
リモートワークが浸透する中、ますますメールのコミュニケーション手段としての重要性が増している。メールで、なかなか自分の意図したところが伝えられなかった失敗をしたことのあるビジネスパーソン向けに、米国NLPコーチング研究所公認プロフェッショナルコーチの有岡秀郎さんに、伝わる論理的表現方法を聞いた。
一日のうちメールにかける時間は平均1時間
一般社団法人日本ビジネスメール協会が実施した2018年の調査によると、一日の平均メール送信数は12通で、1通あたりの作成に要する時間は5分程度かかっているようです。
社内外のチャットも浸透していますが、まだ多くのビジネスパーソンは、「1日1時間近く」の時間をメール作成に要していることになります。
たった1時間と思うかもしれませんが、5日で5時間、20日で20時間と、この時間を効率的に使うことができれば、働き方改革を背景にメール作業が効率化します。
メールコミュニケーションの前提として知っておきたい2つのこと
1.「相手に期待する行動」を明確にしてから送る
みなさんは、メールを有効に活用して生産性を高めたいとお考えのことと思いますが、それには、まずメールを配信する目的を確認しておきましょう。
なぜメールを配信するのでしょうか? それは、メールを送る相手に対して何かしらの期待する行動を求めているからだと思います。決裁のお願いであれば、相手からの承認を得たい。報告に関するメールであれば、相手に状況を理解してもらい、相談に関する内容であれば、次の打ち手についてヒントを得たいなど、さまざまな目的があると思います。
そこでメールを作成する前に、相手に期待する行動を明らかにしましょう。
2.メールは「情」と「理」で構成されていることを理解する
メールは感情を伝えることがむずかしい特徴があることをよく踏まえておく必要があります。みなさんのなかにも、「会って話すことで誤解が解けた」というご経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
コミュニケーションは、感情にあたる「情」と論理の「理」で構成されています。メールはいつでも気軽に配信できるメリットが大きいのですが、情の部分が非常に伝わりにくいのが一番の欠点です。
これらを意識してメールコミュニケーションを行いましょう。
メールで論理的な表現をする2つのポイント
次に、具体的にメールを活用して論理的な表現をするポイントをご紹介します。
ポイントは2つです。「相手への配慮」と「文書構造」を意識することです。
1.相手への配慮
相手への配慮とは、簡単に言えば、読み手を意識することです。
自分は相手に何を期待しているのか。相手はこのメールを受け取ってどのような気持ちになるのか。相手がどういう特性を持っているのか。どういう表現や語彙を使えば理解しやすいのか。
すごく当たり前に聞こえるかもしれませんが、簡単なようでこれが最もむずかしいです。
例えば、何でもメールで伝えようとすると、電話と対面に慣れている経験豊富な年配社員は、けしからんと感じてしまうでしょうし、SNSや短文に慣れた若手社員にむずかしい言葉を使った長文を使えば、見る気がなくなってしまいます。
いつもどのような相手に対しても、同じような定型文を使用されている方は見直すことをおすすめいたします。
2.文書構造
受け手も現代ビジネスパーソンですので、メールを読む時間を極力減らしたいと考えているはずです。
そこで、メールの構成は「結論先出し」にしましょう。相手がメールを開封した瞬間に、私は何をすればよいのかがすぐに理解できるような工夫をします。
例えば、あいさつ文の後に『価格決裁のお願いです。』『商品企画のご相談です。』『販促イベントのノベルティの件でご意見ください。』などが、それにあたります。
こうすれば、読み手はいまからどういうテーマについて話が始まるかが瞬時に理解できるので、迷子にならずに済みます。
また抽象的な話から具体的な話に進んだほうが、一般的にはわかりやすいといわれています。
プラスアルファで実践!メール作成のポイント
●文章は「主語と述語を明らかに」
文章の内容については、「5W2H」を意識し、主語と述語を明らかにして記載しましょう。とくに海外の方とメールでやり取りする際には文化圏が異なるので、より重要になります。
●メールを声に出して読み返す
メールができあがりましたら、最後に声に出して読み返してみてください。文章の違和感に気づけることが多いのでおすすめです。
メールは、仕事に欠かせないコミュニケーション方法である。誤解を生みやすいメールだからこそ、「情」や相手への配慮をしっかり意識し、論理的で伝わるメールを作成しよう。
【取材協力】
有岡 秀郎(ありおか ひでお)さん
米国NLPコーチング研究所公認プロフェッショナルコーチ
航空自衛隊に入り、その後大手航空会社の航空貨物会社、電子部品の法人営業を経て、現在は教育会社に所属。業務の領域は大手上場企業に対する人事施策や能力開発のコンサルティングが中心。個人的な活動としてパーソナルコーチを行う。活動テーマは幅広くビジネスリーダーシップの開発やキャリア開発が中心。
https://s21382801.wixsite.com/website
取材・文/石原亜香利