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コンセプトは「曖昧」!?日本橋兜町にオープンした築97年の建物をリノベーションした複合施設「K5」

2020.02.02

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

「曖昧」をコンセプトにしたユニークな空間デザイン

 日本で初めて銀行、証券会社ができた地で、金融街として知られる東京都中央区の日本橋兜町。ネット証券や電子取引が盛んになり、人の流動が減っていた日本橋兜町を再び活性化させるプロジェクトの一環として、ホテル、ビアホール、レストラン、カフェ、バーで構成されたマイクロ複合施設「K5」が、2月1日にオープンした。

 1923年に建てられた築97年のコンクリート構造の重厚な建物をリノベーション。むき出しのコンクリートや、寄木細工の床など、建築当時の特徴的なインテリアも残されている。

 1階はレセプション、レストラン「CAVEMAN」、カフェ「SWITCH COFFEE」、グリーンショップ「Yard Words」、カクテル&ティーバー「青淵」、地下1階はブルックリン・ブルワリーのフラッグシップ店舗「B」、2階~4階は「HOTEL K5」で構成されている。

 K5の空間デザインを担当したのが、ストックホルムを拠点としている「CLAESSON KOIVISTO RUNE(CKR)」で、モーテン・クラーソン、エーロ・コイヴィスト、オラ・ルーネの3人によるデザインユニット。堅牢な歴史のある建物を活かしながら、北欧と和のデザインを融合させたユニークな空間が出現した。

〇1階/ラウンジ、レストラン、カフェ、バー

 K5のコンセプトは「曖昧」。1階にあるホテルラウンジ、カフェ、レストランは、シェルフはあるものの厳密な境界がなく、各所に植物が配置された、緑豊かな「曖昧な」空間が広がる。

 レストラン「CAVEMAN」は目黒にある「Kabi」の新業態で、北欧と日本のフュージョン料理を提供する。レストランスペースとレセプションを挟んだ向かい側にあるカクテルバー「青淵(AO)」は独立した空間。時代感のある暗い赤色のインテリアで、隠れ家的な雰囲気が漂う。空間デザインのモチーフとなったのは渋沢栄一の書斎。店名の「青淵」も渋沢の雅号からつけられた。

 2024年から新一万円札の顔となる実業家の渋沢栄一は、来年の大河ドラマの主人公になるなど近年クローズアップされているが、K5の建物は日本初の銀行で渋沢が頭取を務めた第一銀行ビルとして建てられたもの。渋沢の邸宅も兜町にあり、書斎にはさまざまな人を招き入れて話を聞いたというエピソードがあることから、ライブラリーを備えたプライベートな空間に仕上げた。

 中国医学とミクソロジーをコンセプトとし、陳皮やシナモン、クコの実などさまざまな植物のエレメントを組み合わせた新しい飲み物を提案。ブレンドティー2種類を含めた各種ティーメニュー、17時からのバータイムでは、8種類ほどのオリジナルカクテルを提供する。

〇HOTEL K5

 全20室。78㎡のスイートルームは1室で、1泊室料は14万円~17万円、ジュニアスイートは45㎡で2室あり6万円~7万円、スタンダードが35~40㎡で、3万5000円~4万5000円。

 部屋のドアはすべて銅張りで、触るたびに指紋は残るが、扉に泊まった人の歴史が残ると、あえて拭き取らずに経年変化を楽しめるようにしている。年月が経過すれば10円玉のような濃い色に変化していくとのこと。

 廊下のガラスの外は首都高の高架だが、喧騒を感じさせない静謐な空間になっており、異なる紋様を組み合わせた床のタイルも建物にマッチしている。

 4階のスイートルームは4.5mの天高を存分に活かす「シリンダー(円柱)」スタイルを採用。ベッド、ヘッドボード、棚と一体型のデスクを藍染めの天蓋カーテンで360度囲み、ベッド上部には特注のペンダント型ペーパーランプが掛かっている。

 K5では「静と動」のコントラストを意識しており、地下1階と1階の賑わいのあるスペースと対照的に、ホテルは外界から遮断する静を表現。独立型のベッドルームはカーテンを完全に閉じると、周囲の喧騒から切り離されたオアシス空間になる。メインコンセプトのベッドと天蓋カーテンは全20室のうち17室に取り入れている。

 グラデーションの藍染めカーテンも外から見る場合と、ベッドから見上げたときでは迫力が違うとのことで、宿泊した人ならではの楽しみ方もある。

 客室の空間デザイン、イージーチェアやソファ、家具、ペーパーランプはCKRのオラ・ルーネがデザイン。家具類はルーネのデザインを基にTIME&STYLEが制作した。バスルームとリビング・ベッドルームを仕切る扉や、バスルームの天井には杉材が使われ、和室の欄間のような格子の意匠も。藍染のカーテン、和紙のランタン、杉材などは日本の文化をリスペクトしているルーネのアイディアで取り入れられた。

 ルーネは部屋に畳を使うことも考えたそうだが、井草の畳だと日本に寄り過ぎるという判断から、スウェーデンのKasthall社に特注した畳がコンセプトのラグを、スイートとジュニアスイートに採用した。

 くつろぎを目的とした空間のためテレビは設置していない。タイムレスな時を過ごしてもらえるように、オーディオはレコードプレーヤーでスピーカーはTaguchiを使用。また、紙やプラスチックのゴミを出さないエコロジーな空間を意識しており、インフォメーションブックではなくQRコードで確認できるようになっている。

 コンクリートの床は当時のまま残されており、郵船ビル時代の四角いカーペット跡も見受けられ、時代も感じられるインテリアとなっている。

 バスルームはシャワーとレインシャワーがあり、バスタブはスイートとジュニアスイートに設置。ミニバーでは、1階「SWITCH COFFEE」のK5オリジナルブレンド、「青淵」のK5オリジナルブレンドティー、地下1階「B」のブルックリン・ブルワリーのビールを無料で提供する。

【AJの読み】戦火を耐え抜いた歴史を感じるビル

 築100年近いビルで、第二次世界大戦の空襲も耐え抜いた歴史を感じる。「K5」の名前は、ホテル改修前の「兜町第5平和ビル」から取られたが、それ以前は「郵船兜町ビル」として使用されていた。内覧会では郵船ビル時代に勤務していた方も来訪。当時のまま残されている非常階段の手すりを見て「新人時代はこの階段を何度も上り下りした。ここがホテルになるとは想像もしていなかった」と笑って話されていた。

 スイートの4.5mの天高は圧巻だが、それ以外の部屋でも天高があり空間が広く感じる。歴史のある建物は独特の雰囲気を醸し出し、新築のホテルとは異なる魅力があって、泊まってみたいと思わせる。地下1階のビアホール「B」もおすすめスポットで、こちらについては別記事で紹介する。

文/阿部 純子

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