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テクニクスのターンテーブル「SL-1000R」で聴く新譜「Direct Cutting at King Sekiguchidai Studio」の奥深さ

2019.12.01

45回転で11分のダイレクトカッティング

ここで45回転の『Direct Cutting at King Sekiguchidai Studio』のA面を再生する。プレーヤーは『SL-1000R』でカートリッジとフォノイコライザーアンプはフェーズメーション製が使われている。A面11分という時間は、45回転でのカッティングから計算された時間で、余計な工程を省くために1曲目と2曲目の間に入れる曲間のミゾをなくして、メドレーとして楽曲が収録されている。B面の最後では録音可能な時間が1分を切ってしまい、しかも低音に弱い内周部に入ったためエンジニアたちをヤキモキさせたが、最終的には無事録音できたという。

点音源とリニアフェーズ思想から生まれた『SB-R1』の持つ空間再生能力が発揮され、スピーカーの存在が消え去り、そこに音楽だけが演奏された。目を閉じればこれがアナログ音源とは思えないほど、音場感に優れ、情報量が多く、ボーカルのニュアンスが伝わってくる。低域はタイトでしっかりドライブされていた。

A面はヴィブラホンの高域、B面はダブルベースの低域を楽しむ

サウンドプロデューサーの高田さんが井筒さんと打ち合わせをした時に、スパルタカス愛のテーマで頭に浮かんだのはヴィブラホンの音だったという。そこで前回の「Laidback2018」のレコーディングに参加していた大久保貴之さんに依頼してヴィブラホンを追加した。「ヴィブラホンとピアノのキラッとした高音の世界観を作り上げるためベースはなしにしました」と井筒さん。

高田さんによれば、録音機材はシンプルで、それぞれのマイクにヘッドアンプを使いSSLのコンソール卓に入力されている。コンプレッサーは真空管式で、各楽器のピークを少しだけ抑えるためだけに使われたという。ここの出力をノイマンのカッティングマシンに送り込んでいる。念のためにDSD11.2MHzとPCM192kHz/32bitでデジタルデータも同時に収録された。ボーカルはテレフンケンのヴィンテージマイク『U47』を使用。このマイクを使ったことで声が一発で出てきたという。普段はマイクにうるさい井筒さんも、音を聴いてすぐに納得したそうだ。

ここでピアニストの藤澤由二さんがサプライズで登場。「藤澤さんは一音一音を大切に、空間表現を大切に弾かれていると感じました」と高田さん。そのためマイクセッティングは通常のピアノを録る位置よりも距離を離しているという。ONで録ると空間の深さがでない、少しマイクを離すと空間が出る。キング関口スタジオは天井が高く非常に音が素直だったので、このセッティングでピアノの音を捕まえたと高田さんは語る。

「私は井筒加奈江さんと共演するときは、余計な事はせずに、空間を作り込むことに専念しています。今回はエンジニアや井筒さんのプレッシャーを感じることなく、気持ちよく演奏できて幸せな時間を過ごせました」と藤澤さんはコメントした。

ボーカルと楽器に適したマイクを選び音楽の深さを捉えた

ピアノに立てられたマイクはややOFF気味になっている

ヴィブラホンのマイクは逆相成分が入りやすいため高めにセットされた

緊張感を強いられたダイレクトカッティング

カッティングエンジニアの上田佳子さんが登場。カッティングルームに関する説明をおこなった。まず、目をひくのが、モニタースピーカーに使われている大型フロア型のタンノイ『GRFメモリー』である。これは1980年代から使われているものだという。コンソールはノイマン『SP75』を使い左側のケーブルはスタジオから来ている配線となる。右に見えるモニターがコミュニケーションシステムである。

ラッカー盤はサ行の子音に弱いので、リミッターを掛けることが多いが、今回は音質優先のために、あえてリミッターを外していると上田さんは語る。カッティングマシンのノイマン『VMS-70』には顕微鏡が装備されており、これを使って掘られたミゾをチェックするという。ラッカー盤はとてもキズが付きやすく、そのための予備が必要、さらに念のためにということで、3回のダイレクトカッティングがおこなわれ、3回のOKテイクがエンジニアとミュージシャンを苦しめる結果となった。

こうして、テイク1、テイク2、テイク3が完成したのだが、当然、使えるのは1つだけで、今回はテイク1が使われたという。2と3がこのままお蔵入りするのは惜しいので、ハイレゾ音源でもいいから世の中に出して欲しいと切に願うのであった。

カッティングルームにはタンノイの大型スピーカーがあった

左がカッティングマシン用の専用アンプで8Ω負荷換算で300Wの出力を出せる

全くテイストの異なるB面はダブルベースを楽しむ

続いて再生するB面にはカナリア(井上陽水)と2、500マイル(Hedy West/忌野清志郎 日本語詞) の2曲が入っている。こちらはゴリゴリした低音が特徴で、ベースの低域がやや足りないということで、リハーサルの時に色々工夫していたら、井筒さんから「ダブルベースにしましょうという」という提案があった。この案が採用されて、コントラバスに磯部英貴氏が加わり、ピアノの藤澤さんがうまくまとめそうだ。2曲目の最後にはスゴイ低音が入っているという。

最後に「チーム一丸となって録音したのは、今回が初めて、もうやりたくないと思うし、またやりたいとも思えるレコーディングでした。このレコードにはチームの音が入っています」と井筒加奈江さんが締めくくった。

レコードを再生したのはハイエンドモデルのTechnics『SL-1000R』

写真・文/ゴン川野

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