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会社の規模によって新卒採用に対する考え方が大きく異なるのはなぜ?

2019.12.18

■連載/あるあるビジネス処方箋

 この数か月間、新卒(主に大卒、大学院卒)の採用を集中的に取材して思うのが、「母集団形成」だ。通常、採用試験を受ける学生(エントリー者)の数を増やすことを意味する。

 取材で得る情報で言えば、一流大企業やメガベンチャー企業(ブランド力のある20∼30社)はプレエントリー(詳しい情報を求める意思表示のこと)が5~8万人、本エントリー(正式に試験を受けること)が5000人∼1万人。中小企業や多くのベンチャー企業はプレ、本エントリー共に数百人から数十人が多い。実際は、大半の中小企業、ベンチャー企業は新卒の採用試験を毎年続けることは様々な事情でしていない。

 私が取材を通じて強い疑問を感じるのが、主に中小、ベンチャー企業とメガベンチャー企業、中堅、大企業の双方の採用担当者の「母集団形成」の考えや認識が正反対であること。

 双方の言い分は1990年代前半の頃から真逆だと感じてきたが、ここ約5年は完全に違うことを言っているように感じる。同じ国の企業の採用担当者とは思えないのだ。背景にはおそらく、長引く好景気の影響と深刻な人手不足があるのだろうと私はみている。就職活動をするうえで、このあたりは正確に理解しておかないと会社の本音を見抜くことができずに、入社後、「裏切られた」といった思いになる人が増えるはずだ。今後、2021年度の新卒採用試験を受けようとする学生やその保護者が耳にするのが、「母集団形成」だ。ぜひ、あらかじめ心得ておいていただきたい。

それぞれの言い分は、主に次のようなものだ。

中小、ベンチャー企業

1 かねてから母集団形成はしていない。そもそも、メガベンチャー企業、中堅、大企業のように数を集めることができない。

2 たくさんの学生を集め、ふるいにかけていくのは大企業の手法であり、弊社には合わない。

3 母集団形成をしても、結局、メガベンチャー企業、大企業でも3年以内に4割近くが退職する。今の時代は雇用流動化が進んでいるので、母集団形成は大きな効果がない。

4 弊社には、母集団形成をするような態勢がない。新卒採用担当者の数が少なく、予算もわずか。大量に新卒者を採用しても、育成する仕組みがなく、管理職の育成レベルも概して低い。


メガベンチャー企業、中堅、大企業

1 母集団形成は依然として意味があり、弊社にとって価値がある。一定の期間(通常2∼3週間)で多くの学生をいわば横並びにさせて、優秀な学生を選ぶことができる。

2 大量の学生を様々な観点から選ぶことは、入社後のリスクを減らすうえで大切。リスクとは、組織人としての自覚や意識、それを裏付ける行動、チームワーク、積極性、忍耐などを含め、人格や性格、気質が弊社に合わないことなども含む。そのためには、多くの学生とたくさんの面接官(主に管理職)が合う場を設けたい。

3 多くの学生を集めても、その大半が不採用となるが、後々、中途採用試験で入社したり、商取引のパートナーの会社や団体、役所などの相手となる場合もある。双方が知り合う場としても、面接は貴重。そこにエントリーする学生の数を増やすことは、企業として当然の行為。

4 在籍する社員たちに、自社の知名度、ブランド力、社会的な影響力などを感じ取らせることができる。それが自信につながり、日々の仕事にも好影響を与える。組織全体の求心力が強くなるきっかけにもなる。


 それぞれの言い分は相当に違う。どちらがいいのか、悪いのか、その基準はないはずだが、私が見逃がしてはいけないと思うのが、中小、ベンチャー企業の①と④だ。①「そもそも、メガベンチャー企業、中堅、大企業のように数を集めることができない」を公の場で採用担当者が明確に言い切るケースはほとんどない。あるいは、④の「新卒採用担当者の数が少なく、予算もわずか。大量に新卒者を採用しても、育成する仕組みがなく、管理職の育成レベルも概して低い」を明言することもまずない。

 残念なことに、採用担当者がこれらを取材時に言い切っても、いざ原稿に盛り込もうとすると、広報担当者などがカットを求めてくるものだ。今なお、経験の浅い取材者(記者や編集者)が、「中小、ベンチャー企業は大企業に比べて(広報担当者が)フェア」などと言う時があるが、私はそこまでは言えないと思う。双方とも、会社という組織である以上、公にできないものがあるのだ。

 大切なのは、報じる側が中小企業やベンチャー企業のたとえば、「今の時代は雇用流動化が進んでいるので、母集団形成は大きな効果がない」といった言い分だけを伝えることだと思う。この主張のみでは、中小企業やベンチャー企業が抱え込む問題、つまり、「新卒者を採用しても、育成する仕組みがなく、管理職の育成レベルも概して低い」が公にされない。これを真に受けてエントリーし、入社すると、早いうちに「こんなはずじゃなかった」と悔いる人が現れる。これでは、30∼40年前の報道と何ら変わりがない。私は読者に後悔をしてほしくないからこそ、中小企業やベンチャー企業の実態には少々辛口であろうとも、事実を伝えていきたいと思っている。

文/吉田典史

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