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ベルリン国際映画祭でW受賞した日本人女性監督が語った「車椅子にも女性にも優しくない日本」

2019.11.20

■連載/Londonトレンド通信

 10月に開催された第63回ロンドン映画祭で『37 セカンズ』が上映され、HIKARI監督がQ&Aを行った。今年のベルリン国際映画祭でパノラマ部門観客賞と国際アートシアター連盟賞のW受賞を果たした映画だ。

 HIKARI監督は、大阪出身、南ユタ州立大学で学んだ後、ロサンゼルスに移住し、映画を撮ってきた。多数の映画賞を受賞した短編映画『TSUYAKO』(2011)では、戦後間もなくの日本を舞台に、かつての同性の恋人との再会で揺れる人妻を美しい映像で描いている。

 初長編監督作となる『37 セカンズ』では、車椅子の女性が主人公。漫画家のアシスタントを務めながら、母親と暮らしている。漫画を描く必要上、性体験をしようと考えるところからストーリーは展開していく。

 HIKARI監督は、車椅子の男性主人公でコメディーとして書いた脚本を、セックス・セラピストの女性へのインタビューの機会を得たことから、車椅子の女性についても知り、大幅に書きかえたという。リアリティーを感じさせながら、笑える場面が多いのも納得だ。

 それだけ難しい役柄といえる主人公、貴田ユマを演じているのは、生まれた時の脳性麻痺による障害がある佳山明(かやまめい)。

 佳山起用について、HIKARI監督は「実際に障害がある人に演じてもらおうと考えていました。彼らの声を聴くことがない、彼らの姿をスクリーンで観ることがないからです。いくつもの団体に直接連絡したり、SNSでも探しました。彼女(佳山)はフェイスブックから応募してくれました。13歳くらいに見えました。どうかなあと思いましたが、オーデションに来た時、最後の1人だったのですが、声で決めました」と選考過程を明かした。

HIKARI監督 第63回ロンドン映画祭

 演じるのはこれが初という佳山だが、童顔と子供のような声が、素直だが芯は強い、天然ボケのようでもある主人公ユマにピタリとはまった。最初は頼りなげなユマだが、様々な出会いを経て成長していく。

「(物語の)時間軸通りに撮っていきました。その中で、彼女(佳山)自身が成長していきました。彼女がどう感じたか聞きながら、撮っていきました」。脚本には、佳山自身に寄せて書いている部分もあるようだ。

「たくさんのリサーチやインタビューをして、障害のある娘を持つ母親たちにもインタビューしました。生まれながらの障害だった場合、母親たちは自分のせいだと思っていました。そのため、非常に責任を感じています。その気落ちはとてもよくわかるのですが、娘の方はみな、まるで囚われているようだと言いました」という母娘の体験談が活かされたユマと母の場面が心を揺さぶる。

 来年、劇場公開が予定されている日本に望むのは、「障害のある人でも観ることができたらと思います。日本では、町で車椅子をあまり見かけません。車椅子での外出が、それほど難しいのです。そこは解消されなくてはいけません」という。

 加えて「車椅子の友人も、あまりサポートを得られないと言っていました。混んだ電車の中で『どうして、ここに居るんだ』という視線を浴びるそうです。全ての人が電車に乗っていいはずです。それが車椅子だと『どけ』と思われる。ひどいことです。この映画で理解を深めてもらえたら」と語気を強めた。

 だが、ひどい仕打ちを受けているのは、車椅子の人ばかりではないようだ。

 日本での女性監督について問われたHIKARI監督は、「初監督が、経験のあるスタッフから試されることは、どこでもあることかもしれませんが」と前置きしつつ、「あるスタッフは、全てにおいて試してきました。私が言うことは理解しているようなのに、まるで逆をやるのです。もし、私が日本で映画監督になろうとしたら、まだアシスタントくらいだったかもしれません」と自身の体験を語った。

 続けて、10年を超えて映画に関わってきた自負をにじませながら、「誰も私のことを知らないせいかもしれませんが、(先に述べたような仕打ちを)変えていけたらと思います。そうしたら、私たちも、もっと楽に生きていけます。ご質問、ありがとうございます」と、問いを投げかけてくれたことへの感謝でその質問への答えを締めた。

文/山口ゆかり
ロンドン在住フリーランスライター。日本語が読める英在住者のための映画情報サイトを運営。http://eigauk.com

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