ライオンの環境配慮とユーザビリティへの積極的な試み。プラスチックの資源循環「4R」と使いやすさを追求した容器の仕組みとは?
2019.12.08
■連載/阿部純子のトレンド探検隊
環境配慮の取組み
ライオンでは、新環境目標「LION Eco Challenge 2050」の一環として、プラスチックの高度な資源循環を目指したReduce、Reuse、Recycle、Renewable=4Rに取り組んでいる。1990年代からプラスチック削減に取り組んでいる同社では、主要8種の対象品目(衣料用液体洗剤、柔軟仕上げ剤、漂白剤、シャンプー&リンス、ハンドソープ、台所用洗剤、住居用洗剤)で、1995年に比べ2017年は41%の削減に成功している。
〇Reduce
4R の中でも最も重要視しているアプローチで、製品の濃縮化で容器を小さく、少なくすることでプラスチックの使用量を削減していく。濃縮製品の出荷比率は全体の約5割で、直近の10年では出荷が1.6倍になっている。
衣料用洗剤「トップ」の変遷で見てみると、洗濯1回当たりの使用量は、1992年の「ハイトップ」40ml、2006年「リキッドトップ」20ml、2010年「NANOX」10mlと使用量が4分の1になり容器も小型化。洗濯10回あたりの樹脂量も1992年は26.6g、2006年は16.4g、2010年は9.2gに。
〇Reuse
つめかえ製品を増やして容器を再利用する。「キレイキレイ ハンドソープ」は、つめかえの方が本体使用に比べて80%以上プラスチック使用が少なく、つめかえを取り揃えることで、プラスチック使用量を削減する。
つめかえにはパウチタイプとボトルタイプがあり、それぞれ環境に対応した容器を開発。
パウチタイプは12袋分が本体1本分とプラスチック使用量が少なく、バリア性に優れ、廃棄時もコンパクトに捨てられる。
ボトルタイプは保型性がありつめかえがしやすい。本体73g×5本では計365gだが、本体1本73g+4回分のつめかえボトル39gは計112gと、つめかえることで69%のプラスチック使用量を削減できる。
つめかえボトルの表と裏にはへこみ防止パネルが付いており、これによりボトルの強度がアップ、ボトルの樹脂使用量の減少にもつながった。また、側面や肩の部分に折り畳みリブをつけることで、潰して捨てられるといった環境性向上にも配慮している。
2019年2月までプラスチック、紙、アルミを使ったつめかえ紙パックを販売していたが、将来の再生材活用に向けて、3月からボトル材質をPET樹脂の単一素材に変更。廃棄の際に分別する必要がなく、日用品のPETボトルリサイクル可能な制度が実現できれば、つめかえボトルでもリサイクルを目指していく。
〇Recycle
容器の再資源化として再生材料を積極的に使う。台所用洗剤は2000年から再生PET樹脂を配合、衣料用粉末洗剤の容器には古紙パルプを使っている。台所洗剤ボトル、ハブラシのブリスター(透明のパッケージ)は、飲料ペットボトルからの再生PET樹脂を使用。石油由来100%のプラスチックと比べると、リサイクル(80%配合)では、若干色がくすんで見える。
〇Renewable
世界的な潮流となっているサステナブルの観点から、再生可能な原料を使う。石油以外の原料として、サトウキビから砂糖を作る時に残る「廃糖蜜」を原材料の一部に使う、植物由来のプラスチックを「NANOX」のパウチ包装材に活用。
また、未使用素材と同等の物性を示す材料に再生する、革新的な技術開発を旭化成と共同で行い、業界を超えた環境対応にも着手している。
CAEは試作品などを用いた実験の代わりに、コンピュータ上で仮想実験を行う技術。自動車、建築でも使われているが、ライオンでは1979年から容器設計に活用している。容器設計は、環境への配慮、保管条件や流通過程による劣化防止、店頭の見映え、本体の使用、つめかえまでの使いやすさ、廃棄を考慮して作られており、それらの条件から材質や仕様を決めている。こうした複合的な設計要素に、複合的な手段、材料で対応しなくてはならず、成形品を使う従来の開発では、コストや時間がかかるため保守的な設計になっていた。
CAEでは様々なケースの実験ができ、多くの条件で検討できることでより明確な設計根拠を持ち得るため、挑戦的な設計が可能になった。「トップ ハレタ!」ノズルキャップ、「キレイキレイ ハンドソープ」のつめかえ容器の設計にCAEを取り入れている。
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