人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

東と西を結ぶシルクロードの要衝都市・トビリシに生まれる“新しいホスピタリティ”

2019.11.26

日本にいるとわからないかもしれないが、ブレグジットや移民問題など、閉塞感が漂う欧州連合(EU)を横目に、「ニューイースト」と呼ばれる都市の台頭に注目が集まっている。中でも近年、最も可能性に満ちた都市と言われるのがジョージアの首都、トビリシだ。西と東をつなぐシルクロードの要衝、トビリシの今をベルリン在住のメディア美学者・武邑光裕氏が全3回に渡ってレポートしていく。

第1回 現代のボヘミアンはトビリシに向かう
第2回 BoHo:ボヘミアン・ホスピタリティ

ジョージアの首都トビリシが注目される理由③
~ホスピタリティの再創造~

ソビエト崩壊後のジョージア

「未来は今、この瞬間にある」という考えに従えば、トビリシが10年後のヨーロッパに与える影響を垣間見ることができる。トビリシは20世紀後半に発展した都市以上に、今、最も可能性に満ちた都市だからである。

トビリシのランドマークである「平和の橋」

1991年、エストニア、ラトビア、リトアニアのバルト三国のソビエト連邦からの分離独立、同年12月のソビエト連邦の崩壊以降、1991年12月のソビエト共産党解散を受けた全ての連邦構成共和国が主権国家として独立した。ソ連崩壊後に独立した連邦構成共和国は、アルメニア、ジョージア、ウズベキスタンなど15カ国に及んだ。

西ヨーロッパやソ連、中東の建築が混交するジョージア様式の街並み

ジョージアは一貫して隣国ロシアと距離を置き、欧米との関係強化を打ち出してきた。この路線は2004年に成立したサアカシュヴィリ政権下で一層高まり、2008年からはじまる北大西洋条約機構(NATO)と欧州連合(EU)への加盟推進、ロシア語からジョージア語への移行が強化され、英語教育の義務化が徹底された。トビリシの大半の若者は美しい英語を話し、それだけでも世界との連携や協調を望む国の姿勢が現れている。

同じ路線であるウクライナ、ポーランド、バルト三国なども、ジョージアと同じ反ロシア路線を歩んでいる。一方、ロシアにとってジョージアはカスピ海産原油パイプラインの存在や、中央アジアの原油を確保する上で密接な関わりがあり、南の玄関口である黒海へ連なる要衝であり、古来よりシルクロードの東西の交差点に位置する重要な国家と位置づけている。後述するが、ロシアにとってジョージアは特別な国なのだ。

ホスピタリティと「もてなし」

ジョージアはホスピタリティの国だと言われる。ホスピタリティとは、ゲストとホストの関係であり、ホストは訪問者、または見知らぬ人への接待や親善でゲストを迎える。フランスの啓蒙思想家ディドロとダランベールらによって18世紀に編纂された『百科全書』に、「ホスピタリティ」という項目を執筆したシュヴァリエ・ド・ジョクールは、ホスピタリティ(日本で言う「もてなし」)を、「人類の絆を通して宇宙全体を気づかう偉大な魂の美徳」と説明した。

同時に、商業精神の発達と為替手形によって、古代に存在した無償の美しいホスピタリティの絆は失われ、個人間の慈悲の絆を壊したと指摘した。それは計り知れない商品や贅沢を生み、旅行という商業に変化した。裕福な個人は、訪問する国のすべてを享受し、彼らが支払う費用に比例して、提供される丁寧な歓迎を自然だと感じるようになったと、彼は悲哀を込めて結んでいる。

目抜き通りを一歩奥に入れば、都会のオアシスのようなカフェがいたるところにある。

ジョージア産の絹のスカーフは人気のお土産物である。

現代のホスピタリティは、観光やビジネスを支える重要な経済活動であり、私たちが人々に接する無償の慈善や方法までも表現する。それはホテルやレストラン、店舗でゲストを迎えるサービスの本質であり、商品やサービスの販売量を増加させる(または減少させてしまう)重要な役割を意味しているため、すべてのビジネスがホスピタリティを習得する必要があるというのが前提となる。

さらに踏み込んでみれば、「もてなし」自体には「〇〇を以て(もって)為す(成す)」の意味があり、「茶の湯を以て、自らを成す」という場合、ゲストを「茶」によって歓待することは、ホストの茶時全般への成熟が必須であり、ホストには自らの不断の成長が求められたのである。ジョージアのホスピタリティの主役は、時代が変わってもシルクロードの旅人を「もてなし」で迎えた市民でありその伝統である。

コーカサス・ホスピタリティ

『エデンの東』や『怒りの葡萄』で知られる米国の作家ジョン・スタインベックが「ジョージアをひとことで語るとすれば、それはホスピタリティである」と記したのは非常に興味深い。スタインベックにとって、ジョージアのホスピタリティとは何を意味していたのか? 推測でしかないが、これこそジョージアの伝統文化や食の世界にも通じ、現在のジョージアとその首都トビリシのさまざまな外交政策や人的・経済的な自由往来政策にも反映されている。

400年前の図案を復興して作られたジョージアのテーブルクロス。ボヘミアン・シックのマストアイテムである。写真©Blue Table. https://bluetabla.com/

ホスピタリティは、ラテン語から派生し「ホスト」、「ゲスト」、または「見知らぬ人」を意味する。これは、異邦人も意味しており、ラテン語で“Hospital”は、ゲスト・ルーム、ゲストの宿泊、宿を意味していた。英語の単語hostは、ホスピタリティ、ホスピス、ホステル、ホテルの語源である。

「もてなし」には見知らぬ人を歓迎し、食べ物、避難所、安全を無償で提供することが含まれていた。古代から西と東が交差するシルクロードの要所であったジョージアには、多くの交易商人や長旅で傷ついた旅行者が往来していた。一般的に、ホスピタリティの意味は、旅行中に見知らぬ人を助け、癒やし、保護する義務があるという信念に基づいてきた。

ドーム型の硫黄温泉公衆浴場は「アバノトウバニ」(Abanotubani)と呼ばれている。

浴場には日本の銭湯のように多人数用と一人から数人で貸し切りができるプライベート浴場がある。

トビリシの旧市街地に、レンガ作りのドーム型硫黄温泉公衆浴場「アバノトウバニ」(Abanotubani)がある。ローマ風呂からトルコの蒸し風呂「ハマム」を経て、グルジアには17世紀ごろから浴場文化が栄えた。温泉の湯加減は絶妙で、垢すりとマッサージを受ければ、トビリシのホスピタリティを実感できる。ここは、疲れ、傷ついた旅人を癒やしてくれる場所だった。

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2019年11月15日 発売

DIME最新号の特別付録は「スタンド一体型簡易スマホジンバル」!今年から5年先のトレンドまで丸わかり!

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 10401024号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。