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エストニアで普及する電子契約無料プラットフォーム「e-sign」は我々の暮らしをどう変えるか?

2019.11.11

根強く”ハンコ文化”が残る日本でも、電子契約への関心が高まっている。blockhive社(本社:東京都千代田区、代表取締役:長澤草)は今年10月、電子契約/電子署名を完全無料で利用できるサービス「e-sign(イーサイン)」の事前登録を開始し、話題を呼んだ。

電子契約では、「決裁者が本当に電子署名したのか」を確実に担保できない点が課題の一つだったが、同社が無料で提供する「デジタルID」を使うことで、なりすましの防止・セキュリティレベルの向上が実現。より現実的な利用シーンが見えてきた。e-signは、ビジネスシーンはもちろん個人の契約・署名にも活用できるという。

果たして、e-signを使うと我々の生活はどのように変わるのか。同社の共同創業者、日下光氏にお話を伺った。

エストニア発のリーガルテックサービス 「e-sign」とは?

――e-signはどのようなサービスなのでしょうか?

日下:端的に言えば、ブロックチェーンを活用した完全無料の電子契約(署名)サービスです。契約書をe-sign上にアップロードし、そこに電子署名を付すことで、法的に有効な電子契約を締結できます。日本でもすでに電子契約サービスは存在していますが、我々は電子署名をするためのハンコ(印影)である「デジタルID」も無料で提供します。

e-signの用途は契約書にとどまりません。あらゆる電子文書に対してデジタルIDによる電子署名を付すことができるため、企業で導入すれば稟議書や議事録にも活用できるでしょう。

「この文書はいつ誰が書いたものか」を証明するのは意外と難しいものです。いくら「このノートの古さを見てください」と言っても、本当にその時にその人が作成したものかは証明できませんよね。

e-signでは、文書をアップロードした瞬間に「ハッシュ(暗号化された文字列)」を生成し、ブロックチェーンに記録されます。その後に手が加えられるとハッシュが変わることになるため、「改ざんされたこと」もしくは「改ざんされていないこと」を証明できます。これを活用すれば、企業は「人を疑うこと」に対してムダな時間とお金を割く必要がなくなり、信用コスト・監査コストも下がるでしょう。

――日本のハンコ文化に大きな影響を与えそうですね。e-signを利用するための手順を教えてください。

日下:はじめに、「デジタル世界の印鑑」であるデジタルIDを作ります。弊社が今後提供するアプリをスマホにダウンロードし、本人認証を済ませれば、すぐに利用可能です。本人認証の際には、公的本人書類(マイナンバーカード/運転免許証/パスポートなど)を使用します。

「e-sign上で契約書に署名をするためのデジタルハンコを作る過程」とイメージするとわかりやすいでしょう。エストニア国内では、すでに使われていたデジタルIDアプリなのですが、これを世界の公的身分証に対応させたことで、ボーダーレスに使えるものになりました。

私自身、エストニア企業の人間として日本企業との取引の際、「エストニアでは電子契約できるのに、日本の企業と取引する時は書類が多く面倒だな」という不便さを感じていました。グローバルに活躍する時代なのに、国をまたいで使える電子契約サービスがない。そうなると、一生ダブルスタンダードになり続けるのか、という自分の中の課題から生まれたサービスでもあります。

――これらをすべて無料で利用できるというのはすごいですね。

日下:正直、完全無料にするのは勇気がいる決断でした。でも、なぜエストニアで電子契約が普及しているのかというと、無料で利用できるデジタルIDの存在があるからです。「エストニアではインフラとして無料で利用できるよな」と知ってしまったので、他の国でも無料じゃないと普及しないと思ったんです。

これは、メール(手紙)からeメールに変化した過程と似ています。「書く・切手を貼る・投函する・届く」の行為が凝縮された便利なeメールが、もし有料だったらここまで普及しなかったはずです。「サインがe-signに変わる時も無料じゃないといけないな」と考えました。

デジタルIDや電子署名/電子契約が普及すると生活はどう変わる?

――デジタルIDやe-signが拡大すると、我々の生活はどのように変わるのでしょうか?

日下:電子契約の部分で身近な例を挙げるなら、部屋を借りる際の賃貸借契約などの手続きがより簡単になります。

先日、日本の拠点を移転したのですが、その際に「内見・申込書の記入・契約書の記入・鍵の受け渡し」と、何度も不動産屋に足を運ぶことになりました。同じ住所を8回くらい記入して、書き間違えたら書き直し。これって、お互いにとって無駄ですよね。これをワンストップ、エストニア風に言えばワンスオンリーにすると、申し込み時の1回だけ不動産屋に行けばよくなります。

さらに、賃貸借契約を「〜銀行の〜支店に初期費用の払込が終わったら、この電子契約書に署名する際に使ったデジタルIDに、スマートロックのアクセスキーを渡します」としておけば、初期費用の着金をトリガーに、スマートロック解除用のデジタルIDにアクセス権限が渡るような仕組みも可能です。これを我々はスマートリーガルコントラクトと呼んでいます。

――なるほど、大幅に手間や時間が削減できますね。役所での申請なども楽になるのでしょうか?

