空飛ぶクルマや完全自動運転車など、クルマの進化の先には多様な未来図が描かれている。日産自動車の宮澤秀右さんは、UX(ユーザーエクスペリエンス)デザインで、クルマが進むべきロードマップを切り拓こうとしている。
「体験できることの価値でクルマを選ぶ時代がやってくる」
宮澤氏は2015年に日産自動車に転職。それまでソニーモバイルコミュニケーションズで、主にIoTプロダクトの商品開発に携わっていた。
「IoTが可能にする新たな体験を考えていたら、家やオフィスに比べ、自動車の中のデジタル体験はユーザーの期待値と差がありました。だからこそ、まだまだユーザー体験を変えていける可能性があると感じて日産自動車に入社しました」
ハードウェアとしてのクルマの完成度は確かにすばらしいが、車内での体験はまだ満足できるものでない。通信機(TCU)を搭載し、常時クラウドとつながるコネクテッドカーですら、ユーザーへの価値提供を100%発揮できていない。
「コネクテッドカーは、その技術の可能性に関して言えば、もっと提供できる体験があるはず。これがもし携帯電話であったのなら、まだ初期のモノクロ液晶段階の様な状況かもしれません」
日産には『リーフ』と『スカイライン』のコネクテッドカーがあり、新しいUXデザインの導入により、ユーザー体験は向上している。
「出発前に目的地をナビに設定できる、『スカイライン』のドアtoドアナビや、『リーフ』のエアコンのリモート制御、バッテリー残量がひと目でわかる機能などが好評です。この様にクルマがネットにつながることでユーザーが体験できることは変化するため、適切なデザインプロセスによりその体験の質をさらに高めていくことが必要です」
また、サービスだけではなく、器となるクルマ自体を製造していることが日産の強みだ。
「目的地までのルートや距離はわかっても、バッテリー残量やガソリン残量から、あとどれだけの距離を走れるかなどは、今はメーカーでないとわかりません。だからこそ、我々メーカーこそが、ユーザーにとってより価値のある体験を提供していく必要があるのです」
性能でクルマの差別化が難しくなる今後、デザインによるUXの差が違いになるのだという。
「近い将来、スマホでできることはすべてクルマでもできるようになるでしょう。その時に、クルマを使うことでどういう体験が提供できるか、それを今後も追求し続けたいと思っています」
NissanConnect サービス
スカイラインの「ドアtoドアナビ」は、走行時はカーナビでクルマを降りた後の徒歩移動時はスマホで道案内を継続する。1度体験すると便利さに驚く。
日産自動車 コネクティドカー&サービス技術開発本部
ソフトウェア&ユーザーエクスペリエンス開発部 部長 宮澤秀右さん
2016年発足のユーザーエクスペリエンス開発部の部長に就任。主にアプリケーションとVPA(Virtual Personal Assistant)に携わる。
リーフではエアコンの車外からのリモートコントロールが可能。クルマの充電状況、バッテリー残量、走行可能距離、利用した電気の費用も確認できる。
取材・文/安藤政弘
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