にも歩留まりがあるので、一次情報もしくは、それに近いところの情報に接するリテラシーを鍛えよう、ということに修練されるはず。確かに、官公庁や企業の定型文のような報道資料を読み解くのは面倒かもしれないが、二次的な情報源にバイアスをかけられて間違うことで失うロスを考えれば、自分の頭で考えて判断ができるようになるので、結果的には効率的ということになるだろう。

現場で鍛えられる「テクノロジー思考」

 ここまでは、商業運用されているニュース媒体の記事とのふれあい方についてだが、SNSとは、どう付き合うといいのだろう。SNSやスマホが登場し、利用者が爆発的に増え始めた10年くらい前には、ソーシャルメディアを活用するほうが稼げるといった言説が話題になり、現在は、そうした感覚が主流になっているだろう。

 また、働き方改革などの影響などもあり、もともと少なかった「飲みニュケーション」のような毛繕いの機会は、ますます減っている。見方を変えると、ゼロ年代、10年代は、人に会って情報に接することに疑問が投げかけられた。これについて「テクノロジー思考」を実践する蛯原氏は、どう考えるのだろう。

「確かに、その議論はありますね。結論としては、正解はない気がします。ただ私が実感しているのは、現場の場数を踏んでいることは確実に重要だと思う。この商売(ベンチャーキャピタルなど)をやっていて役得なのは、現場数が多いんです。スタートアップのファウンダーと毎日何十件とミーティングをする。特に私はアジアが中心なので、シンガポール、インド、フィリピンでもミーティングをやる。それはやはり大事ですね。

 コンサルタントなどもそうですが、現場に出なくなり、抽象度の高い議論ばかりしていると、頭が良さそうでありますが響かないし、解像度もない。

 結局、正解はどんどん変わるんです。現場に行かないとその変化が見えないので間違っちゃう。例えば10年前の海外の話をベースにして語っているコンサルタントとか、普通に多いですよ。あとは、視察おじさん。「風を感じたい」、みたいな(笑)」(蛯原氏)

「テクノロジー思考」とは、このようにノンテクノロジストがファクトからコンテクストを掴み取り、それが歴史的、地理的、文化的、社会的なマクロのトレンドと関連付けて考え、未来について考える思考のこと。

 読者の方々も、それぞれに自分の現場をお持ちのはず。そうしたところに足を運び、人の営みからもテクノロジーがその産業をどう変えるのかを考えることが必要なのだろう。技術に通暁していなくとも、人の営みからテクノロジーを考えていけばノンテクノロジストにも役割はある、蛯原氏からはそんなアドバイスを投げかけられているようだ。

蛯原 健
リブライトパートナーズ 代表パートナー、日本証券アナリスト協会検定会員 CMA
1994年 横浜国立大学経済学部卒業後、日本合同ファイナンス(現JAFCO)に入社。20年以上ベンチャーキャピタルおよびスタートアップ経営に携わる。2008年に独立系ベンチャーキャピタルのリブライトパートナーズを日本で設立。スタートアップ投資育成に携わり、2010年よりシンガポールに事業拠点を移して東南アジアでの投資を開始する。2014年にはインドにて拠点を開設してIT系スタートアップ投資活動を始めた。近著は『テクノロジー思考――技術の価値を理解するための「現代の教養」』(ダイヤモンド社、2019)

取材・文/編集部 撮影/篠田麦也

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