
ここ数年で認知件数が急増しているオレオレ詐欺。今は従来の子や孫を装う「オレだよ、オレ」の典型的な手口にとどまらない。被害にあわないためにも、進化しているオレオレ詐欺の手口を知っておこう。
オレオレ詐欺は「振込」だけに限らない
オレオレ詐欺は、子や孫を装ってお金をだましとる詐欺行為、というイメージがあるが、警察庁のWebサイトによれば、「オレオレ詐欺とは親族を装うなどして電話をかけ、会社における横領金の補填金等の様々な名目で現金が至急必要であるかのように信じ込ませ、動転した被害者に指定した預貯金口座に現金を振り込ませるなどの手口による詐欺」と解説されている。
また銀行口座などへの現金の振り込みを要求せず「同僚(上司)が取りに行く」、「バイク便業者を向かわせる」などと言い、自宅まで、直接、現金を取りに来る手口もあるという。
調布警察署が警察庁のWebサイトでまとめている内容によれば、「オレオレ詐欺(家族等を装う場合)」の危険ワードは「傷害事件の示談」「交通事故の示談」「痴漢事件の示談」「妊娠中絶費用」「借金返済」で、犯人がよく使うセリフとして次のものを挙げる。
「電車(喫茶店等)の中で、会社の小切手(お金)をなくした。今日中にお金が必要だ。俺は会社を抜けられないから、会社の上司(同僚)が自宅までお金を取りに行く。」
「女性を妊娠させてしまった。示談金が必要で、誰にも相談できない。すぐにお金の用意をしてほしい。」
キャッシュカードをだまし取る手口
詐欺被害も対応している若井綜合法律事務所の若井亮弁護士によると、現金だけでなく、キャッシュカードや暗証番号をだまし取る手口もあるそうだ。
「銀行員などを装い、例えば『元号が変わるのでキャッシュカードが使えなくなります』などと言ってキャッシュカードを預かり、暗証番号も聞き出す手口があります。キャッシュカードが使えなくなる理由についてはさまざまです」
他の理由としては、例えば「あなたの口座が犯罪に使用されています」「あなたの口座が不正利用されています」などがあるようだ。
また調布警察署によれば、警察官・金融庁職員・大手デパート店員等を装いキャッシュカードを自宅まで受け取りに来る詐欺被害などが多発しているという。
例えば、
「偽造キャッシュカードで、あなたの口座からお金が下ろされています。」
「あなた名義のカードが不正に使用されています。」
「キャッシュカードを封筒に入れてください。新しいキャッシュカードと交換します。」
などと言うものだ。
電話後に自宅に押し入り「強盗」「暴力」のケースも
オレオレ詐欺は、組織的、分業制で犯行が行われるようになっていると言われており、より複雑化している。
若井弁護士は、オレオレ詐欺や振り込め詐欺などの典型例の認知が広がったことで、典型例以外の手口については気付けない可能性が高いと注意喚起する。
また、オレオレ詐欺は今後、凶悪化する可能性もあるといわれている。
2019年1月、息子になりすまして「病気になった」と語る典型的なオレオレ詐欺の電話が、都内在住の80代、90代の高齢夫婦のもとにかかってきた。しかし、「2千万円なら用意できる」と聞いた後、2日後に3人組の強盗が高齢夫婦の自宅に押し入り、数千万円と貴金属類を奪った事件が起きた。高齢夫婦の夫のほうは顔面を殴られもしたという。
これからは「振り込め」ではなく押し入って奪う、暴力に走るという方向にも注意が必要といわれている。
【取材協力】
若井綜合法律事務所
弁護士 若井 亮さん
池袋と新橋に事務所を構え、詐欺被害への対応、脅迫や恐喝などの不当要求への対応を中心に、一般民事事件から刑事事件まで幅広く扱う弁護士。持ち味は格闘技で培ったタフネスを駆使した弁護。
https://wakailaw.com/
【参照】
埼玉県警察「キャッシュカードをだまし取る手口に注意!」
https://www.police.pref.saitama.lg.jp/c0010/kurashi/furikome-kyassyuka-do.html
警察庁 調布警察署「詐欺被害に遭わないために」
https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/smph/about_mpd/shokai/ichiran/kankatsu/chofu/about_ps/sagi_boshi.html
日本経済新聞「オレオレ詐欺が凶悪化? 息子装う電話、2日後に強盗」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40169460Y9A110C1CC0000/
取材・文/石原亜香利