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アウシュビッツ解放75周年、時に埋もれかけていた2つの実話を基にした物語がイギリスで公開

2020.02.09

ユダヤ人受け入れに尽力したフィリピン大統領

 その週末31日から公開された『Queron's Game』は、フィリピンの大統領だったマニュエル・ケソンを主人公にした映画。ケソンはフィリピンの独立準備政府初代大統領だ。メトロ・マニラ内にある都市、ケソン市は彼の功績を称え、その名となっている。

 先に断わっておくが、映画としてはアラが目立つ。リアリティーに欠ける説明的な台詞が多いし、そんな台詞を言わされていることを割り引いても、脇を固める俳優陣に芝居の上手くない人が混じっている。

 それでも最後まで観てしまうのは、基になった事実に打たれるからだ。

 映画は、強制収容所の映像を見ているケソンと妻の場面から始まる。骸骨のようにやせ細った遺体の山、焼却炉で燃やされる遺体、目をそむけたくなるような映像だ。

 寄り道になるが、この強制収容所映像の話をしたい。

 これらの映像は、第二次世界大戦終わり頃に従軍カメラマンにより撮られたものだ。英情報省にいたシドニー・バーンスタインがドキュメンタリー映画としてまとめることになり、アルフレッド・ヒッチコック監督をアドバイザーに迎えて『German Concentration Camps Factural Survey』となるもお蔵入り、その後、強制収書所の映像はビリー・ワイルダー監督によって『Death Mills』という短編になる。

 そこから時を経た2014年、イギリスの帝国戦争博物館でリストアされた『German Concentration Camps Factural Survey』を、アンドレ・シンガー監督がお蔵入りの事情を含めてドキュメンタリー映画『Night Will Fall』とする。

 『Night Will Fall』はアウシュビッツ開放70周年だった2015年に欧米各国でテレビ放映された。『German Concentration Camps Factural Survey』の締めの映像がそのまま締めに使われているのだが、その部分だけでも涙が抑えられないパワフルなドキュメンタリーだ。

 『Queron's Game』に戻ろう。強制収容所の映像を見終えたケソンが「私はもっとできたのではないか?」と妻に問いかけ、そこからケソンが大統領としてフィリピンで活躍した頃にさかのぼっていく。

 アメリカの統治下にあったフィリピンで独立を進めるケソン大統領に、ナチス・ドイツにより狩られているユダヤ人の状況が伝えられる。ユダヤ人受け入れを決意した大統領だが、統治国アメリカの協力が不可欠、また、法的に解決しなければいけない問題もある。

 加えて、ケソンは健康上の問題も抱えていた。無理を重ねるケソンの内情を知るのは妻など限られた人のみだ。

 それを乗り越え、受け入れに成功、結果的に1200人を超えるユダヤ人がフィリピン入りする。受け入れがそこで止まったのは、日本がフィリピンを占領したためだ。ケソンはアメリカに渡り、亡命政府を樹立するも、フィリピンの独立を見ないまま結核で亡くなっている。

 映画を観終えた人は、冒頭のケソンから妻への問いかけ「私はもっとできたのではないか?」に答えるはずだ。いや、あなたは十分よくやった、映画はちょっと残念だったけど。 

文/山口ゆかり
ロンドン在住フリーランスライター。日本語が読める英在住者のための映画情報サイトを運営。http://eigauk.com

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