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ジョージアの首都トビリシから生まれる新たなボヘミアン・ライフスタイル

2019.11.25

日本にいるとわからないかもしれないが、ブレグジットや移民問題など、閉塞感が漂う欧州連合(EU)を横目に、「ニューイースト」と呼ばれる都市の台頭に注目が集まっている。中でも近年、最も可能性に満ちた都市と言われるのがジョージアの首都、トビリシだ。西と東をつなぐシルクロードの要衝、トビリシの今をベルリン在住のメディア美学者・武邑光裕氏が全3回に渡ってレポートしていく。

第1回 現代のボヘミアンはトビリシに向かう

ジョージアの首都トビリシが注目される理由②
~BoHo:ボヘミアン・ホスピタリティ~

BoHoとノマド文化

2015年、バレンシアガ(BALENCIAGA)のクリエィティブ・ディレクターに就任したのが、ジョージア出身のデザイナー、デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)である。彼の活躍に続くかのように、トビリシでは若手のファッション・デザイナーが多数成功を収めており、トビリシは先進のファッション都市でもある。

かつてのピッピーやボヘミアンのライフスタイルを現代社会でいかに無理なく実現できるか? かつての「ウッドストック」は、今や砂漠の大規模な社交イベント「バーニングマン」に姿を変えている。もともと、窮屈な実社会を少しだけ逸脱するというのが、ボヘミアン・ホームレス(BoHo)というファッション・トレンドである。このBoHoが、エレガントで高貴なBoHo chic (BoHoシック)へと向かう牽引役となったのが、英国の女優シエナ・ミラーとモデルのケイト・モスたちのライフスタイル提案だった。この流れが、ミレニアム世代からZ世代の女性たちに支持されてきた。このトレンドの本質を理解するには、少し想像力が必要となる。

ほとんど不自由を感じない都市生活を生きる、ミレニアム世代のビジネス・ウーマンを例に説明しよう。彼女たちにとって、声高に叫ばれる「自由」は、責任や義務とともに重荷とさえなっている。与えられた「自由」ではなく、本当に自由奔放を実現できるのは慣習的な生活を脱して、自身のライフスタイルを極めることである。フェイク(嘘)もファクト(事実)もすべてはフィクション(虚構)となる複雑な時代の中、広大な世界を実際に旅し、自分にとっての「真実」を発見することが、現代のボヘミアンやノマド(遊牧民)である。

BoHo宣言:脱慣習的生活へのインサイダーガイド」(2019年6月発刊)は、ヒッピーの両親の下に生まれたジュリア・チャプマンの著書。ミレニアム世代を中心にボヘミアン・シックやノマドワークの実践方法を詳細に記述している。

1960年代のヒッピーのように、都会を離れた遠い山に向かうのではなく、マンハッタンやブルックリンのロフトで、ボヘミアン・ライフスタイルを実践することや、世界の辺境や「バーニングマン」へと旅することなど、さまざまな文脈が交差するのがBoHoシックである。これは、東西文化の交差点であるトビリシの重要なホスピタリティ・コンセプトでもある。シルクロードの地に根づいたトビリシの「ボヘミアン・ホスピタリティ」は、時代とともにアップデートされている。

産業遺産とファブリカ

中央トビリシのマルジャニシュヴィリ駅から数ブロック行くと巨大な工場ビルがある。エグネイトニノシュヴィリ通り8番地は、ソビエト時代の婦人服工場だった。ソビエト連邦が1991年に崩壊したとき、工場は閉鎖され、建物は放棄されていた。数十年後、トビリシ最高のホスピタリティを表現する「ホステル」としてだけでなく、内外の人々のためのクリエイティブ・ハブとして、Fabrika(ファブリカ)は2016年7月にオープンした。

ソ連時代の婦人服工場がファブリカの源流である。

ファブリカの創設者Marika Kvirkvelidze(右)とマーケティング担当のNini Gobronidze(左)

市内で最も古い地区のひとつにあるソビエト時代の産業遺産は、地元の建築家集団が、トビリシを代表するデザイン・ホテルであるStamba(スタンバ)の運営会社アジャーラ・グループの支援により、工場に新しい命を吹き込み、それを多目的で創造的なスペースとホステルに変えた。

崩壊しつつある建物を機能的な空間として、地域コミュニティに還元するファブリカのコンセプトは、現在トビリシで起こっている幅広いトレンドの一部である。この街の流行に敏感な人の多くは、トビリシに残るソ連時代の古い工場や倉庫を手に入れて、社会に貢献できる仕事をやり遂げたいと夢見ている。これはベルリンの30年前、荒廃した東ドイツの発電所や遊休施設をクラブやアートセンターに変えたいと夢を抱いた人々と同じである。しかしトビリシのこの夢の中には、常に都市の若者たちの雇用や経済的自立を促進する現実的な方策が含まれている。

