
世界では今、空前の「SAKE」ブームが巻き起こっている。昨年はニューヨークやロンドン、パリなどで、世界に日本産食品の普及を推進する日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)が、日本酒と魚介類のペアリングプロモーションを実施した。果たして日本酒と魚介類はなぜマッチするのか、日本酒に合う魚介料理などを探る。
JFOODOが欧米で日本酒普及プロジェクトを実施!
JFOODO は、2017年に日本貿易振興機構(ジェトロ)に設置された組織で、日本産農林水産物・食品のブランディングのためのプロモーションを行っている。2019年度は、「Escape the Ordinary(日常からの脱却)」をコンセプトに、欧米市場に向けて魚介類と日本酒のペアリングを提唱するプロモーションを、世界3か国5都市、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルス、ロンドン、パリで展開した。
現地の人気メディアとタイアップし、影響力の高いソムリエや著名シェフを起用しながら、なぜ魚介類と日本酒が合うのかを動画で紹介したり、実際に体験してもらうイベントを開催したりするなどして、日本酒と魚介類との相性の良さを訴求した。
2019年10月~11月にかけては、各都市の魚介料理店とコラボレーションして、魚介類と日本酒のペアリングを楽しんでもらうポップアップイベント「Restaurant Paired(レストラン・ペアード)」を展開した。
「Restaurant Paired」ダイジェスト・ムービーより
「Restaurant Paired」ダイジェスト・ムービーより
3か国5都市で合計約750人が魚介類と日本酒のペアリングを楽しみ、アンケート調査の結果、約86%の人が「今後も日本酒を飲みたい」と回答した。欧米各国の人々の口に日本酒は十分に合ったようだ。
日本酒はすでに世界の魚介料理にペアリングされている!
ところでこの日本酒、海外では日本人の思いもよらぬところで、「魚介料理と合う貴重な酒」という認識が広がっているようだ。JFOODOカテゴリーマネージャーの武田三範さんは次のように話す。
「海に囲まれ、魚介類を頻繁に食す文化が根付いてきた日本において、日本酒もその食文化と共に育まれてきました。魚類のことを『さかな』と呼ぶのは“肴”から転じた言葉であり、酒の肴に魚介類が多く使用されたためという説があります。
鮨や刺身など日本食に日本酒が合うことはご存知のことと思いますが、世界の魚介料理にも日本酒はとても合うことが科学的にも証明されており、世界のミシュランシェフやソムリエも日本酒とのペアリングを提供し始めています。日本食のみならず、西洋料理を食べる際にも、ぜひ、日本の『匠』の技の結晶である日本酒と魚介類の最高の相性を楽しんでみてください」
なぜ日本酒は魚介類とマッチするのか
そもそも日本酒と魚介類はなぜ合うのか。武田さんは次の2つを挙げる。
1.うま味の相乗効果
「日本酒は最もうま味を豊富に含むお酒の一つであり、ワインに比べ2~5倍ものアミノ酸(=うま味成分)を含んでいます。日本酒のうま味と魚介類のうま味が一緒になると、うま味の相乗効果が起こり、魚介類の美味しさが倍増されます」
2.日本酒はワインに比べ、魚の不快なにおいや味を生成しない
「魚介類には白ワインをペアリングする方が多いと思いますが、実はワインのぶどうに含まれる鉄分や、多くのワインメーカーが酸化防止剤として使用している亜硫酸は、魚介類と反応を起こし、魚の生臭いにおいを発生させることが科学的にわかっています。一方、日本酒は、酸化防止剤を使用することが禁止されており、製造過程でのろ過により鉄分をほとんど含んでおらず、不快なにおいや味を生成しません」
おすすめの「魚介類×日本酒」のペアリング3選
ぜひ日本酒と魚介類の最高の相性を堪能してみたい。そこで武田さんに、魚介類と日本酒の組み合わせでおすすめのものを3つ挙げてもらった。ぜひ自宅でも実践してみよう。
1.生牡蠣×Refreshing&smooth(爽酒)タイプの日本酒
(日本酒の例:生酒・スパークリング)
「牡蠣の新鮮な塩分と豊かなクリーミーさには、爽やかでフレッシュな生酒やスパークリングタイプの日本酒が特におすすめです。牡蠣の濃厚なうま味と日本酒のなめらかさが完璧に調和し、素晴らしい味わいを生み出します。海外には、牡蠣に日本酒を数滴注いでから食べることを勧めるソムリエもいます」
2.セビーチェ×Aromatic(薫酒)タイプの日本酒
(日本酒の例:大吟醸・吟醸)
「ペルーなどのラテンアメリカで食される魚介類のマリネ『セビーチェ』など、ライムやレモン、柚子こしょうなどの味付けがされた生の魚介類には、大吟醸や吟醸タイプの香りあふれる日本酒がぴったりです」
3.クラムチャウダーなどのクリーミーな料理×Rich(醇酒)タイプの日本酒
(日本酒の例:生もと・山廃)
「濃厚なクリーム系の料理には、濃厚でパワフルな味わいが魅力の生もと(きもと)、山廃(やまはい)のような日本酒と合います。天然の乳酸によってゆっくりと発酵を進める生もと、山廃は、キノコやヨーグルトのような味わいの特徴を持ち、クリームベースの料理の濃厚さとよく合います」
日本酒好きの日本人も、それほどたしなまない日本人も、ぜひ次は魚介類との相性を意識しながら、味わってみてはいかがだろうか。
【取材協力】
JFOODOカテゴリーマネージャー 武田三範さん
国内消費財メーカー、外資系企業にて約20年間マーケティング業務に従事。現在はJFOODOカテゴリーマネージャーを務める。
JFOODO
JFOODO海外消費者向け日本酒プロモーションサイト
取材・文/石原亜香利