
インド政府は2月1日、2020年度(2020年4月~2021年3月)の『予算案』を発表した。
農業対策、インフラ投資などを中心に歳出を30兆4千億ルピー(約46兆円)と、今年度着地見込みに対し13%増やす計画。
減速している景気の浮揚を目指し、農業従事者や中間層を重視する内容となった。ただ、財政健全化の方向性を堅持したため、『予算案』は市場の期待を下回った模様。
そんな「インドの予算案」について、三井住友DSアセットマネジメントがマーケットレポートを公開したので紹介しよう。
【ポイント1】2020年度の歳出は景気刺激策で13%増
2020年度の財政赤字はGDP比3.5%
インドのシタラマン財務相は2月1日、2020年度の『予算案』を発表した。インド政府が今年度の経済成長を5%と予測するなど、足元の景気が大きく減速する中で、農業振興やインフラ投資に加え、所得税の減税などの景気刺激策を打ち出した。
歳出総額は30兆4千億ルピーと、前年度比で13%増となった。一方、2020年度の財政赤字のGDP比は▲3.5%と、2019年度の▲3.8%から縮小すると見積もられており、財政再建も重視した内容となっている。
【ポイント2】農業・インフラを重視
中間層の所得減税を盛り込む
歳出を分野別にみると、農業向けが前年度比28%増、交通向けが7%増、IT向けは約4倍となった。シタラマン財務相は『予算案』の演説で、「2022年までに農業従事者の所得を倍増させる」と強調し、農業やインフラ投資を重視する姿勢を示した。
個人向けには所得税の減税を実施し、中間層の所得税率を5~10%引き下げる方針を示した。
個人消費の低迷で景気が減速する中、中間層の負担を軽減して景気浮揚を狙う。
【今後の展開】『予算案』は景気に中立か、株式市場の期待に届かず
2020年度の『予算案』において、インド政府は、積極的な景気対策よりも財政健全化を優先したと考えられる。
GDPの財政赤字が2020年度から2022年度まで継続的に縮小する計画となっており、ソブリン格付けの格下げリスクを懸念しているとみられる。
ただし、歳入計画は国有資産の売却に大きく依存していることから、財政赤字が計画よりも拡大する可能性がある。
また、所得減税の景気浮揚効果は可処分所得が増えても貯蓄に回る可能性があるため限定的で、『予算案』は経済成長に概ね「中立」とみている。
『予算案』が発表された2月1日のインド株式市場では、代表的な株価指数のSENSEX指数が、大幅に下落した。『予算案』は市場の期待に届かなかった模様だ。
三井住友DSアセットマネジメント マーケットレポート
https://www.smd-am.co.jp/market/
構成/DIME編集部
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