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【DIMEトレンド大賞2019】話題の人物賞に選ばれた講談師・神田松之丞さんはいかにして講談界の風雲児となったのか?

2019.12.30

神田松之丞さん

話題の人物賞

今年最も活躍し、メディアをにぎわせた人物に贈るDIMEトレンド大賞「話題の人物賞」に神田松之丞さんが輝いた。今年で32回を数えるトレンド大賞の歴史の中で、講談師への贈賞は今回が初となる。500年以上続く伝統芸能でありながら近年は〝消えゆく文化〟と嘆かれた講談界に再び火を灯した稀代の新星に、ブレークの理由をたっぷりと語ってもらった。

講談師
神田松之丞さん
1983年生まれ。2007年11月、三代目神田松鯉に入門。2012年、二ツ目昇進。2017年よりTBSラジオ『神田松之丞 問わず語りの松之丞』(毎週金曜21:30~22:00)がレギュラー化。2018年に第35回浅草芸能大賞新人賞、2019年に平成30年度花形演芸大賞金賞を受賞。2020年2月、真打ち昇進とともに六代目神田伯山を襲名予定。近著に『神田松之丞 講談入門』(河出書房新社)、CDに『松之丞ひとり~名演集~』(SPACE SHOWER MUSIC)がある。

落語の観客に講談はおもしろいと思わせたかった

 昨年、地方で催した独演会で、キャパシティー1100席の会場を埋めた。客足が遠のき、一時は〝消えゆく文化〟とまでいわれた講談界において、これは極めて異例のこと。しかも、半人前とされる二ツ目の若手講談師が成し遂げたのだから、さらに驚く。御年36歳、神田松之丞さんである。

「すべて結果論ですから」と謙遜するが、ここ数年の躍進は目覚ましい。100年にひとりの天才、今、最もチケットが取りにくい講談師――その芸を一目見ようと、連日寄席の前に若い観客たちが長い列を作る。

 なぜ松之丞さんの講談は、これほどまでにウケるのだろう。

 若き天才講談師の誕生のきっかけは、大学浪人生の頃から寄席へ通い詰めた観客時代にあった。張り扇を片手に、軍記物や世話物、歴史上の出来事を熱弁する講談師に魅了される一方、演芸界に閉塞感を覚えたという。

「当時は、落語と講談の間に厚い壁を感じていました。新規客の多い落語と比べて、講談は年配の常連客ばかり。新規のお客様は根づくことなく、落語のお客様が講談に流れることもありませんでした。その壁を取っ払う講談師がほしいと思ったんです。若くて生意気で、演芸に精通して、しかも落語家以上に枕(本題に入る前の話)がおもしろい。そういう講談師が現われたら、落語のお客様は講談を聞きにくるはずだ、と」

松之丞さん

講談は言葉で聞き手を物語へ導く稀有な芸能

 それだけではない。予備知識なく寄席に足を運べることも大切だと松之丞さんは語る。

「寛永15年の~などと、いきなり本題を切り出せば、新規のお客様は物語に入り込めないわけです。講談の魅力はいろいろありますが、一言でいえば共感の芸。壮大なセットを組んで物語の世界を作り上げる映画に対して、講談はたったひとりの人間の話す言葉でイメージをかき立て、物語の世界へと引き込む稀有な芸能。これを成立させるために、野暮にならないギリギリのところまで情報を補足しながら、話の筋を現代にわかりやすく噛み砕くように努めています」

 さらに高座に立つ直前までリサーチに徹する。会場の広さや男女率など、視覚的な情報を得たら、ネタ帳を睨みながら共演者の演目に耳を傾け、その日の観客がウケる話の最大公約数を導き出す。この視点は、最前線で活躍するビジネスパーソンと重なる。

「私の高座を聞きに来たお客様は、ただ座っているだけでいいんです。高座に上がって5~6秒以内に1回笑っていただけたなら、あとは話に引き込みやすい。演芸の世界では〝呼び屋〟と呼ぶんですが、講談という文化に初めて触れるお客様に対してアプローチしている講談師は、私のほかにいなかったのかもしれませんね」

本当のブレークは少し先の未来にある

 こうした試みが実を結んだのは、2015年5月。若手落語家ブームを後押しした、演芸初心者向けの落語会「渋谷らくご」で、初めて大トリを務めた。客席を置き去りにしない松之丞さんの話芸は、観客を引き込み、次は何をするのかと再び高座へ足を向かわせた。そして、ついに演芸界でブレーク。看板ラジオ番組の話が持ち上がり、その人気にさらなる拍車をかけた。2020年2月11日には、9人抜きで真打ちへ昇進するとともに、六代目神田伯山を襲名。〝名人の系譜〟と呼ばれる大名跡が44年ぶりに復活する。

 今回のブレークを松之丞さんはどのように感じているのだろう。

「腕のある先生方を、私を通して知っていただけたらうれしいです。コツコツと講談界で尽力した先生が目立つのは業界にとって大事なことですから。僕はまだ未熟ですが、現代人にわかりやすく、おもしろい話を聞かせる〝呼び屋〟であり続けることに矛盾を感じませんし、ほかに担う人がいないので。

 話題の人物賞をいただけて本当に光栄ですが、正直にいうと、僕の知名度はまだまだこれからです。私以外の講談師にまで人気を広げたいし、講談専門の寄席を建てたい。そのためには、講談師の数を現状の90人から200人に増やさないといけないんです。常に講談界単位で物事を考えてきましたから、少しでも講談に興味を持つ人が増えたらうれしいです」

松之丞さん

松之丞さんは「渋谷らくご」2014年12月の会より出演。落語家10人、講談師1人のユニット「成金」など、落語家と積極的に共演することで、落語と講談の壁に風穴を開け続けた。

取材・文/渡辺和博 写真/橘 蓮二(高座)

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