脳内マシン
脳の情報を機械が読み取る、または脳に直接的に情報を送る技術「BMI(Brain Machine Interface)」。かのイーロン・マスクが、この開発に乗り出したことでも話題となった。
BMIは、脳内に直接機器を埋め込む「侵襲」と、外部から間接的にアクセスする「非侵襲」タイプがある。脳に直接刺激を与えてパーキンソン病の症状を抑える機器などは、すでに実用化されており、脳波計やMRIも広い意味ではBMIといえる。しかし、脳科学の発展により、BMIはSF映画並みの進化を遂げつつあるという。
「米国防総省は音声を使わず、神経信号から読み取った思考で通信する技術や脳の特定部位を活性化することで外国語の習得を加速させたり、諜報分析官の暗号解読力を向上させたりする技術を開発しています。また、見たものを写真のように記憶するなど、ごく特定の分野で優れた能力を発揮するサバン症候群を人工的に引き起こす研究もされています」(三井物産戦略研究所 技術トレンド基礎調査センター・阿部裕さん)
最先端の軍事技術ゆえ、どこまで進んでいるのかうかがい知れないが、まさに天才を人工的に作り出せる技術なのだ。
軍事目的のBMIもいずれは民生用に降りてくると予測される。倫理面、悪用の危険性も大きい技術だが、将来的には人類を進化させるようなテクノロジーとなるだろう。
Neuralink社の開発するBMIイメージ。超小型ロボットによって脳に張り巡らされた電極とデバイスがコンピューターとつながる。
『Neural Link Event』のHPより
インターネットの原型やGPSを開発した米国・国防高等研究計画局(DARPA)が研究する、兵士が思考を伝達する技術。写真はイメージ。
ATR(国際電気通信基礎技術研究所)やNTT、島津製作所などが共同開発した「BMIハウス」。脳波や血流などから人間の思考を推定し、車椅子や家電の操作、家族や介助者に思いを伝えることもできる。
写真提供/ATR
取材・文/小口 覺