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忘年会で女性社員に「今日、子どもは大丈夫なの?」って聞くのはハラスメントだった!?

2019.12.24

求人広告大手・株式会社アイデムの研究部門「アイデム人と仕事研究所」では、労働に関するニュースをピックアップし、同研究所スタッフによる課題の解説や考察、所感などをまとめたレポートを発行している。

今回は、古橋孝美氏による「忘年会に来た女性社員に『今日、子供は大丈夫なの?』と聞いていないか?」という忘年会シーズンの今にタイムリーなテーマのレポートを紹介していきたい。

古橋 孝美(ふるはし たかみ)

2007年、株式会社アイデム入社。データリサーチチーム所属。求⼈広告の営業職として、企業の人事・採用担当者に採用活動の提案を行う。2008年、同社人と仕事研究所に異動し、企業と労働者への実態調査である『パートタイマー白書』の企画・調査・発行を手がける。2012年、新卒採用・就職活動に関する調査プロジェクトを立ち上げ、年間約15本の調査の企画・進行管理を行う。2015年出産に伴い休職、2016年復職。引き続き、雇用の現状や今後の課題について調査を進める一方、Webサイトのコンテンツのライティング、顧客向け法律情報資料などの作成・編集業務も行っている。

男性にも同じことを聞くのか?

そろそろ、忘年会シーズン。今回のタイトルを見て、「?」と意図が分からないと感じる方もいるかもしれない。「普通に聞くよ……だっていつも時短だから珍しいな、って思うし」という方もいることだろう。

しかし、私がタイトルのようなことを聞かれたら、違和感を覚える。「夫と調整したからこそ、ココにいるんですけど……大丈夫に決まっているでしょ。というか……ソレ、男性にも聞きますか?」と思ってしまうのだ。少しひねくれているだろうか?

もちろん、同じ文言でも前後の文脈や日ごろの関係性で、発言者の方が聞きたいニュアンス、女性従業員が受け止めたニュアンスは異なるかもしない。とは言っても、飲み会に来た“男性”従業員に「今日はお子さんを見ていなくて大丈夫なの?」という疑問が自然に生じる方は、どのくらいいるだろうか。個人的には、あまり多くはないと思う。

それはやはり、「子供の世話は母親がするもの」「父親が平日に1人で子供を見ることなんてない」といった、性別役割分業意識が少なからずあるからではないだろうか。

無意識の偏見―アンコンシャス・バイアス

これは、アンコンシャス・バイアス【unconscious bias】ではないだろうか。日本語に訳すと「無意識の偏見」「無意識の思い込み」。知的連想プロセスの1つで、自分では無自覚で全く他意がなくても、実は差別や過剰な配慮につながる歪んだ見方をしていることを指す。

例えば、新入社員が「うちの親、単身赴任しているんです」と言っているのを聞いて、あなたの頭に浮かんだのは「男親」だろうか。「女親」だろうか。シニアの従業員が入社したら「パソコンが苦手そう」「融通が利かなそう」と思っていないだろうか。

「男は出世したいはず」「女だから家庭優先」「理系といえば男性」など男女に関するものもあれば、「若者は発想が新鮮」「年配者は頑固」などの年齢について、「外国人だから自己主張が強い」など国籍や宗教に関するものまで、様々なアンコンシャス・バイアスがある。

アンコンシャス・バイアスはいけないもの?

アンコンシャス・バイアスは、個人が生きてきた環境や過去の経験や習慣などから形成された、その人の価値観や嗜好とも言える。そのため、誰しもが何らかのアンコンシャス・バイアスを持っている。

一方で、多様な価値観との共生が取り沙汰される現代において、アンコンシャス・バイアスは重要なテーマの1つとも言える。アンコンシャス・バイアスは誰もが持っているが、無意識ゆえ、何気ない行動や発言に表れてしまい、相手にネガティブに作用してしまうのだ。

例えば、日々のちょっとした雑談の中で、若い人を見下したような言動を取る、女性を軽く扱うような態度を取る、性的マイノリティを揶揄するような発言をする―それ自体は直ちに大きな問題とはならないかもしれない。しかし、当事者は違和感や疎外感を覚える。

特に、様々な属性の人が集い、パフォーマンスを発揮しなければならない職場では、アンコンシャス・バイアスによって職場の人間関係が悪化したり、個人のパフォーマンスに悪影響が及ぶ可能性もある。また、リーダーがアンコンシャス・バイアスを持っていると、労働者の採用や評価・育成などの面で個々の資質ではない部分に判断が働き、適切な配置や評価の妨げになるおそれもあるのだ。

ハラスメントの原因にもアンコンシャス・バイアス?

今後はアンコンシャス・バイアスに対して従業員個人への啓発だけではなく、経営者など立場の強い層もアンテナを立て、組織内でアンコンシャス・バイアスに意識を向けることが必要だ。それは、前述したようなアンコンシャス・バイアスが引き起こすさまざまな問題が、ハラスメントの火種にもなり得るからだ。

「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」が第198回通常国会で成立し、2019年6月に公布された。注目すべきなのは、この中で「労働施策総合推進法」「男女雇用機会均等法」「育児・介護休業法」について、職場のハラスメントに関する部分が改正されること。大企業は2020年6月1日から、中小企業は2022年4月1日に施行される。

<主な改正内容>
(A)国の施策に「職場における労働者の就業環境を害する言動に起因する問題の解決の促進」(ハラスメント対策)を明記【労働施策総合推進法】
(B)パワーハラスメント防止対策の法制化【労働施策総合推進法】
(1)事業主に対して、パワーハラスメント防止のための雇用管理上の措置義務(相談体制の整備等)を新設
(2)あわせて、措置の適切・有効な実施を図るための指針の根拠規定を整備
(3)パワーハラスメントに関する労使紛争について、都道府県労働局長による紛争解決援助、紛争調整委員会による調停の対象とするとともに、措置義務等について履行確保のための規定を整備
(C)セクシュアルハラスメント等の防止対策の強化【男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、労働施策総合推進法】
(1)セクシュアルハラスメント等に起因する問題に関する国、事業主及び労働者の責務の明確化
(2)労働者が事業主にセクシュアルハラスメント等の相談をしたこと等を理由とする事業主による不利益取扱いを禁止

初めて法制化されたパワハラの防止義務に注目されがちだが、従来からあったハラスメント―(C)のセクシュアルハラスメント等の防止対策をより実効性のあるものにするための内容も含まれている。例えば、(C)-(2)の労働者の相談等を理由に事業主が不利益取扱いをすることに関しては、今までは「防止措置を義務づけ」だったものが、「禁止」と厳しくなった(パワハラ・マタハラも同様に「禁止」)。

「女性だから」「男性だから」「若者だから」……自身の持つアンコンシャス・バイアスに気付かず、業務上必要のない要請や配慮をしてしまった場合、「ハラスメント」になる可能性もある。

まずは、自身がどのようなアンコンシャス・バイアスを持っているのか考えるとともに、「『アンコンシャス・バイアス』というものがある」ことを従業員に伝え、それぞれ考えてもらうこともハラスメント対策の1つ。そうすることで、職場の心理的安全性が高まり、組織と個人、双方のパフォーマンスも向上し、企業力も高まるのではないではないだろうか。

出典元:株式会社アイデム

構成/こじへい

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