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テクニクスのターンテーブル「SL-1000R」で聴く新譜「Direct Cutting at King Sekiguchidai Studio」の奥深さ

2019.12.01

■連載/ゴン川野のPCAudioLab

40年ぶりに録音されたダイレクトカッティングレコードを再生

テクニクスは、世界的に普及しているダイレクトドライブ方式のターンテーブルを1970年に製品化したパナソニックのオーディオブランドである。昨今のアナログブームに応えるためSLシリーズのアナログプレーヤーを復活させ、新たにコアレス・ダイレクトドライブ・モーターを採用。DD方式の弱点であるコギングと呼ばれる回転ムラを解消して、正確な回転と素早い立ち上がりを実現している。

今回はリファレンスクラスのダイレクトドライブターンテーブルシステム『SL-1000R』にスピーカー『SB-R1』などのR1シリーズを使ったハイエンドシステムを使って、ダイレクトカッティングで40年ぶりに録音された新譜『Direct Cutting at King Sekiguchidai Studio』を聴いた。

テクニクスはレコーディングに関わったアーティストとエンジニアを交えてのトークショーを「東京インターナショナルオーディオショウ」のブースにて開催。メンバーは、ボーカルの井筒香奈江さん、サプライズ参加でピアニストの藤澤由二さん、サウンドプロデューサー&レコーディングエンジニアの高田英男さん、カッティングエンジニアの上田佳子さん、テクニカルエンジニアの高橋邦明さんと豪華な顔ぶれが集まった。

レコーディングエンジニアの高田英男さんが録音秘話を披露

井筒香奈江さんの隣にはピアニストの藤澤由二さんがサプライズで登場

現代によみがえったダイレクトカッティングとは

レコードのアルバムタイトルが『Direct Cutting at King Sekiguchidai Studio』という分かりやすいものになった理由を井筒さんは、「このレコードはダイレクトカッティングで録音するという企画ありきだったので、私のレコードというより、チーム全員のものという意味合いも込めて、この名前を付けさせてもらいました」と語る。キング関口台スタジオはロンドンのアビーロードスタジオと合わせて、世界で2個所しかないダイレクトカッティングが出来るスタジオであるという。

それではダイレクトカッティングはどんな録音方法なのか。テクニカルエンジニアの高橋邦明さんが説明した。

「通常の録音はマイクロホンから調整卓にバラで音が入ります。これをA/D変換してHDDの中にデジタル録音します。調整卓に音を戻してステレオミックス作業をおこないます。次にマスタリングを行います。これは最終的な製品になるときの適切な音質、音量、曲間などを整えて作品として完成させるための大切な工程となります」

つまりアナログレコードを制作する場合も、録音の時点で音楽信号はデジタル化されているわけだ。

「デジタルファイルからD/A変換したアナログ信号を使って、カッティングマシンを動かしてラッカー盤というものを作ります」

ダイレクトカッティングではA/D、D/A変換を省ける。

「ダイレクトカッティングではマイクで録音した音を調整卓でミキシングして音量も最適化して、そのままカッティングマシンに入れてプロダクションマスターを作成します」

ダイレクトカッティングは一発録りでリスクが高い

ダイレクトカッティングは、シンプルな方法で最高の音質が得られるが、失敗すれば全て録り直しになるためリスクも高い。

「この方法は演奏がうまくいっていても、マイクからノイズが出たり、カッティングマシンに不具合があっても演奏を止めて、最初から録り直しになります。また1曲目が成功しても、2曲目で失敗すれば、最初から録り直しです。非常にリスクが高い方法ですが、音質最優先ということで今回、採用されました」

40〜50人収納できる大きなスタジオでダイレクトカッティングが出来るのは世界に2個所しかない。

「大編成のクラシックもダイレクトカッティングできるようなスタジオはキング関口台スタジオの第1スタジオと、ロンドンのアビーロードスタジオしかありません。関口台スタジオではノイマン『VMS-70』というカッティングマシンを使います。こちらはモーターをテクニクスの業務用DDモーター『SP-02』に交換してあります。カッターヘッドはノイマンSX-74でルビー・カッター針を使っています」

カッティングマシンは以前使っていたものを復活させて使用

進化したダイレクトカッティング

高橋さんは現代と従来のダイレクトカッティングの違いについても言及した。

「まず、違うのは電源事情ですね。今回のレコーディングがおこなわれた関口スタジオは録音用に6600Vのオーディオ専用電源を使っています。これを元に各部屋に100V、115V、200V、230Vなどを供給しています」

以前は問題視されていなかったオーディオ用の電源が、現在はスタジオ全体で管理されているのだ。

「それから調整卓も違います。周波数特性が向上して、ダイナミックレンジも非常に広いです。あとはコミュニケーションシステムです。映像と音声でエンジニアとミュージシャンが会話できます。通常のレコーディングと違うのは、カッティングエンジニアが録音開始のキューを出すことです。通常はディレクターやレコーディングエンジニアが出すのですが、今回はラッカー盤の上に針をおろさないと録音が始まらないため、カッティングエンジニアのタイミングで演奏を開始しています」

レコードプレスの方法でも音質が違う!

実はレコードプレスには2種類の方法がある。スタンパープレスとダイレクト・マスタースタンパープレスである。これはレコードの製造過程に関することで、通常のプレスの場合は、マスターから第1マザーを作成、ここからスタンパーを作って、スタンパーを使ってレコードをプレスする。マザーとスタンパーを複数用意することで大量生産が可能になる。スタンパーは消耗品で、使い潰したら、マザーから新たなスタンパーを作成する。

今回は最初に作ったマスターをスタンパーとして使うマスタースタンパープレスを採用した。この方法は高域特性に優れ、ノイズが少ない高音質なレコードを作成できる反面、マスタースタンパーの寿命が尽きると、もうプレスできないため大量生産には向いていない。「このレコードは限定盤になるかもしれません」と高橋さんもコメントしている。

レコードのプレスには2種類の方法がある

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