日下:そうですね、日本でもすでに電子申請の仕組みの整備を進めている自治体はあります。ただ、日本の場合はエストニアと比べて規模が大きいので、地域ごとに「何を電子申請可能にするのか」を考える必要があるでしょう。政令都市だと似たような申請が多いかもしれませんが、地方自治体になると「婚姻申請は少ない」「転出申請が多い」など、特徴が出てきます。まずは「どういう申請を電子化すべきか」を洗い出し、自治体ごとに使い方を考えることが必要です。

あとは、保育園の申請の手間も軽減できるかもしれません。保育園の申請は、役所に就労証明書を提出する必要があります。就労証明書を勤務先に依頼して、手続きのために役所に行く。そのために有給を使って会社を休む方も少なくないでしょう。

もし、デジタルIDやスマートリーガルコントラクトがより身近になれば、会社から電子署名を付した就労証明書をデジタルでもらい、それをそのまま役所に提出できますよね。そこまで自治体が求めるかは別として、デジタルIDと就労証明書を紐付けることで、A社の就労証明書を出した人がB社に転職した際に、自動で役所に通知がいくような仕組みも可能です。

――自治体側とユーザー、どちらもかなりコストを軽減できますね。世界的に見てもデジタルIDは普及していくのでしょうか?

日下:はい。公的機関、つまり政府がデジタルIDを発行する動きが加速しています。エストニアはもちろん日本はマイナンバーカードがありますし、フィンランド・バルト三国にもe-IDカードがあります。

あとは、マレーシア。今年12月に、エストニアの技術を使ったICチップ付きのIDカードを発行する予定です。ドイツにもすでにありますし、台湾も来年、ICチップ付きのデジタルIDカードを作ります。

各国がICチップ付きの公的個人認証を電子的に進めているのですが、我々は各国の相互運用性を提供するためのミドルウェア的な立ち位置でありたいと考えます。いくら各国でデジタルIDが普及したとしても、それだけでは国をまたいでの電子契約はできません。そこで、同じデジタルIDアプリを使うe-signを活用すれば、ボーダーレスで電子契約ができるようになる。この仕組みが一般的になれば、あらゆるコストは下がり、セキュリティと認証スピードは上がるため、各国の発展にもつながるでしょう。

――最後に、このように便利なサービスをいち早く「当たり前」にするために、我々ユーザーができることはありますか?

日下:当事者意識を持って、日常で感じている「ペインポイント(課題、面倒くささ)」をポジティブに発信してもらいたいたいです。政府批判になるのは良くないと思うのですが、「ここがこうだったらもっといいのに」「ここが大変」という声を上げることは、非常に重要だと思います。「自分が言っても何も変わらない」と思わず、ポジティブにアウトプットすることが大切です。

サービスを提供する企業側は、仮説を立ててサービスを勝手に作ってしまうのではなく、いち早くユーザーの声に耳を傾けて、ペインに対するソリューションを提供することです。トップダウンで「こんなものを作ったよ。便利だから使った方がいいよ」と言う姿勢ではなく、あくまでも多くの人が解題としているものを解決するサービスを提供して欲しいですね。

――「この不便さが解消される」とわかれば、日本でも”新たな文化”として普及しそうですね。本日はありがとうございました。

今までと違う文化やシステムを受け入れるのは、勇気がいるし、不安も伴う。しかし、「洗濯機」や「冷蔵庫」の存在のように、自分が日常生活の中で不便さを感じていることを解決してくれるものであれば、抵抗感なく受け入れられ、一度受け入れて便利さを知ったらもう戻れない。自身の生活の中で「e-sign」をどう活用できるか、不便さを感じている部分から自分なりの使い方を模索してみてはどうだろうか。

e-sign公式ページ: https://esign.ee/

日下光氏
2012年、デジタルガレージ主催のTED meets NHKで「The next stage of social capital」と題したスピーチを行ない、そこで触れた「評価経済システム」の実証実験のために起業。 2013年、Rippleを利用したプロジェクトに携わることをきっかけに、ビットコイン・ブロックチェーン技術と出会う。2017年、エストニアに拠点を移しblockhive OÜを設立し、デジタルIDとスマートリーガルコントラクトを活用した独自の資金調達モデルILPの開発などを行う。eResidencyチームと共にエストコインプロジェクトの検討委員会メンバー、エストニアICOサンドボックス策定チームのメンバーも務める。今年3月、日本の事業会社を設立し、デジタルIDとブロックチェーンを活用したソリューション提供などのサービスを開始した。

取材・文/久我裕紀 撮影/篠田麦也

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