ファブリカの地上階にあるコワーキング・ラウンジは、コンクリートの床、屋内植物、多彩なヴィンテージ家具やデザイナー家具に囲まれた代表的なスペースだ。

ファブリカのコワーキング・ラウンジには、床から天井まで届く大きな窓から自然光が差し込み、高い天井と人間工学に基づいた作業スペースは、ラップトップで作業する人にとって快適な一時的なオフィスになる。会合やコラボレーション、創造活動など、平均年齢30代前半のアーティストやノマドワーカーの息づかいが、毎日ラウンジから聞こえてくる。

ファブリカのイノベーション・エコシステム

ファブリカで夜を過ごすことを望むなら、古い縫製機械を利用したレセプション・デスクでチェックインするだけだ。2階から上の宿泊エリアには、ホステル/スイートを合わせて計98の客室がある。6人用の共有ドミトリーと、プライベート・ルーフトップテラスがあるスイートもある。部屋は中間色で彩色され、高い天井と自然光は、部屋を実際よりも大きく感じさせている。

ファブリカ・ホステル内のくつろぎの空間。ホステルにはソ連時代のミッドセンチュリー家具が設えられている。

ファブリカの中庭はホステルのゲストや起業家、地元の若者たちの社交空間である。

ファブリカの特別なハイライトは中庭である。ここには現在、アーティスト・スタジオ、コワーキング・スペース、起業家の学校ともいえるインパクト・ハブ、カフェ・バー、レストラン、BoHoを意識したファッション・ブティック、多数のクリエイティブな店舗があり、ジョージア人が経営する「塩ラーメン」の店もある。そのすべてが、ファブリカを活気づけるエコシステムとなっている。このクールな「ホット」スポットでは、常に進化を続けるイノベーション・コミュニティを意識したイベントが定期的に開催されている。

トビリシを訪れる世界の人々にとって、ファブリカはトビリシの先進的な文化を集約して体験できる場である。「創造し共有するための空間」として生まれ変わったソビエト時代の縫製工場は、トビリシの歴史や文化、経済と接続する多機能な空間に変身した。ここに店を構える起業家は、ファブリカの永住者だ。彼らはこの中庭に生命と魂を与え、そのさまざまなプロジェクトはファブリカの創造的な精神を体現している。

トビリシのグラフィティ

LAMBとして知られるトビリシで有名なストリート・アーティストの作品は、ファブリカの内部を含め、街中でも見ることができる。それらは、2018年6月に開催されたジョージア初のストリートアート・フェスティバルである「Fabrikaffiti(ファブリカフィティ)」の期間中、地元および国際的なアーティストによって描かれたものである。旧ソ連や共産主義国の多くと同様に、ジョージアのストリート・アートシーンは比較的最近の現象である。

ファブリカの外壁を埋め尽くすグラフィティ。

ストリート・アートは、ソビエト連邦では反体制の嫌疑をかけられ、処罰されることもあった。今日では状況が異なり、トビリシのいたるところにストリート・アートを見つけることができる。フェスティバルの成功に続いて、一部の参加者がファブリカにショップを立ち上げ、現在はアート用品を販売し、ステンシル・ワークショップを開催している。

FABRIKAFFITIのポスター。

ファブリカのグラフィティ・フェスティバルは毎年開催され、主催者はキャンバスをファブリカ周辺の街路に広げることを計画している。ファブリカ周辺の建物がグラフィティで覆い尽くされている様は、非常に興味深く、それはベルリンのクロイツベルクで起こっている都市の高級化を阻止する反ジェントリフィケーションのシンボルとしてのグラフィティとも異なる。トビリシでは、街中を埋め尽くすグラフィティを、ファブリカ美学の浸透として称賛しているのだ。

ファブリカ・ホステルのコンセプト

流行に敏感なファブリカは、荒れ果てた古い地区を蘇らせている。古いものと新しいものが混ざり合うが、工場の外観はグラフィティで覆われている以外、ほとんど昔のままである。古い縫製工場の内側には、スタイリッシュなソビエト時代のミッド・センチュリーの家具がモダンな雰囲気を醸し出している。ファブリカ・ホステルは、最大354人のゲストを収容し、シェアルーム、シングルルーム、アパートメントの部屋を選択できる。

ファブリカ・ホステルの4人用スイート。

ホステルには、ソ連時代の婦人服工場だった時代の写真が部屋に飾られている。

地元の人々や旅行者にとっても、ファブリカはトビリシに集う人々のためのホットスポットであり、産業遺産の雰囲気と広大なスペースで共同作業、学習、社交、宿泊することができる。ファブリカは、「旧式と新式」、ファンキーなボヘミアン・ライフスタル、インダストリアル美学と社会主義美学がブレンドされたクールな雰囲気を漂わせている。これは、都市の再創造のシンボルとして十分な説得力を表現していて、トビリシを代表するクリエイティブ・センターであり、見逃せないユニークな空間である。

ボヘミアン・レストラン「Shavi Lomi(シャヴィ・ロミ).
https://www.facebook.com/shavilomirestaurant/

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