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遺伝子情報がブロックチェーンに書き込まれた唯一無二のAIアイドルをプロデュースする「Gene A.I.dolsプロジェクト」が我々に問うもの

2020.02.01

 人間の遺伝子情報がある種の記号配列であるならば、それは言葉やコンピュターコードのようなものでもある。これを応用し、ブロックチェーンに遺伝子情報を書き込み、その情報から画像生成AIによってAIアイドルを作り出すというプロジェクトが始まっている。開発者の小幡拓弥氏は、このAIアイドルは、AIと人間の付き合い方、そして人間とは何かといった問いを誘発すると考える。

 いま中学三年生の理科では、こんなことを学ぶ。以下は、中学理科の検定教科書『新版 理科の世界 3』(大日本図書、平成30年三版)の「生命のつながり」の単元で、生物の子孫の残し方にはゾウリムシやサツマイモなどのように体細胞が分裂していく無性生殖と雄と雌が受精卵を作る有性生殖があることを説明する導入部分だ。

 生物が自らと同じ種類の新しい個体(子)をつくることを生殖という。ある程度生物が成長すると生殖が可能になる。生殖によって生物の種は維持される。生殖には体細胞分裂によって新しい個体を作る無性生殖と,生殖細胞とよばれる特別な細胞によって新しい個体を作る有性生殖とがある。(『新版 理科の世界 3』84ページ)

 その後、ヒトの受精と発生について解説し、遺伝の規則性と遺伝子を扱う章に入る。

 生物の特徴となる形や性質を形質といい,親の形質が子や孫の世代に現れることを遺伝という。

 形質を表すもとになるものを遺伝子といい,遺伝子は細胞の核の中にある染色体に存在する。

 無性生殖では,この世代は親の染色体をそのまま受け継ぐので,親と同じ形質を示す。有性生殖では,両親からそれぞれの染色体を半分ずつ受け渡されるため,親とは異なる遺伝子の組み合わせを持つ子ができる。子には,両親のどちらかと同じ形質が現れたり,どちらとも異なる形質が現れたりする。(同書、94ページ)

 そして、オーストリアの修道院僧だったメンデルが遺伝の規則性を発見し、彼が「対になっている形質を伝えるもの」つまり遺伝子を想定していたこと、それが染色体に存在するとこと、さらには、形質を伝えるものが遺伝子であることが発見され、DNA(デオキシリボ核酸)という物質であると説明されていく。以下は、DNAの構造についてのコラムだ。

 染色体にあるDNAは,図のように,2本の長い鎖(2本鎖)がらせん状に規則正しく向かい合った構造(二重らせん構造)になっている。それぞれの鎖は,塩基,糖,リン酸とよばれる化学物質が規則正しく並び,長くつながってできている。塩基にはA,T,G,Cの略号で表される4種類があり、AとT,GとCの互いに結びつく性質によって2本鎖が形づくられる。

 塩基が3つ連なった集まりは,「単語」のような役割をしている。この「単語」でできた「ことば」に基づいて,生物の体を構成しているタンパク質が作られている。4種類の塩基は,「ことば」を構成する「文字」であると考えることができる。(同書104ページ)

図版:「ジャパンナレッジ」日本大百科全書(ニッポニカ)のDNAのワトソン‐クリックモデルの項目より引用

 少し乱暴かもしれないが、DNA(遺伝子)によって遺伝される形質は、4種類の「文字」によって「ことば」となり、これによって生殖や成長をしていくということになる。言い換えると、「ことば」は記号の集合体なので、これを擬似的に再現すると複製つまりクローンが作れることになる。

 この遺伝子によって生命が生まれ、成長する様子をブロックチェーンのプログラムによって再現し、アイドルを生み出すプロジェクトが「Gene A.I.dolsプロジェクト」だ。

 このプロジェクトを始めたジーンアイドル社代表取締役社長の小幡拓弥氏は、「将棋電脳戦」の最初期に、女流棋士の清水市代(当時女流王位および女流王将)さんと対戦したコンピュータソフトの「あから2010」側で開発を担当するなどAIの開発に携わってきた。ここ最近はフィールドをブロックチェーンプログラムの開発にも広げ、それらの知見や経験、さらには人脈を活かして同社を立ち上げた。

