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入社4年目の本音「家での看取りは素敵なことですが、思いだけで成し遂げることはできません」やまと診療所・中川裕美さん

2019.12.10

あなたの知らない若手社員のホンネ~やまと診療所PA 中川裕美さん(26・入社4年目)

前編はこちら

様々な若手社員を紹介するこの企画、今回はPA(Physiccian Assistant・診療アシスタント)という仕事を紹介。“末期の在宅の患者に寄り添い、支える”、そんなPAという仕事に強く惹かれた女性の話である。PAの職に就くのに何の資格もいらないという点も、彼女にとって興味深かった。

シリーズ第60回 やまと診療所PA 中川裕美さん(26・入社4年目)。板橋区の「やまと診療所」(安井佑院長)の理念は、「自宅で自分らしく死ねる、そういう世の中を作る」。現在、常勤非常勤合わせ医師は約30名、PAは約30人。担当する患者数は約750名。

PAは医師の在宅医療に同行し、患者や家族とのコミュニケーションを通して、一緒に考え、寄り添い、患者がより安定して生活できる環境作りを手助けする。

担当の患者の最期をどこで迎えるか。家族に寄り添いきれなかったことが、身内の死を前に家族をパニックにしてしまったと、PAとしての責任を引きずる中川さんだが……。

果たしてそれでいいのだろうか……

「こんにちは、やまとです」と、患者さんのお宅を訪問すると、PAはケアマネージャー(ケアマネ)への診察レポートを送信するため、患者さんと医師との会話を一字一句、iPadに打ち込んで。医師の診察が一段落すると、「本当に大丈夫ですか」と、私たちPAは積極的に語りかけます。医師から処方された薬の説明が、わかりにくいという訴えには補足の説明をしたり、患者さんと家族のお話をじっくりとお聞きします。

末期癌の70代の男性の患者さんは、病院嫌いでした。奥さんも「病院では辛い思いをしたので、家で看取りたい」と。私たちもそのつもりでしたが、奥さんがインフルエンザにかかってしまい、高齢でもあり自宅介護が難しくなってしまった。近所に住む娘さんは子供が小さくて、付ききりの介護は難しい。

患者さんの意思が最優先ですが、家族の考えも大事です。私の口から「本人は入院したくないと言っています。頑張りましょう」とは言えない。

「お母さんが体調を崩しているから、少しだけ入院してくれない?」と、患者さんに告げたのは娘さんでした。本人はどこまで理解したのか、意外とすんなりホスピスへの入院を受け入れて。

このままではホスピスでの看取りになる、果たしてそれでいいのだろうか……そんな思いが私の中にはありました。

入院して数日後、電話で娘さんに様子を聞いたのですが、「帰りたいと言いはじめています」と。「いつでもお力になります。おっしゃってください」と伝えて。その数日後、家に帰すなら今が最後の機会だと、ホスピスの医師に告げられた、そんな連絡が娘さんから入りました。

「お母さんの体調は万全ではないけれど……」
「そこはサービスで補えるので」
「お父さんを家に帰したい」
「ケアマネさんには私が対応します。家に帰りましょう」

病院とのやり取りはスタッフの力を借り、ケアマネや訪問看護師との連絡は私が動いて、患者さんをホスピスから自宅に戻すことができたんです。

それから1週間ほどした日曜日の夕方でした。出勤していた私が診療所の電話を取ると、「あー、中川さん!」自宅に帰った患者さんの娘さんからの電話でした。私は娘さんの声を聞いた瞬間、患者さんの死を悟りました。

亡くなったという報告の後、娘さんの言葉に私は思わず電話口で泣いてしまった。

「父の死を直接、伝えられて良かった」

私は以前担当した患者さんで、病院か自宅で看取るか話し合いができず、患者さんの死に直面してパニックに陥った家族のことが、頭から離れなかった。そんな私にとって日曜日の夕方、診療所の電話口で娘さんから聞いた言葉、

「中川さんに父の死を直接、伝えられてよかった」

それは私を認めてくれた思いがこもっている気がして、PAとして役に立てたかなと実感がこみ上げてきたんです。

“自宅で自分らしく死ねる。そういう世の中を作る”それがやまと診療所の大前提ですが、考えさせられる時もあります。

その80代の認知症の女性の患者さんは、新宿区内で一人暮らしをしていて、府中市内に住む息子さんが、週に3〜4日通って介護をしていました。医師は受け付けない患者さんで、最初の往診は息子さんの友だちという紹介で、座卓に向かい合いお茶菓子を囲みながらの診察でした。「警察に突き出してやるぅ!!」と、いきなり怒り出したのは最初の日だけで、徐々に体温を計らせてくれたり、痛いという膝を見せてくれたり。

患者さんは知らない人を警戒するし、息子さんも在宅介護でいきたいと。それを尊重したいと思っていたのですがその後、私はその患者さんの担当を離れまして。半年ほどして息子さんから、入居先の施設でお母さんが亡くなったと、医師にメールが入りました。私は気になり息子さんに電話を入れたのです。

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