孫さんの影響力はまだまだ続く
房野氏:ソフトバンクは以前、孫さんの後継者として迎えた人がいましたよね。
石野氏:ニケシュ・アローラですね。
房野氏:ああいう人が今回のWeWorkの件に関係したりしていないんですか? 孫さんだけに責任があるとも思えないような……
石川氏:それでいうと、ソフトバンクって孫さんしかしないんだなと。目利きをするのも、決定するのも、会社を回していくのも孫さんしかいない。どんなにいい会社を買ったとしても、そこをうまく回せる人がほとんどいない。唯一、Sprintを立て直したマルセロ・クラウレは海外では色々活躍している。
今回、WeWorkの立て直しもやるといっていますけど、なかなか日本から海外に行って会社をたて直せる人がいない。孫さん以外、誰もいないことがソフトバンクの限界なんだろうなという気がしています。
法林氏:孫さんはこの人にこの会社をあずけるんだなと思ったのは、携帯電話会社としてのソフトバンクを宮内さん(ソフトバンク社長の宮内 謙氏)があずかることになったことくらいしかないじゃないですか。ほかは人が辞めちゃったりしている。
房野氏:孫さんはそろそろリタイヤするとか言ってませんでしたか?
法林氏:いや〜、リタイヤなんてしませんよ。
石野氏:結局はリタイヤしないと思いますね。
法林氏:2、3年くらい前に1度そんなことを言ったけれど撤回した。
石川氏:孫さんには「人生50年計画」があって、60代のうちに事業を後継者に譲るといっていたけれど、60代が終わるまでにまだ8年くらいあるので、しばらく続くんじゃないかな。孫さんがいないことには、みずほ銀行がヤバくなるし。ただ、長い目で見ると本当に大丈夫なのかなと疑問に思いますね。
石野氏:あと30年トップを続けたら……孫さんだったらできそうな感じですけど、30年スパンで見たら、さすがに孫さんもツライと思うので、ちょっと急がないといけないんでしょうけどね。
房野氏:ソフトバンクの宮内さんは順調なようですが。
法林氏:宮内さんはまぁ、うまくいったかなという気はするけど、それ以外はどうかなぁ。
石野氏:宮内さんもすごく優秀な方だと思うんですけど、孫さんレベルかというとそうじゃないじゃないですか。そこまで無茶はしないし。
石川氏:LINEとYahoo!の統合話も、正式発表が出るまでは、孫さんが糸を引いていたという書かれ方をメディアにされるわけですよ。ソフトバンクGはすべて孫さんが仕切っていると見られるのが、たぶん、Yahoo!の川邊さん(Yahoo!の川邊健太郎氏)なんかは、それって良いことなのかなと疑問に思ったんじゃないかな。発表会では、川邊さんと出澤さん(LINE 代表取締役社長 出澤 剛氏)が決めましたということを強調していた。あの世代からすると、孫さんがすべて牛耳っているソフトバンクGはどうなんだと思っているんじゃないかな、と感じました。
Zホールディングス株式会社 代表取締役社長・ソフトバンクグループジャパン株式会社 取締役 川邊健太郎氏
LINE 代表取締役社長 出澤 剛氏
法林氏:その状態がどんどん進んでしまうと、また人材が社外に流出するという構図になりかねない。孫さんに信頼される人が、もっといろんなジャンルで出てこなきゃいけないとは思うんですけど、孫さんが求めているレベルが高過ぎるのか、それとも下に付いている人たちが問題なのかわかりません。僕は孫さんの求めているものが高すぎるんじゃないかと思うけど。
石野氏:孫さんがスーパーマンみたいな人だから。あの基準を求められると相当厳しいと思います。
......続く!
次回は、ファーウェイの新型スマホ「nova 5T」について議論する予定です。ご期待ください。
法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。
石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。
石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。
房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。
構成/中馬幹弘