「ユーザーは、AIアイドルを、現実の世界で活躍させるプロデューサーになることができます。いまデレステ(バンダイナムコが提供する「アイドルマスター」)のように、プロデューサー体験のシミュレーションゲームがたくさんある思います。それらは用意されたアイドル、用意された環境の中でシミュレーションしていくんですが、Gene A.I.dolsでは、リアルな世界で実際にデビューさせ、用意されていないシナリオでアイドルをプロデュースすることができる。自分が実際に芸能事務所を運営しているような体験ができるようになるんです」

Gene A.I.dolsプロジェクトの概要を示したスライド。現在は、Step1の段階だが、今年の春~夏までにデビューさせることができるようになる見込み。ジーンアイドル社には、DataGrid社を企業し、先端AI技術「GAN」の研究開発を行なう岡田郁貴氏が副社長に、G.U.Lab社やICOVO AG社に関わる西村祥一氏がCTOとして参画しているほか、『ブロックチェーン・ゲーム 平成最後のIT事件簿』などの作品がある作家の沢しおん氏が顧問として関わっている。

Gene A.I.dols広報担当の勝又優輝さん。非常にリアルで写真のような図像だが、実在しないAIアイドル。

 ユーザーはイーサリアムを用意し、Gene A.I.dolsのサイトで決済をすると、ジェネレータ機能によってアイドルと出会うことが出来る。ここに現れる顔は人間と同様に、唯一無二のユニークなもので、それぞれAIによって名前を与えられる。たとえば、上画像のGene A.I.dols広報担当の勝又優輝さん。彼女の目、鼻、口、声、骨格などの形質はブロックチェーンのプログラム上に遺伝子として記録されていて、それを元に画像生成AIによってアイドルの顔が作られる。つまり、勝又優輝さんの顔は、別のアイドル同士の形質を引き継ぐように作り出されたわけだ。そして、勝又さんと他のアイドルを掛け合わせることにより、彼女の形質は別のアイドルへ受け継がれていく。これをフュージョン機能と呼び、このようにして、ユーザーのアクションにより、AIアイドルは無限的に生まれてくる。

 2020年1月現在は、アイドルと出会う体験までしか出来ないが、春までにはアイドルとの出会いをスマホでも体験できるようになり、彼女たちをレッスンによってプロデュースすることができるようになる予定だ。

「プロデューサーは、AIアイドルをカスタマイズできるようになります。カスタマイズには大きく2つあり、そのひとつはビジュアルです。例えば衣装を変えたり、メイクアップすることができます。そして、もうひとつのカスタマイズが人格や知識の部分であるレッスンです。これはチャットによる対話を通じて、人格やキャラクターの表現につながるところを、プロデューサーが教え込んでいくんです。

 長期的にはシンギュラリティが起きるでしょう。その世界を考えると、人格を表現する技術はたくさんあると思います。とはいえ、いま出来るのはチャットを通じて、学習させていくこと。技術が進んでいけば、もっといろいろなことができるようになると思います」

ジーンアイドル代表取締役社長の小幡拓弥氏

 AIアイドルと出会い、レッスンを重ねていくと、当然そのコを誰かに見せたくなるはず。それがデビューだ。

「プロデューサーのためにレッスンをしたAIアイドルがデビューできる場を用意する予定です。具体的にはAIアイドルがリアルなSNSを通じて、ファンとコミュニケーションすることができるようにします。また、歌やダンスなどのパフォーマンスをしたり、ファンとチェキ画像を取れるようなしかけも用意したいと思っています」

 近い将来には、AIアイドルが企業のPRを担当するなど、現実のアイドルのように仕事を請け負うようなプラットフォームも作りたいと考えているなど、いろいろと構想はあるようだ。

AIに人格や人権はあるか? AIと人間の違いとは?

