
アメリカ・ラスベガスで開催された世界最大規模の展示会「CES 2020」。その会期中の1月9日(現地時間)に、リラクゼーションサロン『Re.Ra.Ku』などを運営する医療ヘルスケアの総合商社である株式会社メディオムが、アクティビティートラッカー『MOTHER』を発表した。
『MOTHER』の完成イメージ。2020年8月以降に発売予定。
温度差による発電技術を採用したアクティビティートラッカーが登場!
『MOTHER』は外気とユーザーの体温の温度差を動力源として発電する、世界初の充電不要のトラッカー。腕に装着していれば24時間365日動き続け、ユーザーの活動量や睡眠、消費カロリーを測定できる。
充電機能が備わった『MOTHER』の試作品。今後、デザイン面を追求する。
この温度差発電技術は、シリコンバレーのスタートアップ企業「MATRIX Industries」が開発。MATRIX社は充電が不要なスマートウォッチ『MATRIX PowerWatch(パワーウォッチ)』を世界展開しており、2019年12月18月には最新モデル『MATRIX PowerWatch Series 2』を発売。夏など、外気と体温の温度差が少ない時にも充電効率が上がるよう、太陽光発電機能を備えたモデルがラインアップに加わった。
MATRIX社の『MATRIX PowerWatch Series 2』5万9800円~。装着するとすぐに秒針が動き始めた。
『MATRIX PowerWatch』の基盤。この中に温度差発電技術と太陽光発電機能を備える。
今回の『MOTHER』はMATRIX社の温度差発電技術や太陽光発電機能などを、アクティビティートラッカーに応用したもの。メディオム社はMATRIX社と資本提携。製品開発を行なうメディオム社の植草義雄氏は、今回のMATRIX社との共同開発について、次のように語った。
「私たちはパーソナルトレーニング×マッチングアプリ『Lav(Lifestyle Assist for Vitality)』を用いて、生活習慣病予防の健康管理指導を行なっています。食事の写真や、トラッカーで記録した歩数や睡眠などのデータをベースに、ヘルスケアや医療に関わる専門家がアドバイス。ユーザーの好みや健康状態に合わせて専門家をマッチングし、健康課題を解決する支援をしています。その際、トラッカーがとても重要。充電のために身体から取り外すことで、利用が定着しないという問題を抱えていました。そこで今回、MATRIX社と共同開発する経緯に至りました。MATRIX社の『MATRIX PowerWatch』は、手に取れば2~3秒で動き始めます。すぐに電力供給できて、体温に触れていて、外気との温度差がある限り、ずっと給電し続けます。今回、バージョンアップして太陽光の発電機能まで達成したことで、よりデバイスに供給できる電力が増え、安定的にトラッカーが動作するようになりました。充電不要のトラッカーを開発したことで、健康管理のハードルが大きく下がることに期待しています」。
将来的にはオフィス向けに勤怠管理やFeliCaにも対応
『MOTHER』では、端末で取得したデータを、SDK(Software Development Kit)にまとめて開放。他のヘルスケアサービス事業者も広く利用できるようにする。通常はデバイスごとに連携するアプリがあり、そこでユーザーを確保するのが一般的だが、「そのことがヘルスケアのアプリが広がっていかない一因だと思っている」と、メディオム社の代表取締役社長の江口康二氏。
「自分たちのアプリのダウンロード数にこだわらず、『MOTHER』のデータを開放するのが今回の最大のポイントです。フィットネスや健康などのアプリを提供する事業者は、『MOTHER』のトラッキングデータを、ダイレクトにサービス内に取り込むことが可能になります。このことで新しいユーザー層を広げ、健康関連産業などの発展に寄与したいと考えています」。
『MOTHER』のスタート時のターゲットは95%がB to B。連携するオンデマンドトレーニングアプリの『Lav』が第三期新基準(厚生労働省)の特定保健指導に対応した完全遠隔支援スタイルであることから、『MOTHER』×『Lav』で企業の健康経営を支援する。
オンデマンドトレーニングアプリ『Lav』。専門家であるコーチのアドバイスにより、ユーザーの生活習慣の改善を支援する。
また、市区町村等の自治体もターゲット。特定健診は対象者数約5388万人中、受診者数が約2858万人と、実施率が53.1%であるのに対して、特定保健指導は対象者数約492万人中、修了者数は約96万人と実施率は19.5%にしか満たない(厚生労働省の2017年度の特定健診・特定保健指導の実施状況より)。その点を『MOTHER』×『Lav』で補えることから、すでに18万5000台の仮受注があると言う。また個人ユーザー向けにも、東急ハンズやLOFTで販売予定がある。
ベーシックなモデルに加えてオフィス向けでは、従業員の勤怠管理にも活用できるよう、バンドに装着できるNFCチップを用意する予定。将来的にはSuicaとの連携も考えたいと意気込む。
価格はNFCチップを装着できるモデルでも1万5000円を上限に、量産できるようになれば1万円以下を目指す。発売は2020年8月以降を予定。生活防水にも対応するものの、機能はトラッキング機能だけと至ってシンプル。充電不要という最大の特徴がユーザーにどれほど響くのか!? 今後の展開にも注目したい。
取材・文・写真/綿谷禎子
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