
〝超新星〟のガジェットが次々に登場している背景には、星屑のように生まれては消えていった過去の製品の存在が大きい。特に、現在のガジェットに影響を与えたエポックメイキングな製品や、印象深いプロダクトについて、3人の識者と振り返ってみよう。
〈ネットワーク家電を語る!〉ライター 小口 覺さん(右)
ITや家電を中心にモノとビジネスの在り方をウオッチし続ける。雑誌やWebメディアなどで活躍。
〈スマホを語る!〉ジャーナリスト 法林岳之さん(中)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマホをはじめとするデジタル関連製品の記事を多数執筆する。
〈ウエアラブルを語る!〉テックライター 太田百合子さん(左)
スマホやPCに加えて、Webのサービスやウエアラブル製品などに関しても造詣が深い。
――2000年以降に登場した最も身近で革新的なプロダクトとしては、2008年に日本へ上陸した『iPhone』の存在が大きいでしょうか。
法林 確かにそうですが、日本では2006年に登場した『Willcom W-ZERO 3』を抜きに、今のスマホは語れません。同モデルによって〝一般の人がスマホに触る時代〟に、入った感じがします。海外でマイクロソフトが開発しようと進められていたデバイスにも大きな影響を与えましたし、結果的にアップルが『iPhone』を生み出す後押しにもなったともいわれています。
――『iPhone』をはじめとするスマホが2000年代後半から徐々に普及していくとともに、オンラインにつながる〝ネットワーク家電〟も増えていったように思います。
小口 IoT家電が広まっていったのは、スマホがリモコンの役割を果たしたのが大きいですよ。おそらくIoT家電としてかなり初期に登場した、スマホアプリで調光できるフィリップス『Hue』は、印象はよかったけど「高いし誰が買うの?」みたいな部分があったと思うんです。スマホが広まった今は、どんな白物家電もIoT化が進み「対応しないでどうする?」って勢いですけど。
――スマホと深い関係性でいえば、スマートウオッチをはじめとするウエアラブル製品も同様ですよね。
太田 やっぱり『Apple Watch』の存在が大きかったですね。特に『Apple Watch』が今でも抜きん出ているのは決済機能でしょう。ソニーの『wena wrist』シリーズも決済機能を備えているものの、大人の事情でSuicaには非対応……。やはりSuicaが使えないと、スマートウオッチに関してはなかなか厳しいかと。ただ、最近では搭載する機能を最低限に割り切って、逆にバッテリー時間を長くしているモデルもあります。『Apple Watch』とは異なる路線のものも着実に増えてきました。
――スマートウオッチが多様化し、存在感を増すことで、スマホはどう変わってきているんでしょうか。
法林 ウエアラブル製品が出てきたからこそ、スマホの画面サイズと持ちやすさの問題が〝ひとつ飛び越せる〟のかなと。時計側で確認できる情報はウエアラブルですませて、スマホ側は情報量を増やすために、大画面化が進んでいるんだと思います。けれど、大きいだけでは持ち運びにくいので『Galaxy Fold』のように折りたためたり、2画面だったりという端末が登場しているんです。中でも、一番気になるのは、2画面のマイクロソフト『Surface Duo』。〝曲げるために作った〟感の強い『Galaxy Fold』の場合は23万円ですが、2画面だったら15万円くらいで作れるでしょうと。そういう点でも個人的に期待しています。
小口 いかに安くなるかも普及する大きなポイントですからね。現にネットワーク家電もシーリングライトやエアコンがすごく安くなりました。ロボット掃除機も10万円くらいの性能なのに、7万円を下回るケースもあります。消費者はIoTの機能を使いたいから買うのではなく、買った製品に機能が付いているから使うんです。それが自然な流れかと。
――普及が進むスマートスピーカーも手の届きやすい価格が多いです。
法林 スマートスピーカーによって音楽配信が一気に伸びたといわれています。スマートスピーカーが〝トリガー〟になったのでしょう。
太田 我が家ではキッチンでディスプレイ付きのスマートスピーカーを使っています。料理の時、レシピサイトのページを送るのに、音声だけですむのはすごく便利です。
――スマートスピーカーが広まってきて、子供が当たり前のように使っていることをふまえると、これからのプロダクトは音声操作がひとつ大きなカギになりそうですね。
エポックメイキングなプロダクト年表
●スマホ、ケータイ、関連サービス ▲ウエアラブル、PC、インターネット関係
■ネットワーク家電、テレビ、オーディオそのほか ◆クルマ
2000年
●auが始動
▲『Windows 2000』がリリース
▲「本」のストアとして日本語版のAmazonが開始
2001年
●「FOMA」サービスがスタート
●日本通信がMVNO事業を開始
▲『Windows XP』がリリース
■液晶テレビ『アクオス』が発売
■『iPod』がリリース
印象深いプロダクト『WRISTOMO』
「ウエアラブル製品を身につけた〝原体験〟です」
NTTドコモが1998年長野オリンピックでテストした腕時計型のPHS端末。「スパイグッズみたいなものへの憧れは昔から強かったですね(笑)」
2002年
●写真メールサービスがスタート
●着うたサービスがスタート
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