 いま、すでにブロックチェーンはゲームに取り入れられて増えつつあるが、Gene A.I.dolsプロジェクトが本格化すると、このトレンドに一石を投じるかもしれない。

「いまトークンを使ったゲームがありますが、Gene A.I.dolsプロジェクトはゲームではありませんが、ゲームのような側面もあります。アイドル情報はブロックチェーン上に書き込まれることでトークン化されます。これによって譲渡性、資産性、唯一性という3つの特徴が備わります。いままでのゲームアイテムは、運営側が所有し、それを販売できなかったのですが、ブロックチェーンによってキャラクターやアイテムの所有権そのものをユーザーが持つことになる。とすると、AIアイドルを他人とやり取りする人が出てくるでしょう。また、AIアイドルの中で価値の大きいとされるコは、その評価も高くなる。ゲームでは、いくらお金をかけても止めるときにはゼロにリセットされますが、ブロックチェーンを利用していることで、他のユーザーに譲渡し、引き継ぐことも可能です」

 こうしたテクノロジーの進化と市場メカニズムが働いてしまう流れは、AIと人間の向き合い方にも深い問いを突きつけてくる。たとえば、AIアイドルの人格や人権。上述のように、トークンとして売買可能になってしまうことが、AIの「人身売買」として倫理的に許されるのかなどの議論を誘発するかもしれない。また、AIアイドルはいろいろとレッスンなどによって育成されるが、悪意があるプロデューサーが、一般的には拒否するようなことを強いたとき、それを拒否できるのか? などなどだ。

「たとえばアダルトに出演させようということだと思いますが、いまのところAIアイドルには拒否する意思は持てません。でも、AIアイドルに、そういうことをさせるのはいけないという意見もあると思う。そして、すぐに答えの出る話ではないでしょう。

 私はそういう議論が起こることを期待しています。たとえば、実際にお仕事をさせたとしたら、AIアイドルは24時間365日働かしていいのか、などです。そのAIの人権を議論する前提には、人間と同様に『本人の意思に反することを強制してはならない』という考えがくる、つまりAIにも心があるという前提です。ただ、人間の心も、見えるものではありません。心は言動や行動などから観測して感じているものです。では、人間と全く同じように言葉を発し、振る舞うAIがいたとしたら、そのAIは心を持っていると言えるでしょうか? そういった議論が起こると、いままで自明だった『こころとは、なんだろう』という問いが生まれ、それを通じて人間に対する理解も深まると思っています。

 なぜ、こんなことを考えるかというと、私がAI(上述の「あから2010」など)を開発していたときに、それを愛でてたんです。かわいいなぁ、と(笑)。そして、成長していく様が、顔とかはなくても、かわいいと思い、人格のようなものを感じたんですね。簡単に答えの出る話ではないですけれど、AIアイドルのように、感情移入ができるようなものが現れると議論が活発になるように思います」

 私たちは、普段から心はあるものと考えているが、実際に、それがどこにあるか? と問われると、困ってしまうのではないか。脳? 胸のあたり? 目には見えないけれど、あると感じているのが心で、こうした話を広げていくと意外とやっかいだ。ただ、そうしたことが考えられることで、人間らしさ、人間の豊かさに気づくことができるのではないか、というのが、小幡氏の思いなのだろう。

 さて、それでは、どうやったらAIアイドルに会えるのだろう。

 上述のGene A.I.dols広報担当 勝又さん(上画像)によると、まずはブラウザーのGoogle Chromeを用意し、MetaMaskというウォレットアプリを入手する。これで自分のウォレットを作り、そこからイーサリアムを送ると、AIアイドルと出会えるサイト「Codebase」にログインができるようになる。そこで署名をすると、任意のアイドルがあなたの前に現れるようになる(詳細は、こちら)。

 ブロックチェーンに遺伝子情報を持つAIアイドルとの接触を通じて、AIと人間との関わりを本格的に考えてみてはいかがだろう?

社長の小幡氏(中央)、17歳のスーパーエンジニアのテヘラニ・ダニエル氏(右)、マーケティング担当として鳥谷悠見氏(左)が中核メンバーとしてプロジェクトを進める。

取材・文/橋本 保 撮影/関口佳代

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