
業界の垣根を越えた大きな再編が起こる!?
2020年はキャッシュレス決済のサバイバル競争が始まる1年になりそうだ。そのひとつの兆候といえるのは、2019年11月に突如発表されたYahoo!とLINEの経営統合。この話は、両陣営のキャッシュレス決済が発端となっている。Yahoo!が出資する『PayPay』は20%還元キャンペーンなどで抜群の知名度を誇る一方、現在は手数料が無料のため、収益化がこれからの課題。一方の『LINE Pay』は相次ぐキャンペーンを打ち出したが、十分な成果は得られず、他社に後れを取っている。両陣営が手を結ぶことで、2020年は各種ポイントサービスや航空業界のマイレージを巻き込んだ、大きな再編が起きることが予想される。「どのサービスを利用するか」「どのポイントを貯めていくのか」などを含め、目が離せなくなりそうだ。
ジャーナリスト 法林岳之さん
Web媒体や雑誌などを中心にデジタル関連製品のレビュー記事、解説記事などを執筆。インプレスの「できるシリーズ」など解説書も多数執筆している。携帯業界のご意見番。
アジア第3極の決済サービスが生まれる!?
『PayPay』は中国の『Alipay』と、『LINE Pay』は『WeChat Pay』と、それぞれ提携している。Yahoo!とLINEが一緒になったことで、今後この提携がどうなるのか注視したい。経営統合による『PayPay』と『LINE Pay』の連合は『WeChat Pay』の強みである個人間送金、『Alipay』の強みであるECの、どちらも持つことになる。そのため〝アジアの電子決済の第3極〟となる可能性があり、おもしろい戦いができるかもしれない。ただし、それにはまだ時間がかかるはず。国内の電子決済も両者の動き次第で提携関係が見直され、再編が起こるだろう。中でも気になるのが『メルペイ』、そしてドコモの動き。先日発表されたドコモとAmazonとの提携は、あくまでキャンペーン的な取り組みだが、今後、提携先を広げていくのか注目したい。
テックライター 太田百合子さん
デジタルガジェットを自腹で買って試した知識と経験をもとに、デジタルが苦手という女性や初心者の方にもわかりやすく、スマホやタブレットなどガジェットの選び方などを紹介する。
2020年6月までは〝囲み込み争い〟が続く!?
政府による還元事業が終了する2020年6月まで、コード決済をはじめとするキャッシュレス事業の各社は、独自の還元を加えることで、ユーザーの囲い込みを目指すものとみられる。スマホ決済のアプリは日々利用するものだけに、ユーザーをほかのサービスにも誘導しやすい。フリマやショッピングモールなどと連動させる『PayPay』や、リアル店舗で事前注文・決済が可能なミニアプリを始めた『d払い』はその先例だ。ただし○○Payという名のスマホ決済は、乱立しすぎているきらいもある。大規模還元は企業にとっても負担が非常に大きく、どうしてもキャリアのような大企業が有利になりがちだ。Yahoo!とLINEが経営統合に基本合意したように、政府の還元事業が終了するのを機に、統廃合が起こる可能性も十分ある。
ケータイジャーナリスト 石野純也さん
出版社で多くの携帯電話雑誌を刊行後、ジャーナリストとして独立。Web媒体や雑誌、テレビなどの幅広い媒体で活躍中。業界動向のビジネス書や端末の解説書まで著書も多数。
取材・文/法林岳之、太田百合子、石野純也 写真/園田昭彦、藤岡雅樹